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「んー、よく寝たー!!」


 朝、眩い朝日を浴びながらリアは目を覚ます。背をグッと伸ばせば、昨日痛んでいた箇所は無く。火傷の跡も残っていないし、切り傷も跡を残さず完治しており、この国の医療技術や魔法はやっぱり凄いなぁと思った。失った腕生やしたり、傷ついた脊髄を再生したりもできるし。


「うーん?」


 そこで、なにやら自分の中に別の魔力がある事に気がついたが、まぁいっかと流した。


 それから、ふと病室のテレビをつける。


 そう、この国、前世の日本より技術が発展している。魔法寄りにと注釈はつくが。外を見れば空飛ぶ車が走ったり、空にホログラムのディスプレイが広告を浮かべたりしている。高層ビル等も多数ある。サイバーパンクというやつだ。驚く事にテレビなんかの機器も充実しており、主に魔力で動くから電子機器とは言えないが……科学から魔法に変化しただけで現代日本が負けるくらいには技術力があるといえるだろう。


 更にはインフラ設備も完璧である。ガス、水道、下水道から始まり、それらの機器を動かす為に電気の代わりとして魔力線が地下に張り巡らされている。魔法による通信技術も発達しており、SNSなんかも前世と似たようなモノが発展していた。

 アルテイラは転生者にとって、まさに暮らすにはもってこいの国である。


 そんな国のテレビでは今現在、毎朝お馴染みのニュース番組がやっており……自身の名がテレビから流れるのが聞こえた。


『朗報です。昨日朝、国の危機とされていた黒龍を、エルフのグラビアアイドルで有名なリア・リスティリアさんがソロでの討伐に成功しました』


 と、ニュースキャスターが嬉しそうに発表し、専門家らしき人がどれほど討伐が難しいか、ドラゴンの亡骸の貴重性、等を話し合っている。概ね、英雄願望のあったリアの思惑通りの報道で満足であった。


 ところで気になったと思うのだが……そう、この元、男。グラビアアイドルをやっているのだ。


 エルフはかなり『潔癖』な種族だ。婚約したというレベルでないと異性に肌を触らす事はほぼ無いというほどに。しかも、この国にエルフはほとんどいない。かなり珍しい種族であった。


 そんなエルフで美少女の自分なら……もしかしてイケるのでは? とリアは思った。というか、美少女になってから自己顕示欲が高まっていたのだ。


 そして、居住したこの国で冒険者登録した後でリアは速攻、自身をテレビ局に売り込んだ。まぁ、他にも……みんなに美少女な自分を見せて褒め言葉を浴びて、気持ち良くなりたいといった願望もあったが。折角TSしたのだ、その辺は楽しんでいきたいと欲望が沸々と湧いたのである、仕方ない。


 そして無事、というかあっさりテレビ局に採用されて。


 中々老いる事のない、瑞々しくて白く、絹糸のように滑らかな肌を見せつけ、あざとくエッチなポージングをすること約1年。結果として……この国の男子大勢から『おかず』にされるくらいには人気のグラビアアイドルへと昇り詰めた。

 やはり黒髪エルフは大正義である、とリアは思うのだった。それからこの女、それだけでは飽き足らずSNSでエッチな自撮り(大事な場所は隠してある)を上げたりもしている。応援コメントが来る度、ビクンビクンしているのである。


 そうして活動しているうちに、実は男の子だけでなく、女の子にも「お姉様」と呼ばれて人気になっている事にリアは気がついていない。やっている事はヘタレのサキュバスなのだが、やはり美少女エルフというだけあるという事だ。


 そんな見た目だけは美しく麗しいエルフ、リアはニヤニヤ顔でテレビ放送を眺める。自身を褒め称える言葉の数々に、少しイってしまいそうなくらい気持ち良くなった。


 そのまま、携帯端末を手に取りSNS『ツブヤイター』を開く。ツブヤイターは不特定多数の人々が呟くSNSだ。すると、ドラゴン討伐や自身の名前がトレンドに入っていて、三度見くらいした。胸が熱くなるくらい嬉しい気持ちが湧き上がってくる。


(あぁ……痛かったし強かったし普通に怖かったけど、ドラゴン倒して良かった!!)


 両腕で自分を抱きしめ、ブルっと身体が震える。それから恍惚な表情ではぁはぁと吐息を漏らす。


 その後、リアは元気になったよーとSNSに自撮りをあげ「ドラゴンスレイヤーの自撮りだ!!」とプチバズりをするのだった。


……………………


 ところで、気になっている事がひとつ。

 布団が少しもっこりしているのだ。そして、足に感じる確かな重み。これは……誰かいるな? と思ったリアはそうろっと布団を捲った。すると、白髪の麗しい幼女がリアの足に抱きついて眠っていた。


「……クロエちゃん」


 その子にはとても見覚えがあった。というのも、リアは来世も良い人生が待ってますようにとこの世界に来てから善行を進んで行うようになっていた。近所のゴミ拾いから始まり、魔物退治に、ギルドへの依頼の積極的な参加など様々。因みにだが、冒険者ギルドは簡単に言えばとても規律の緩い自衛隊&探偵&何でも屋である。こうして外の魔物が出る地帯にある薬草を取りに行ったり、国から危険と判断された魔物を狩ったり、はたまた未知の遺跡を探索したりと、冒険者次第でやる事は山ほどあるのだ。


 そして今回のドラゴン討伐は英雄願望が1番強かったのは認めるが、普通にみんなを守りたいという意志も確かにあった。


 ……そんな善行の中に『孤児院への寄付』がある。グラビアでしっかり稼げているので寄付するくらいには懐は潤っていた。それから寄付した孤児院に通い、親のいない幼い子供たちと仲良くなったり、一緒に遊んだりしていた。……余談だが、リアのせいで幼いながらも性癖が歪んでしまった男の子と女の子がいっぱい居るが、本人が知る事はない。本人の意図しないところは、本当にまるでサキュバスである。エルフなのに。


 その子供達の中で、特にリアへ依存したのがこのクロエという少女だった。リアの事を「お姉ちゃん」と呼び、親しくなってからはカルガモの雛のように背後をついて回るのは微笑ましい光景であった。


 だから、今回こうして忍び込んだのは、自分の事が心配だったからだろうと思い、嬉しさからため息を吐いた。


「まったく、院長先生が心配するぞー?」


 頭を撫で、慈愛の籠った目で見つめる。クロエは気持ちよさそうにしながら身をよじった。だから、リアは彼女を胸に抱き寄せると再びベッドに身を沈めた。幼子特有の温かさが胸いっぱいに広がる。

 まぁ、孤児院に戻っても勉強と遊びが待っているだけだ。それに、こうして自身を心配して来てくれたであろう幼女を叩き起こして帰すなどできようはずもなく。リアは彼女の吐息を胸に感じながら、もう一眠りする事にした。

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