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第16話 もう決まってることだから

「結末を知っている……未来視か」

「ちょっと違うかな。前世の私がこの世界の流れを知ってる……みたいな」


 カイチューの言葉に、私はできるだけ素直に答える。


「てかお前、喋り方……」

「あれって結構意識してやってるんだよね。この世界の私の感覚が、前世の私のせいで消えないように」

「前世ねえ……」

「前世って言っても、ここじゃないまるで別の世界のことなんだけど。転移? 転生ってやつ?」


「……」

「もしかして信じてないでしょ」

「いや、う~ん……感覚的には無い話ではないか。俺も言ってしまえば別世界の存在みたいなとこあるしな」

「そうなんだ」


 カイチューにとっても私という存在はイレギュラー寄りらしい。そもそもカイチューがなんなのかよくわかんないけど。


「それで、世界の流れってのは、どの程度わかるんだ」

「多分、想像してるより便利な物じゃないよ。今から10年後のある学園での1年間。そのうち何人かの生徒の生活。あと20年先までの国の大まかな歴史くらい」

「結構すごいじゃねえか!」


 うーん、すごいのかな……全部ゲームの知識が基準だから、ゲーム本編の1年間だったら登場人物たちの行動からセリフまで空で言えるんだけど、それ以外だとキャラの過去回想で描写されたりゲーム資料集で記載されてるところしかわかんないんだよね。


 だから、国の大きな事件が今後起こるってわかってても、誰がどうやって起こすのかはわからない。


 それに、ゲームに描写されているところに私が関わったらどうなるのかわからないという懸念点もある。


「けどさ、正直国の歴史なんてどうだっていい。私にとって重要なのは、その何人かの人たちの方なの。私、彼女たちのことが好きなの。それも人生を一つ賭けるくらいには」


 前世がそうだった。『エーデルワイズのお姫様』は、私の味気ない人生を明るく照らしてくれた。登場人物たちの生き生きとした仕草や描写が、つらい時の支えになった。


 私は、私以上に『エーデルワイズのお姫様』を、彼らを愛している。


「私はこの未来に影響が出ないように生きたい。あの人たちの運命を変えたくない」


 もしかしたら、今の私の状況はすごいことかもしれない。だからこそ、私は近くで主人公たちの行く末を見たい。


「だから、俺の提案には乗れないってことか」

「そう。私はできるだけ私の知ってるアリン・クレディットの通りに生きたい」


「これからのアリン・クレディットってのはどうなるんだ」

「うーん、メインキャラじゃないからゲームの中で過去はあんま描写されてないし、よくわからないね。16歳の時に性格ひん曲がった状態で王立学園に入学することはわかってる」


「学園でお前はなにかするのか?」

「えっと、いじめを少々……」

「いじめを少々!?」


 ほとんどキャラクターの描写がないアリン・クレディットにも、ゲームの中での役割は一応二つある。


 その一つが、学園に入学した主人公へ嫌がらせをする悪役令嬢の役。


 魔術の才能がないアリン・クレディットは、魔術の才を見込まれ庶民にして特待生として入学を許された主人公のことを非常に嫉み、仲間を集めて陰湿ないじめをする。

 これが結構過激なんだけど……



 私にできるかな~~~~~。



 でもやらないと主人公たちの運命変わるよね、うん。


「それが、お前の学園でのやることなのか」

「う~ん、まあそういうことになるね」

「……」


 カイチューが呆れて黙ってしまった。確かに、好きな人のために未来でいじめをしますってのは変な状況ではあるけど。


「……じゃあお前が好きに生きるのは、10年後だとか20年後の、そいつらの運命が確定した後ってことか?」



「後はないよ」


 アリン・クレディットには主人公をいじめる悪役令嬢としての役割ともう一つ、大事な役割がある


 私はカイチューに、淡々と事実を告げる。



「私、10年後……17歳の誕生日に死ぬの」



 それは、アリン・クレディットの死だ。





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