32
ヘイロー大迷宮は大規模な作戦の割にはあっさりとした攻略となった。しかし齎された金銀財宝と情報には価値がある。
迷宮は神々の墓。神話を読み解けば、かなり面白い情報が得られるかもしれない。そしてハスターちゃん様、かつて神様だったという彼女の存在は迷宮という世界の謎に迫り過ぎて通り過ぎたくらいだ。
「ところでハスターちゃん様さ、あのペンダントなんなん?」
「なぜ私は詰められているのですか!?」
「いやね、微妙だったんよ。せっかくの大迷宮なのに、攻略報酬が微妙ってお前……」
「そんな事言われても……!! けれど、そのペンダントがあれば、当時の私は宇宙の旅に出られそうですね……」
ハスターちゃん様は、かつて星々を旅する事を夢見ていた神だ。確かに、空間移動ができるのならば宇宙に進出しても先に進む事は可能だ。神々は基本的には飲食をしなくても生きていける。寿命だって長い。
「ローゼライア様は、ある意味で願望を叶えてくれていた?」
「分かりません、しかし……望みを残してくれた事は少しだけ感謝してやりますよ」
不可解な事は残ったが、そうであればローゼライアの権能に謎が残る事となる。けれど、まぁ結果的には神々の願望に近い宝が手に入る事が分かっただけでも充分だ。
あぁ〜夢が広がるー。
………………………
王国に帰還し、冒険者に報酬が分配された。かなりの額なので暫く休業するか本職をやる人が増えそうである。冒険者は所詮は夢と副業と魔物のいる外を探索や駆除する組織の総称だ。金があれば休むのは普通である。
とはいえ、アデルのような冒険者一辺倒な人間もいる為に、ギルドが人手不足になる事はなさそうだ。
リア達パーティーも一旦別れて家に帰る事にした。ルナとリアは共に歩きながら自宅に向かう。
「どう? ルナは今回の迷宮探索、楽しかった?」
「私ですか? そうですね……リア達と何かを成し遂げた達成感は何物にも代え難い経験でした。楽しかった……かな」
「俺も楽しかったなぁ。ボス部屋でボス戦とかいうゲームみたいな事も出来たし」
「ふふっ、ドラゴンを倒したのですからゲーム以上の事は出来ていると思いますよ?」
雑談を続けていると家が見えてきた。
「それじゃあリア、またお伺いしますね」
「いつでも遊びに来ていいからな」
………………
玄関の扉を開けると、飛び出してくる影が2人。クロエとアルエである。2人はリアの腕を片方ずつ抱きつくと。
「お帰り!!」
「無事でよかった」
「ただいま、良い子にしてたかぁー?」
「「うん!!」」
3人で抱きしめ合い、それから自宅に入っていく……ところで。
「お母さん、早速冒険の話を聞かせて!!」
「あぁ、いいぞ……」
……ん?
「リア母さん、どうかした?」
クロエにも言われて困惑する。リア・リスティリア。まさかの母呼びに驚愕を隠せない。
「クロエちゃん、アルエちゃん。どうしてそうなったの?」
「お姉ちゃんがいない間に、呼び方を変えようって話になって」
「私達の姉のような存在で、大切で……だけど手が届かないならせめて親子になりたいって」
「んんんんっ」
健気!! 言いたい事は悲しい事によく伝わった。そして自分からお母さんのような存在になったので断る理由がない。しかも、前世含めてこれでもxx歳。子を持つには充分な年齢だ。
「そ、それでも俺は……お姉ちゃん呼びの方が嬉しいかなぁ?」
そう言うと、2人とも悪戯が成功したような顔で言った。
「嘘だよリア。私のお姉ちゃん。そして将来を添い遂げる大切な人」
「私達はリアに全てを捧げる覚悟がある。ちょっとからかっただけ」
「冒険終わりの一息くらいは抜けたかな?」
2人の言葉にリアは項垂れつつも、嬉しい事をしてくれるものだと2人の頭を撫でた。
「まったく……でも俺の事を考えてしてくれたんだな。ありがとう」
「うん、でも……お母さん呼びも中々……」
「一種の『プレイ』みたいでよかったね」
この幼女2人のとんでも発言に、流石のリアも。
「さては俺の部屋のパソコン触ったな?」
2人の肩がびくりと揺れる。パソコンのパスワードはリアの誕生日という簡単設定であり、ぶっちゃけ誰でも開ける。インターネットが発達した現代だ。調べ物などいくらでもできる。恐らく彼女達はドッキリについて調べていくうちに、そういう『えっち』な事も見てしまったのだろう。
「はぁ、今後パソコンを触る時は俺を通す事!! でも2人とも喧嘩しなかったみたいだし。少しは仲良くもなったんだな」
「寂しさを埋めるのは人肌だよリア」
「一緒にお風呂に入ったら、それなりに絆が生まれた」
出発前はまだ喧嘩腰だった2人が仲良くなったのは嬉しい事だ。やはり時間やきっかけが大切なのだと思う。
2人を見て思う。俺もアデルやルナの気持ちに応えないとな。




