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門出のダンジョン 4


 色違いのおしゃれなツナギに、色を合わせたヘルメット。

 もちろんヘルメットには日本語で『安全第一』

 そう、日本語で……。

 ……。

 いえ、深くは考えないようにしましょうか。


 レッドにブルー、ピンクにイエロー。

 戦隊モノを思い出すわね。

 もっともこの戦隊……もといパーティーはリーダーがブルーなうえに、レッドがふたりいるけれどもね。


 いえ、これはこれでアリなのかしら?

 いつもよりも注目されているような気がするし?


「やっぱり、見るひとが見れば分かるものなんだね。

 このツナギは新商品でね、特に空調機能のバージョンアップが(以下略)」

 ピンクの説明を聞き流しながら、内心深く頷いていた。

 なるほど、ブルーだけでなくツナギも目立っていたのね。


 何故だかため息をついてワタシの頭をベシっとはたいたリオンは、そのままさり気なく牙をキラリと見せている。

 うっとりとするお嬢さんたちの後ろにハートが飛んでいる、幻覚が見える気がするわね。


 一応、幼馴染の名誉のために弁解すると、アレは別に色気づいてやっているのではないの。

 そう、アレは警告なのよ。


 リオンのように牙の形をした祝福には魅了の効果があることが多いわ。

 といっても害になるようなものではないのよ。本来ならちょっといいかも程度に感じるものなの。

 ただ、我が幼馴染殿はなかなかにイケメンなので……。

 好意の相乗効果かしら?

 不本意ながらリオンは女性と一部の男性に、必要以上に好意を持たれるようになったの。


 そう、それで何故牙をアピールすることが警告になるかというと、実は、魅了状態は一定時間経過すると自然に解除されるのよ。

 しかも、祝福の魅了はレジスト可能な状態異常というのがこの世界での常識。

 魅了中の記憶が無くなるわけでもないから、正気に戻った後で牙の魅了にレジストできなかったことにショックを受けることになるわね。


 この場合、大半は抵抗力の低さを自覚して訓練に励んで姿を見せなくなるのだけれど、何故だか本気でリオンに恋していると公言するようになるひとが一定数いる。

 そう、一定数。不思議ね。




 さてと、つるはしを担いで本日の実習に取り掛かりましょうか。

 今日はラピスのダンジョンでクレイゴーレムを狩るわよ。

 このゴーレムはレンガの材料となる良質な泥をドロップするの。

 

 倒し方はいたって簡単。

 先ず、スタン効果のあるグレネードでゴーレムを気絶させる。

 転倒したところで、装備したつるはしで採掘する。

 これだけよ。

 

 注意点はゴーレムが気絶していることをしっかり確認すること。

 なにせ力が強いからね、このモンスターは。

 それから、破片が飛んだ場合に備えてフェイスシールドで保護すること。

 その他いくつかの不安全行動を防ぎつつ……。

 さあ、今日もご安全に!


 怪我の無いように注意する。

 それはダンジョンを探索するなら当たり前のこと。

 だけれども、今日は特に何事もなく終わりたい。

 これが、このパーティー最後の活動だから……。


 そう、もうすぐ卒業式があるの。

 3年生が卒業したら、当然だけれどクラウスやアルバートとはパーティーを組めなくなる。

 とはいえ、今はしんみりしている場合ではないわね。

 さあ、集中してお仕事しましょう。


 銀の片眼鏡をかけたクラウスが、グレネードを構えて壁付近のゴーレムを指さす。

 なんて物騒なピンクだろう。

「了解」

 アルフレッドがロープを構えて頷く。

 ブルーとイエローがつるはしを構えるのを確認したピンクは、徐にグレネードを投擲する。

「命中、気絶状態を確認したよ」

「引き倒します!」

 アルフレッドの投げたロープがするりとゴーレムの首に引っかかると、Wレッドが体重をかけて引き倒しにかかる。

 ぎちりとロープが不穏な音をあげる中、さしたる抵抗もなくゴーレムは転倒した。

 まあ、気絶しているものね。

 ごおんと重い振動とともに土埃が舞う。

「……。気絶状態継続を確認したよ。作業を開始しよう」

「「「「はい」」」」


 ステータス確認要員のピンクを除いた皆で、ゴーレムを取り囲む。

 先ずは機動力を奪うために膝と肘を壊すわ。

 Wレッドは肘をブルーとイエローは膝を、寄ってたかって採掘する。


 ちなみに、剣や槍を使ってもゴーレムは倒せる。

 ただ、それをやると刃こぼれしやすいの。

 だから、ここでは皆つるはしを使うわ。


 しかも、ダンジョンには相応しい道具を使うと作業効率を上げるバフがかかる階層があるの。

 この階層がまさにそれで、ラッキーアイテムはつるはしよ。つるはしを使うと力の弱い魔法職のワタシたちでもダメージがそれなりに通るのよね。


 さて、次は肩と股関節ね。

「気絶状態継続を確認したよ。作業を続けよう」

「「「「はい」」」」

 

 肘、膝、肩、股関節の四箇所を破壊したことでアイテム『泥』が追加でドロップした。

 ゴーレムは部位破壊でもアイテムがドロップするからお得ね。

 高ランクのドロップアイテムには化粧品の材料になるものがあって、高価格で買い取ってもらえるらしいのだけれど、まあ、この階層のゴーレムでは出ないわよね。

 いえ、別に期待はしていなかったわよ?


 さて、ピンクによって位置を確定されたゴーレムの核を破壊したところで、いったん休憩。

 集中力を保つために水分補給もかねて、ゴーレム一体を倒す度に小休止することが推奨されているのよ。

 ただ、学生のワタシたちには無理だけど、ベテランの冒険者の方は剣や槍の一撃でゴーレムの核を破壊することができるから、連続でゴーレムを倒すことも可能らしいわ。

 いえ、もしかしたらアルバートならできるかもしれないわね。

 まあ、部位破壊しないとその分ドロップアイテムが減るからしないけれども……。


 さあ、お昼休憩までもう少し頑張りましょうか。

 ちなみに、今日のお弁当はカツカレーよ!

 

 

 

 


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