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10/15

10.全部まるっと無駄になりましたけど


本日1話目です。




「着きましたね」


「ああ、意外とスムーズだったな」


「だな! 俺ら、実は強えーからな!」



坑道から出て、数時間後。

三人は、魔王城であったとされる塔を見上げていた。



エリクサーで毛根復活すると確信した三人は、一気にパワーアップした。

襲ってくる毛が生えたゴブリンやオークの上位種を物ともせず、ばっさばっさと倒し、あっという間に塔の前に到着。

正に破竹の勢いである。


このままの勢いで塔を攻略したいところではあったが、塔から漂ってくる気配に、彼らは慎重になった。



「五階層ってとこか。かなりの数の魔獣が集まっているな」


「ええ。各階層に百匹以上はいそうですね」


「しかも相当強えーな。こりゃ坑道ダンジョンよりも難易度は上だな」



塔の高さは、およそ三十メートル。十階建てのマンションくらい。

勇者パーティが遺した書物によると、各フロアに大きな穴のような階段があり、そこから上にあがっていくらしい。


塔が魔獣の根城になっていることは想定していたが、この数は想定外だ。


レンが二人を振り返った。



「とりあえず、休憩しよう。興奮状態で気が付いていないけど、きっと俺たちは疲れている」


「んだな。結界張って休むか」


「そうしましょう。向こうに川がありますから、そこでどうですか?」



塔から離れて、川のほとりに移動する三人。

ダリオが一帯に結界を張り、レンが火を熾し、エリアスが食べ物を探す。


そして、三人はエリアスが採ってきた果物を食べながら、作戦会議を始めた。


ダリオが真剣な顔で口を開いた。



「七日とみてた訳だが、ぶっちゃけ、塔の攻略、どのくらいかかると思う?」


「そうですね。七日では無理でしょうね。あの数の魔獣を倒していくとなると消耗が激しいでしょうから、最低十日はかかるでしょうね」


「んだな。邪竜退治も含めて、二週間ってとこか」


「そうですね……。どう思います? レン?」



腕を組みながら難しい顔で黙り込むレン。


このまま進んでも、途中でポーションや矢などの物資が尽きる可能性が高い。

一旦街に戻って、再度準備をして臨むべきだろう。



(でも、それは果たして正解なんだろうか)



オークやゴブリンの頭が、やたらフサフサしているのだ。

このまま放っておいたら、泉の水が彼らに使い切られてしまうのではないだろうか。


彼は焦っていた。

一刻も早く泉を保護したい。



(何か良い方法はないか)



必死に知恵を絞るレン。


そして、数分後。

彼は閃いた。



(よし! これだっ!)



レンは顔を上げると、真剣な目で二人を見た。



「試してみたい作戦がある。やってみないか?」









翌日昼前。

ダレンとエリアスが、感心したように会話をしていた。



「凄いな、この作戦」


「ええ。我々では絶対に考え付かない方法です。異世界知識の勝利ですね」



最上部を除く塔全体を覆う、ダレンの巨大結界。

塔の一階では、運び込まれた大量の木々が轟轟ごうごうと音を立てて燃えている。

塔の大きな窓から、結界で阻まれて行き場のない大量の煙が、上に上にと上がっているのが見える。


しばらくすると、ゲホゲホと煙にむせたキングオーク達が、唯一開いている一階の出口から飛び出してきた。



ザシュッ ザシュッ



待ち構えていたレンが、キングオーク達を不意打ち。一刀両断する。


後ろで、「おー、すばらしい」と、ぱちぱちと拍手をするダレンとエリアス。


ダレンがボソッと言った。



「……こんなこと言うのもナンだが、ちょっと気の毒だな。俺たちを迎え撃つために、あいつら結構準備してたっぽいよな」


「ええ。待ち伏せしていたような気配もありましたから、皆さん、手ぐすねを引いて待っていたと思いますよ。罠とかも作ってたんじゃないですかね。全部まるっと無駄になりましたけど」


「出てくる奴ら、みんな、ちょっと怒ってるよな」


「ええ。『お前ら正面から正々堂々と来いよ!』みたいな顔をしている気がしますね」



そんなことなど気にせず、遠慮なく魔獣達を倒していくレン。



そして、数時間後。

空中庭園部分に残る巨大な何か以外の気配が消え。


レンは、カキン、と、刀を収めた。



「ふう。終わったな」


「お疲れ様です。レン。お見事でした」


「結界を解くから、ちょっと離れようぜ」



三人は再び川のほとりに移動。

ダレンが結界を解くと、ポンッ! と音がして、周囲に煙が充満する。


レンが気配を探った。



「あと残ってるのは、空中庭園にいるヤツだけだな」


「ええ。あれがきっと邪竜ですね」


「思った以上に強そうだけど、まあ、行けんだろ。こっちはほとんど消耗してないし、弱点の聖水も売るほどあるしな」



レンの心は高揚した。

遂に念願のエリクサーが手に入る!



その後、三人は念のため休憩。


翌朝早朝、意気揚々と邪竜を倒すべく塔に向かった。



「行くぜ!」


「おー!」


「行きましょう!」



希望に満ち溢れた三人。



――しかし、数時間後。

彼らは塔の上部で意外なものを見つけることになる。



「あれ? これって……邪竜じゃね?」


「黒い竜は邪竜しかいませんから、間違いなく邪竜ですね」


「……なんで死んでるんだ?」


「え? じゃあ、空中庭園にいるのは何?」




冒険はクライマックスを迎える。








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