06.共通の弱点
本日3話目です。
〈前回まで〉
頭の寂しい三人が仲間になった!
パーティ結成を決めた、翌日朝。
三人は、王都の近くにある野原に来ていた。
勢いで組むことを決めたものの、お互い知っているのは、職業とランク、髪型くらい。
これから一緒にやっていくためには、それぞれの戦い方を把握し、機能的に動いていく必要がある。
相談の結果。
前衛は、侍であるレン。
中衛には、全ての属性の魔法が使える賢者ダリオ。
後衛は、魔弓士であり、剣も使えるエリアス。
「寄せ集めにしちゃあ、バランス良いよな」と、ダリオ。
リーダーは、最初に二人に声をかけたレンということになった。
野原をずんずん歩く三人。
そして、数分後。
前方から、五匹の狼の魔物が飛び出してきた。
「まずは俺が行こう」
唸り声を上げる狼に近づくレン。
刀を抜くと、声を張り上げた。
「<疾風迅雷>!」
レンの体から、ぶわっと風が巻き起こる。
素早く帽子とフードを押さえる後ろの二人。
そして、次の瞬間。
レンの姿が消え。
二人が気付くと、狼五匹が地に切り伏せられていた。
「これが俺の必殺技、<疾風迅雷>だ」
カチン、と、刀を鞘に納めるレン。
ダリオとエリアスが、「おお」と、拍手をした。
「初めて見たが、『侍』、想像以上に強えな」
「ええ。さすがは最上位職ですね。こんなに強いとは」
「あと、お前のダサいバンダナの謎が解けたぜ。そのスピードじゃあ帽子はかぶれないよな」
「ああ。そうなんだよ。帽子もバンダナも色々試したんだが、このバンダナ以外は疾風迅雷に耐えれないんだ」
なるほどなるほど、と、納得する二人。
その時、前方から七匹の狼型魔獣が現れた。
「次は俺だな」
前に出るダリオ。
右手で杖を上に掲げると、左手でフードを押さえながら、叫んだ。
「<大爆発>」
ボカンッ
狼たちの中央部分で、ものすごい爆発が起こり、爆風が吹き荒れる。
一瞬にして丸焦げになる狼たち。
爆風が収まると、フードから手を離したダリオが得意そうに言った。
「これが俺の必殺技、<大爆発>だ。今のは加減しているが、実際はもっと威力がある」
レンとエリアスが、ぱちぱちと手を叩いた。
「俺の知っている魔法職とは比較にならないくらい凄い威力だ」
「ええ。びっくりしました。ただ、使う前には教えて頂きたいですね」
はるか遠くに帽子を飛ばされ、ものすごい髪型で微笑むエリアス。
ダリオが必死に頭を下げた。
「す、すまん! 技を見せることに集中して、気が利かなかった!」
「いえ、いいんですよ。幸い、我々以外誰もいませんし」
レンが走って拾ってきた帽子をかぶって、にっこり笑うエリアス。
その時、六匹の狼の魔物が現れた。
「では、次は私がいきましょう」
前に出るエリアス。
そして、「フードを押さえて!」と叫ぶと、弓をつがえて声を張り上げた。
「<疾風の矢>」
風の魔力を帯びた矢が狼に次々と命中し、風を巻き起こす。
必死に頭を押さえる、ダリオとエリアス。
そして、数秒後。
そこには切り刻まれた狼が倒れていた。
「これが私の奥の手、<疾風の矢>です」
素晴らしい、と、ぱちぱち手を叩くレンとダリオ。
「魔弓士って初めて見たけど、すごいな」
「ああ。超レア職業だ。武器に魔法を乗せれるってのは、こんなに凄いんだな」
そして、三人は深刻な顔になった。
なんか俺らの必殺技って、諸刃の刃じゃないか。と。
「確かに威力は凄いけど、必殺技の度に片手が塞がるのは危ないよな」
「まあ、そうだな……。いざって時に対応できねえ」
「全員同時に必殺技を出したら、片手どころか両手が必要な事態になるかもしれません」
これは由々しき事態だと頭を抱える三人。
そして、レンがポンと手を叩いた。
「いい方法があるぞ! 全員、俺のバンダナを巻けばいいんだ!」
シンと静まり返る野原。
しばらくして、エリアスがにっこり微笑んだ。
「…………とりあえず、風に対する耐性については、課題ということで、おいおい考えていくことにしましょうか」
「ああ、そうだな。なんかいい装備見つかるかもしれねーし」
同意するように頷くダリオ。
しれっと、なかったことになるバンダナ案。
そして、この日。
三人は、「このパーティなら邪竜と勝負できる」と確信。
正式に、ツルッパーゲ侯爵のエリクサークエストを受けることを決めた。
次回、運命の面接。
本日はここまでです。また明日投稿します。