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灰色のミディアムヘアをした、幼い顔立ちの少女がリアの病室を訪れる。彼女の名前は、アデル・ラドフィール。背が低く子ウサギのような印象で、幼い顔立ちもあり、どこか可愛らしい少女だ。リアが冒険者ギルドに加入して5年後に冒険者となり、リアを先輩として尊敬している人族の後輩で魔法使いの付与術師である。
「先輩、ぐっすり眠ってるっすね。やっぱり結構無茶してたんすねー。ふふっ、普段の凛々しさからは考えられない程、可愛い寝顔っす」
溌剌とした笑顔でリアの顔を覗く彼女は……その顔をよりニッコリと歪ませる。不気味なほどの笑顔で、アデルはリアの頬を指でつつく。
「また先輩が遠のいちゃいました。まさか、ソロでドラゴンを倒すなんて本当に凄いっす。本当に……あぁ……」
アデルは思った。あぁ、この雌をめちゃくちゃにしてぇなぁ、と。
彼女の野望の中には、強い者を屈服させたいというものがあった。それに気がついたのは、リアを先輩として仰ぎ彼女に冒険者として大切な事を教えてもらったり、共に冒険に出たりしていた時のこと。
リアがどうしてもと言うので、泊まりがけの遺跡探索をしていた時である。恐らく遺跡の主である『ベヒーモス』という、黒い巨大な猪にドラゴンの角を生やしたような魔物と対峙する事になった。そこで、アデルは援護魔法をかけながらリアを支援しつつ、リアが獅子奮迅の戦いを見せどうにか倒せたのだが……流石のリアも戦いに全魔力を使い切り、疲労によりダウン。そこで、1日看病するというイベントがあった。
その時……加虐心が疼いた。
あぁ、あんなにも強かった先輩が今は無防備に自分の身体を、全てを、このアデルに預けてくれている。先輩を守る者は自分だけ、つまり先輩を『めちゃくちゃ』に出来るのも自分だけ。
こんなにも強い雌が、この私に全てを預けてくれている、今何をしても拒否される事のない現実は、甘美な果実のようで。アデルの心を黒く蝕み隠れていた欲望を露わにさせたのだ。
まぁ、この時は初めての感情に戸惑い、結局リアに抱きつきながら看病し終えてしまったのだが。今でも勿体無い事をしたと思う。もし、あの時に戻れたのなら……嬌声をあげさせ快楽で落とす事も可能だっただろう。
そしてまぁ、そう都合良く遺跡探索のようなイベントは起きない訳で。次第にリアは強くなっていき、魔力量も増していった。
そこでアデルは決意した。彼女よりも強くなってみせると。その時になったら、無理矢理に彼女を屈服させ、自分の色に染めあげてしまうのだと。
なのに、まさかのソロでのドラゴン討伐という偉業を成してしまい、欲望は遠のいてしまった。
「ふふふっ、先輩……待っていてくださいっす。必ず貴方を私の『雌』にしてみせるっす」
だから、せめて眠っている間のこのチャンスくらいは有効に使わせてほしい。そんな思いから、アデルはリアの唇にキスをすると魔力を流し込んだ。これから貴方を屈服させる者の魔力……それを身体に覚えさせる為に。また、少しでも私の色に染まってほしいという欲望と共に。
……その時、魔法使いの彼女だからこそ気がついた。リアの魔力に、別の魔力が混じっている事に。
「……っち。また、あの女っすか。私の先輩に……」




