14.またな
本日二話目です。
話の区切り上、少々短いです。
レンが消え去った後。
ダリオとエリアスは、尻もちをついたまま、呆気にとられていた。
空にぷかぷかと浮いていた女性はいつの間にか消えており、見えるのは、雲の間から降り注ぐ幾筋もの柔らかい光のみ。
しばらくして。
ダリオがぽつりと呟いた。
「……なんか、最後、怒涛の展開だったな」
エリアスが、我に返ったように頷いた。
「そうですね……。女神って、あんなに人の話を聞かないんですね」
「だな……。俺、これから女神に向かって祈るのやめるわ」
「私もです」
はあ、と、溜息をつく二人。
そして立ち上がると、泉の前に移動した。
「さあ、俺らはどうするか、だよな」
「そうですね……」
考えるように目を伏せるエリアス。
そして、ポケットから白いハンカチを取り出すと、泉の水に浸した。
同じようにするダリオ。
そして、二人はそれぞれフードと帽子を取ると、ハンカチを頭に乗せ、笑い合った。
「まあ、今日のところはこれで我慢しておきましょう」
「だな! 俺たちだけフサフサになっても、合わせる顔がないもんな! ビンがあと三本あるから、俺たちとレンの分ってことで持って帰ろうぜ」
「それは名案ですね。レンが再びこの世界に来たら、一緒に使うことにしましょう」
「何となくだけど、また会える気がするしな」
ハンカチを頭に乗せたまま、泉の水をくむ二人。
ダリオが三本のビンに魔法で封印を施して、丁寧にしまう。
そして、周囲を見回すと、ぽつりと呟いた。
「……じゃあ、帰るか」
「……そうですね。幸い、レンが魔獣をあらかた倒してくれましたから、二人でも何とかなるでしょう」
「ははっ。あの作戦は本当に凄かったよな」
のろのろと階段に向かう二人。
そして、下に向かう階段の前に立つと、名残惜しそうに空中庭園を振り返った。
「……またな、レン」
「……またお会いしましょう」
ゆっくりと階段を下りていく、ダリオとエリアス。
泉の横に置かれた聖剣が、二人を見送るように輝いていた。
次、エピローグです。