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初投稿です
前作から名前だけ流用してます初投稿です
百合のネタが思いついたら書こうと思います
ノープロットで初投稿なので後ほど消すかもしれません
ネタ募集中!!
絹糸のようにサラサラで、湿り気を感じる程に艶やかな長い黒髪。長いまつ毛の下から覗く双眸には、宝石よりも綺麗に見える空色の瞳があり……目の形は勝気な印象を受けるツリ目だが、それが逆にクールな雰囲気を醸し出している。肌は白く絹糸のように滑らかだが、今は所々血を流し汚れていた。
そして注目すべきは長い耳だ。それはエルフという種族の証明である。
そんな少女『リア・リスティリア』は漆黒のドラゴンと相対していた。
黒い黒曜石のような鱗や甲殻に包まれた爬虫類を思わせる体躯だが、凶悪な口元から覗く鋭い牙や、筋肉の盛り上がった両手足の強靭そうな爪、そして黒くしなやかな翼と、何でも切り裂けそうな、長い刀のような尻尾。
大きく冷たい眼光を備えた、美しくも禍々しい金色の瞳。それから、甲殻に包まれたゴツい頭部の左右には、赤黒く曲がりくねったツノが二本、後方に伸びている。
そして全長400m、全高170mの巨龍である。
そんなドラゴンは切り傷と裂傷だらけで多くの血を流している。翼膜は特に酷く破れており、飛ぶのはもう難しいだろう。しかしどれも致命傷にはなっておらず、戦いが長引いている事だけを証明していた。
周囲には『黒い風』がドーム状に吹き荒れており、ドラゴンの逃走を阻止している。リアの《黒風魔法》だ。魔力の半分を使った巨大な黒い暴風の壁は、どちらかが力尽きるまで収まらない。
互いに睨み合う。そこで先にリアが動いた。
「【纏え】!!」
愛用の片手剣に突風を付与して、飛びかかる。ドラゴンは強靭な尻尾を振るって対処しようとするが、リアは風で飛んで回避、次いでくる翼爪の怒涛の3連撃も風のセンサーと持ち前の直感で回避し、次いで風に乗り加速してドラゴンの眼に向け片手剣を突き刺した。
「GUAAAAAAA!!」
片目を潰されドラゴンは咆哮をあげる。リアは至近距離の爆音に思わず怯み動きを止めてしまう。そこを好機と見たドラゴンは口元に炎を携え、吐き出した。地面が融解する程の高温が飛来し、辺りを朱色に染め、まるで地獄のような有様である。だがリアはドラゴンが炎を吐くよりも早くに空へと跳躍していた。無論、ドラゴンも避けられるのを把握していたようで、そのまま首を上に向けリアを焦がそうと火炎の向きを変えた。
だが、リアは空中で風を纏い空を蹴って身体をひねり避けると。ドラゴンの背中、戦いの中で見つけた唯一の弱点である甲殻の間、肉質が脆い箇所に狙いを定めて、風を纏い急降下し片手剣を突き刺した。
「【暴れろ】ゥゥウ!!」
片手剣から黒風が吹き荒れて、ドラゴンの体内をズタズタに引き裂きていく。余りの激痛にドラゴンは暴れ回るが、リアは最後の握力と言わんばかりに片手剣を握りしめて離れない。荒れ狂う黒風はやがてドラゴンの殻や鱗、傷跡から突き吹き抜けていく。
そうする事──5分。
ドラゴンの動きがパタリと止み「ズドン」と音を立てて崩れ落ちた。同時にリアも握力が抜け、ドラゴンの甲殻を滑り落ちるように転がった。全身の痛みと魔力、体力切れによりもう眠ってしまいたい程の疲労感の中、どうにか右手を動かしてポーチから傷を癒す為のポーションと魔力回復のポーション瓶を抜き取り口の中に流し込む。瞬間、血の出ていた箇所は血が止まり、火傷も少しだが痛みが引いた。
長い戦いが終わり、空が白け始める。月明かりは陽の光に変わり、眩い太陽がリアを祝福するように辺りを照らす。
「……成し遂げた」
血塗れのドラゴンを殴りつけると、不敵な笑みを浮かべた。そしてゆっくり目を瞑ると、ここに来るまでを思い返す。
この世界に転生してから、随分と長い時が流れた──。
……………………
自分には前世と呼べる記憶があった。とは言っても、もうこちらに来てから長く殆どの記憶は抜けてしまっているが……。前世と唯一違う点を挙げるとするならば、男の子から女の子に性別が変わってしまった事だろう。しかも、エルフというファンタジーの種族に。
そりゃ、もう焦った。女の子の身体なんてよく分からないし、なによりも耐性がなかった。前世では女の子と付き合った事すら無かったのだから仕方ない。
そんな訳でエルフ特有の長寿命のせいか見た目だけなら少女で顔も美しい母親の裸にすら、赤面するくらいには初心であった。最初のうちは自分の全裸ですら顔を真っ赤にした事だってある。
まぁしかし、時は全てを解決してくれる訳で。生理を経験する頃には初さは程々に改善され、自分は程よく育ったエルフになっていた。
艶やかな黒髪と空色の瞳をした、それはもう美しいエルフに。胸は程々に大きく、お尻は安産型。肌はエルフ特有の白さを保ち、瑞々しく滑らかだ。100人いれば99人は振り返るんじゃないかなってくらいの美少女である。
そんな訳で幼少期はそりゃもう楽しかった。まぁ今も変わらないが、男の子にそれっぽい動作をして弄んだり、勘違いさせたりと女の子の身体を存分に活かして遊びまくった。自分も初心だが、容姿のおかげで面白いくらい良い反応をする同種族の男どもはそれはもう思春期のいいおもちゃだった。特に幼馴染なんかが告白してきた所を頬を染めながら「女の子が好きなの」と酷い振り方をしたくらいだ。思い出しただけでも身震いしてしまう思い出である。幼馴染にはほんの少し申し訳ないとは思うが。
しかし、5年と時を経る頃には性格も落ち着き……そんな時に聞かされたこの世界の英雄譚を聞いて、男の子の心を揺さぶられたのだ。
時に……この世界には『冒険者』という職がある。強き者が成り上がり、パーティーを組んでは未知の遺跡や迷宮を探索したり強大な魔物を倒したりといった事が日常的にあるのだ。
だから当然、リアも例に漏れず冒険者に、『英雄』に憧れて、エルフの村で『風魔法』を学びそれをオリジナルの《黒風魔法》に昇華するまで鍛えあげてから意気揚々と村を出た。50年に一度は帰ると母親のノルンと約束して。
そして旅の途中、野党や山賊に襲われては返り討ちにし、そこで出会った冒険者に剣の使い方を教わったり、王都に着いてからは『冒険者』登録をして、そこで出会った同族の少女と魔法使いとして活躍してみたり。毎日を楽しんでいたある日の事。ここアルテイラ王都の近辺にドラゴン襲来の知らせが届き、これはチャンスと挑んで今になる。
ドラゴンは絶対強者の象徴であり、一体で国を滅ぼしかねない災害のような存在。そんなドラゴンをソロで討伐したとなれば憧れていた『英雄』に一歩近づくのだ。だから……挑んで今に至る。
…………………
「無茶しすぎたか、いてて……」
湿布薬で治療済みの火傷した箇所をさすりながら愚痴る。ドラゴン討伐の証拠はどの国でも発行してくれる魔法の冒険者カードに記されるので持ち帰らなくても問題ない。だが、一応国へと討伐完了の知らせをメールで送っておいた(画面はバキバキに割れていた)。後で王国の部隊が運んでくれる手筈になっている筈だ。じゃないと個人的に困る……。
まぁ、英雄願望的には……本当はこの手で持って帰りたかったのだが。流石にあの大きさは無理であった。たぶん、全力の風ならば押せるだろうが、魔力が無い以上仕方ない。
そうして王都の門に辿り着いた時である。大勢の人達が待ち構えており、リアの姿が見えるなり何人かが駆け寄ってきた。見知ったギルドの仲間達である。
「うぉおお本当にソロでドラゴンを倒したのか!? やるなぁ!!」
「凄いっす!! 尊敬するっすよ先輩!!」
「あはは、もっと褒めるがいい!!」
カウンターで酒屋をやってるおやっさんのガジルがガシガシとリアの頭を撫で、後輩で魔法使いで付与術師の少女アデルがウロチョロと動き回る。
遠くでは同族のエルフの少女であり、王都に来て初めての友達でもあるルナが手を振っていた。だから、リアは皆の期待に応えるように大きく手を振りながら凱旋する。
……その後、普通に倒れて病院に担ぎ込まれるのだった。




