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「ちょ、急に何を言い出すのさマリアさん!! と言いたいところだけど、理由はなんとなく察せられるんだよなぁ。要するに、エルフで長寿でもある俺を商会に加える事で基礎を盤石にしたい……ってところだろ? それにクロエを迎える枠に俺を入れれば事態は解決するもんな」


「それも確かにあるのですが……単に惚れましたわー!! 助けられた時、私の心に温かくも情熱的な気持ちが湧き上がってきたんですの!! これは間違いなく恋です!!」


 マリアはうっとりした顔で、リアの手を撫でる。リアもリアで、前世を含めて初めて告白されたのもあり驚いた。


「マジか」


 その場で固まり、返答に迷うリアだったが、隣で見ていたアデルが2人の手に掴みかかる。


「は、離れてくださいっす!! 先輩は誰のものにもならないっすよ!!」


 必死に手を解き離れさせると、アデルはマリアをキツく睨みつけた。アデルの睨みに、戦い慣れている筈のマリアは怯んだ表情を見せる。鬼のようなオーラが透けて見えた。


「先輩を嫁に貰うなんて厚かましい事を……それに先輩はいつか私のものになるんす」


 低い声で唸るように言うアデルにリアは「いや、誰のものにもならんが……」と困ったようにツッコミを入れる。アデルはリアの反応に右頬を膨らませる、そんな反応に素でリアは聞いた。


「……え、アデルも告白してる?」


「告白とはまた違うっす」


 アデルの言葉の意味が分からず頭上にハテナを浮かべるリア。まるで漫才みたいな展開を見ているようで、エストがクスッと笑いを零す。

 一方で威圧されたマリアは、しかし当然諦めるなんてことはしない。


「クロエちゃんの事とかも、色々ありますが……単純に貴方を好きになりましたの。それに先の言葉の通りでもありますわ。貴方様が我がクランに加わり、いつの日か私の後を継いでくだされば問題は解決します」


 言ってる事は分かるつもりだが、リアとて急にそんな事を言われても……そもそも腕っ節はあるが商業に対する才能などはないと自覚している。というより、推定年齢18〜20歳くらいのマリアがその席にいる事が異常なのである。

 それに自由奔放な冒険者だからこそ今の人生を楽しめている事もあって。


「でも断るよ。今回の問題の解決までは、いち冒険者として付き合うつもりだけど……結婚とか後継者とかはまだいいかな」


 申し訳なさそうに、しかしキッパリと断言する。そんなリアにマリアは残念そうに眉根を下げる。下げるが、次にはスッキリした顔で言った。


「なら……いえ、もうぶっちゃけ後継者とか関係なく結婚したいですわ。貴方に一目惚れしましたの」


「えぇ……」


 このままでは話がループしそうなので、エストが割って入り、両手を広げて会話を止めた。


「まぁまぁ、その話は一旦置いておいて。今しなくてはならないのは、襲撃犯の特定と今後の対策だ、そうだろう? それに、私の仕事としてはそろそろ尋問に移りたいのだが」


 エストに言われたマリアは、忘れてましたわと言わんばかりに頷いた。それから、未だ気絶しているリーダーの股間部分を踏みつけた。リーダーは突然の激痛に再び悲鳴をあげて起きたが、エストの鎖に縛られているので抵抗出来ずに喉から搾り出すような唸り声を上げる。


「や、やめてくれ……」


 4人を見て怯えた表情で懇願する彼に、完全に心が折れたなと思ったリアは単刀直入に聞いた。


「じゃ、君らの正体と雇い主を言おっか?」


「俺らは帝国の冒険者一味で、雇い主はデクスター商会だ。頼む、金で雇われただけなんだ!! 俺はどうなってもいい、仲間は助けてくれ!!」


「おっ、中々に気概と骨のある発言だ」


 リアはリーダーの懇願に対して少し感動した。この世の中、仲間の為に自分を売れる人間がどれほどいるだろうか? この男は、中々に気骨があるようだ。それはマリアも同じらしく、驚いた顔でリーダーを見る。


「貴方、うちで雇われてみません?」


「えっ?」


「正直、粗暴で野蛮な連中かと思いましたが、違ったようです。それにデクスター商会への意趣返しにもなるでしょうし。どうでしょう? 給料はあなた方の働き次第ですが、ボディーガードとして是非とも欲しいですわね」


 暫しリーダーは黙り考え込んだが、どう考えてもこの状況ではイエスしか選択肢がなく。そもそもの話、雇い主を言ってしまった以上デクスター商会からの報酬も無いかもしれないと考えると、これほどにおいしい話は他にない。


「分かった……雇われよう。しかし、その前にデクスター商会への契約は履行しなくちゃならねぇ。それに、俺らはあんたを捕らえようとしたんだぞ?」


 話には乗るが、リーダーの言葉には前の契約を守る覚悟があった。あとは女性を攫おうとした事実に気遣いすら感じる。益々いち冒険者として気に入ったマリア。これで可愛い女の子ならば永久雇用確定なのになぁと思いながら。


「あぁ、それなら……」


 マリアは再びリア達に顔を向けると、頭を下げて頼み込んだ。


「御三方に依頼を出してもよろしいでしょうか? 目的はデクスター商会への落とし前ですわ」


 エストは困った顔で「いや、私は国直属の組織だから難しいのだが」と苦い顔をしたが、すぐに上司と連絡を取ると普通に許可が降りて更に渋い顔をした。リアは最後まで付き合うと言ったので雇われる事にして、アデルも提示された報酬を見て目の色を変えた。つまり全員参戦である。


「これで大丈夫ですわリーダーさん。デクスター商会への契約は、もはや無効になったも同然です」


 それからマリアはリーダーの男と《契約》を交わし、話がいち段落した頃合いでリアは問いかけた。


「ところで落とし前って簡単に言うけど、どうするつもりなんだ?」


「証拠は揃っているのですから、突きつけて《契約》の魔法で縛りますわ。ファータ」


「はい、お嬢様」


「《契約》の魔法の準備を」


「すでに出来ております」


 ファータが杖を出して振るうと、一枚の紙が現れてリアの手に降りる。リアは紙に記入された事項を読み……今後の接触不可や契約するのならば帝国警備隊に通報はしない等、大凡この契約ならば大丈夫だろうと思った。

 それから、律儀にもリア達を雇う為の契約書もあった。報酬は10万ドルで、デクスター商会への侵入、及び商会長デクスター・ミラーシュの拘束が仕事である。襲撃の際に起きる備品などの損失被害はこちらが受け持つともあり、自由に暴れていい事が分かる。とは言っても、某侵入ゲームのごとくダンボールでも被って穏やかに行きたいものだと思った。


 そんなこんなで、襲撃者の冒険者一味は骨をへし折られた者が多い為、この国で療養。費用は自腹だがこればっかりは自業自得なので我慢してもらおう。


………………………


 場所は移り、国を空ける為の手続きを役所でした後、船着場に戻るとマリア商会の大型浮遊船に入った。旅行鞄に服や日用品を詰め込み、旅行する気満々である。マリアは残りの商談を済ませた後に合流、彼女が帰り次第出港だ。


 リア、エスト、アデルの臨時パーティーにはひとり一部屋ずつ与えられたが、皆リアの部屋に集合していた。


「行きで2日。帰りは高速船に乗るとして、事態の解決と観光に4日で、つまりざっと1週間な訳だが」


「迷宮探索の事前説明会&作戦会議が8日後っすから、ギリギリっすね」


「観光する気なのか? お気楽だな……。私は緊張しているぞ」


「エストはもうちょい肩の力を抜いていこうぜ」


 アルテイラ王国からテスラ帝国まで、海を渡る為に浮遊船ではあるが専用の航路で向かう。だが大型船は速度規定があるので行きしなは2日はかかるのだ。だから、リアは計画を練っていた。まず、デクスター商会への件は1日で片付ける。残り3日は、この国よりも科学の進んだ帝国のサイバーパンクな世界を楽しみ尽くすのみだと。


「というか、先輩。本当に1日で終わらせるつもりっすか? うーん。でもまー、確かにこの面子でなら1時間もかからないっすかね?」


「連携の予行演習にもなるし一石二鳥かもしれんな」


 アデルはお気楽に、エストは真面目に考えている様子である。ただ、各々信頼も信用もしているので負ける事は一切考えていなかった。

 その後、ギルド長のダルクやクロエ、ルナに国をしばらく空ける事を伝えたのだが、ルナからはかなり残念そうな返事がきた。


『私もリアと旅行に行きたかったです……』


 電話越しに分かるほどだったので、リアはふふっと笑みを浮かべて言った。


「なら、今度2人で旅行に行こうか」


『本当ですか? 約束ですよ?』


「あぁ、約束だ」


 そう言うと、ルナは満足そうな声色で『では、気をつけて依頼を達成してきてくださいね』と身を案じてくれた。


………………


 そうして浮遊船が出港してから2日。

 空の船旅を楽しみながらやってきました、テスラ帝国。

 身分証の冒険者カードとパスポートを見せ港を出ると、そこにはアルテイラとはまた違った、しかし異世界らしい都会な街並みが広がっていた。


 高層ビル群が多く並び、ホログラムの電子広告空が沢山展開された街並みは、サイバーパンクな雰囲気をヒシヒシと感じさせる。空にはアルテイラと同じく空飛ぶ車が飛んでいるが、仕組みが微妙に違っておりプロペラや浮遊装置などの機械類が主に使われている。小型のヘリも見受けられる事から、魔法だけでなく機械技術が進んでいる国だとよく分かる。

 石油が採れる事から、魔法よりも化学と科学が進んだとされていて、石油の恩恵から進化した街は圧巻の一言であった。またアルテイラと同じくらい他国からの人々も多く貿易も盛んな国である。


 アルテイラと違う点をあげるとするならば……昔ながらの文化を取り入れており、決闘文化が未だに息づいている事だろうか。そして石油の恩恵からか自然も大切にしており、郊外に行けば街並みは一転し、自然豊かで穏やかな場所も数多い。


 と、短く説明した街ではあるが、観光するにはもってこいだ。機械産業が盛んなので、魔力でなく電気で動く家電等はここで買うのが1番いいし、最新のゲーム機や電子書籍、立体映像型の携帯端末や眼鏡型端末なども、この国発祥が多いのでゲーマーや流行に敏感な人にとっても魅力的な国だ。


 だが、今から行わなくてはならないのは観光ではなく、商会への襲撃である。ゾロゾロと多くの者を引き連れて歩きながら会話をする。若干、自分に視線を多く感じるのはまぁ、珍しいエルフだからか。それともグラビアを知っている人がいるのだろうと思う。


「なぁ、マリアお嬢様。本当に襲撃しても犯罪者にならないよね?」


「マリアと呼び捨てにして結構ですわリア様。そしてその問題は大丈夫です。帝国では企業間の争いが多く、国はその辺かなり寛容なので……人死にレベルからでないと警察組織は中々動きませんの」


「それはそれで物騒っすね」


「警察組織の教えはどうなっているんだ教えは」


 エストとアデルも感想を言いながら、問題のデクスター商会のビル前に来ると、ファータが担いでいた大きなアッシュケースを地面に置いた。アタッシュケースにはサブマシンガン式拘束弾銃が入っており、ガチャガチャとセッティングしながら彼は「ふむ……」と呟く。眼鏡型デバイスを装着しながら様子を伺った。


「まだバレてはいないようです。襲撃を開始しますかお嬢様」


「そうですわね、事は早い方がいいですわ。御三方も頼みます」


 リア、エスト、アデルは顔を見合わせると頷いた。そしてポケットからマリア商会より支給された拘束弾入り拳銃を取り出して、各々の武器を利き手に構える。


 先にアデルが魔法を詠唱し、3人に付与をかけた。


 能力は筋力に補正をかける《身体強化》。

 武器に雷を付与する《雷属性付与》。

 素早さに補正をかけ、目まぐるしい展開に視界や聴覚が追いつくようにできる《俊敏強化》と《三半規管強化》。


「まぁ、先輩には必要なさそうっすけど一応かけておくっす」


「いや、有難いよ。ありがとうなアデル」


「えへへ……んじゃ、デバフもかけておきますか。《脱力》!!」


 アデルが大きな魔法陣を空に浮かべると、ビル全体に《脱力》という、筋力にマイナス補正をかける魔法を展開した。そこでようやく異変を察知したらしい警備員が出て来たが、


「《鎖魔法》」


 エストの鎖にぐるぐるにされて倒れ込んだ。口にも鎖を噛ませ声をあげさせないようにするあたり、彼女の性格が表れている。それから、ファータがなにやら小型の携帯端末を取り出すと、機械の先端からレーザーのようなものが照射され、画面に赤点が浮かぶ。


「だいたい60人ほどいますね」


「んじゃ、行きますか!! ごーごー!!」


 3人とマリア商会の数名は、リアの号令と共にビルへと突撃するのだった。穏やかに行きたいとはなんだったのか。戦闘狂の気質が若干あるリアは既に忘れているようである。

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