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Curse of the Hero  作者: 化廼 信乃
第一章 メシア
3/7

二 生まれるお話

「オギャア、オギャア!!」


 仄暗い部屋で産声が響いた。それから半テンポほど遅れてドアが凄まじい勢いで開けられ、全身に甲冑を纏った人物が入ってくる。もみ上げと顎髭がつながったまるで熊のようなその男性は、部屋の中にある唯一のベッドに寝ている女性に話しかける。


「生まれたか!? 生まれたのか!?」


 そんな言葉に、女性は息を荒げたままクスリと笑い、答える。


「ええ。あなた、抱いてあげて」


 そんな母親と思しき女性の言葉に、子供をとりあげたであろうベッドの側に佇み今生まれたばかりの子供を抱いている女性が、その子供を男性に差しだした。

 男性はその子供を恐る恐る抱くと、おぉ、おぉ、と感極まった声を発し、終いには泣き出してしまう。その涙を見た女性は産後の痛みがあるにも関わらず笑いながら男性から子供を受け取る。


「ねえ、この子の名前決めた?」

「いや、まだだ」

「だったら、『ネメシア』なんてどうかしら。綺麗な花の名前なんだけど……」

「おいおい、この子は男なんだぞ? 花の名前なんて……」

「ただの花じゃないのよ? 花の一種ずつに言葉があるんだけど、この花の言葉は正直。さらに王都の方では希望の花として使われてるの」

「そうなのか。正直に希望……。いいじゃないか。よし。この子の名前は『ネメシア』だ!! よろしくな、ネメシア!!」


 男性がそう言いながら生まれたばかりの子供の顔を人差し指で撫でる。まだ眼も開かないその赤子は、その人差し指を掴みながら一際大きな泣き声を上げた


―☆―☆―☆―


 生まれてから2年ほど経っただろうか。漸く意識がはっきりしてきた。以外と時間がかかったなという印象だ。

名前はネメシア。愛称はメシア。父、マックは冒険者なる仕事をしていて、母クフェアは専業主婦といったところだ。二人が住んでいるこの村の名前はフェルム。人口百人ちょっとの小さな農村だ。その村に雇われて父が住み込みで護衛をやっていたところ、母に惚れて二人は結婚したらしい。父さんが酒に酔っ払いながら大声で話してた。


 メシアという愛称にもようやくなれた。最初はヒーローと重ねてとても重く感じたが、どうやらこの世界には普通に魔物と呼ばれる、問答無用で人間種を襲う敵がいるらしい。

 ということは、だ。


 強くなれれば、俺はこの世界で憧れたヒーローになれる。


 俺もようやく歩けるようになって、父は号泣していた。この人完全に親ばかだ。子供からするとやっぱり少しはうれしいんだけどね。

 

 ……取りあえず、転生するときに言われた様に、ステータスを見てみよう。


(オープン)


 心の中でそう念じると、すっと視界に一枚、PCで言うタブのような物が開く。


『Status

  《Str: 5》

  《Vit: 3》

《Agi: 6》

《Int: 5》

《Ive: 4》

《Luk: 8》

  Curse

《英雄願望》《英雄たれ》《無限の才覚》

  Ability

《鑑定Lv,1》《隠蔽Lv,5》』


 うおぉ……カースの欄が凄いことになってる。何これ全部かっこいいんだけど。ちなみに、アビリティという欄の二つは質疑応答の時にこういうのが欲しいと言ったら本当にくれた。

 簡単に説明しよう。カースというのは、この世界では神より与えられた祝福の力で、複数のアビリティを内包した物や、ソレ独特の効果を持つ物など様々らしい。

 アビリティというのは、その人の技能。たとえば、今はないけど剣術等があったらここにかかれるわけだ。ついでに技能事にレベルという物があり、簡単に言えばこれが高ければ高いほどその技能に長けている、ということだ。

 次にステータス。上から筋力(転じて攻撃力)、生命力(転じて防御力)、俊敏性、知力、抵抗力、運の良さ、と言った具合だ。


 というわけでリクエストした鑑定さんを早速使っていこう。レベル1でも、自分の技能の詳細を見ることは出来るらしい。レベルが上がるとそこら辺の物や、相手を鑑定できるようになるらしい。将来的に是非育てたい一品だ。

 取りあえずカースを鑑定していこう。鑑定の仕方はステータスを出すのと同じように念じるだけでいいらしい。


(英雄願望、鑑定)


 すると、ステータスのタブの上に小さなタブが出てきた


『英雄願望

 Curse

 鬘倥>繧貞掌縺医k縺溘a縺ョ繧ォ繝シ繧ケ縲よ?髟キ騾溷コヲ螟ァ蟷?P縲∝屓蠕ゥ騾溷コヲ螟ァ蟷?P縲 』


 何だこれ。文字化けを起こしてる。一切どんなカースなのかわからない。あれか、アビリティレベルが足りないのか? アビリティレベルは使っていれば上がるそうなのでまた今度試してみよう。

 次はっと。


(英雄たれ、鑑定)


『英雄たれ

 Curse

 闍ア髮?→縺励※縺ョ蠢?戟縺。繧定。ィ縺吶き繝シ繧ケ縲りイ?縺代k縺薙→縺ッ險ア縺輔l縺壹????£繧九%縺ィ縺ッ險ア縺輔★縲∵舞繧上*繧九%縺ィ豎コ縺励※辟。縺?? 』


 ありゃ、こっちも文字化け起こしてる。やっぱりレベルが足りないのか。鑑定のレベリングは今後の課題だな。

 次は無限の才覚か。これも文字化けしているのだろうか。


(無限の才覚、鑑定)


『無限の才覚

 Curse

 成長上限を無くし、無限に成長するためのカース』


 お、これは鑑定できた。内容は名前通りとってもチートな一品。成長上限無しってやばすぎるんじゃ……。

 まぁ、その時の為に『隠蔽』というアビリティを貰ったのだから、予想通りでうれしいです。


(隠蔽、鑑定)


『隠蔽

 Ability

 隠すアビリティ。ステータスの何かを隠したり、自分自身の姿を隠したり、応用が利く』


 レベル5だったらそうとう隠せるはず。手始めにカースを全部隠してっと。お、出来た。いいね、やっぱり便利だこれ。ついでに隠蔽自体も隠してっと。

 まぁ、鑑定のレベルが隠蔽を上回っている場合、隠蔽を看破されるらしいので、隠蔽も育てなきゃな……。


 と、そんな感じに庭でステータスを見ていると、


「お、もうステータスが見られるようになったのか? メシアは速いなー!!」

 

 そう言いながら父さんがステータスをのぞき込んできた。一瞬びっくりはしたが、マズい物はすでに隠蔽したあと。逆に動揺する方がおかしいので、どうにか平静を保つ。


「うん。でもこのすてーたすってどうなのかなぁ、つおいの?」


 如何せんまだ二歳なので舌が良く動かない。


「どれどれ? 2歳児でこれか。メシア凄いぞー!! 将来は有名な冒険者になれるかもなー!!」


 そう言いながら脇の下を掴んで高い高いしてくれる父さん。ああ、何かこうしてると童心に返ったみたいで少し楽しい。


「ぼうけんしゃー? なるなるー!!」

「おーそうかそうか。じゃあ何時か父さんと一緒に冒険しようなー!!」

「うん!!」


 そんな感じで平和に、伸び伸びと暮らしていた。


 

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