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錬金術師のダンジョン 6

 マキナのダンジョンは錬金術師にとって宝の山である。

 裏を返せば、一般の冒険者にとってはあまり魅力的ではないとも言える。

 何しろこのダンジョンのドロップ品は全て、錬金術の素材、もしくは用途不明なモノばかりなのだ。

 しかも、レアドロップ品であっても需要がなければ値がつかないのである。

 一攫千金を夢見る冒険者にとって、このダンジョンはいい狩場とはいえない。

 故にこのダンジョンの冒険者達のほとんどは、ギルドの依頼を受けたパーティーだ。


 マキナのダンジョンに入るとすぐに、広大な鍾乳洞に圧倒されることになる。

 鍾乳石の下にはそれぞれ魔法陣が淡く光っており、落下する滴が美しい波紋を描いている。

 あの魔法陣は転送用のもので、鍾乳石から落ちた滴は錬金術ギルドへと送られているのよ。

 あの滴は魔法陣を描く特殊なインクの素材で、転送の魔法陣が完成するまでは依頼を受けた冒険者が採集していたそう。

 この鍾乳洞は緩い下り坂になっており、1階層は幻想的な鍾乳石、2階層は不思議な光沢を持つ鉱石と、透明度の高い地底湖が目を楽しませてくれる。

 そう、このダンジョンの上層階は観光名所でもあるのよ。

 鍾乳洞の通路は冒険者用と観光用の二種類が用意されており、ダンジョンに入るには管理者ギルドで発行される通行証が必要なの。

 通行証はペンダントタイプとブレスレットタイプから選べるわ。

 探索の場合はギルドへ、観光の場合はダンジョン前の案内所にて通行証をお求めください。


 さて、鍾乳洞の奥の冒険者用通路を下りきると物々しい扉が待ち構えている。

 この扉、冒険者用の通行証を所持せずに通ると、アラームが鳴るそうなの。

 アラームが鳴ると、すぐに巡回の冒険者の方々が駆けつけてくるわ。

 間違っても無くしたりしないように気をつけましょう。


 扉の先は学園や研究所の中を思わせる人工の建造物である。

 階層によって石造りだったり、木造だったり、鉄筋コンクリート造だったりする。

 通路を挟んで整然と扉がならんでおり、様々な大きさの部屋に繋がっているわ。

 ダンジョンというよりは、モンスターの出る学園といったほうがしっくりくるわね。


 出現するモンスターは主にスライム、オートマトン、本である。

 オートマトンや本はマキナのダンジョン特有のモンスターであり、特にハードカバーの巻数の多い本は用途不明のレアドロップの確率が高く、一部の錬金術師に人気があるの。

 この用途不明のレアドロップ、紙に書かれた詩のようなものなのだけれど全く意味不明なのよね。

 ただ一部のひとは、この詩は世界の秘密を記した暗号文だと本気で信じているみたいよ。


 このダンジョンで最も気をつけなければいけないのが、錬金術師達の仕掛けたトラップである。

 原則、通路にトラップを仕掛けることは禁止されている。しかし、錬金術師が最後の力を振り絞って自らの周囲にトラップを展開して、通路で寝落ちしていることが多々あるのだ。

 探索にはトラップに詳しい斥候が必要不可欠なの。

 ちなみに通路で寝落ちした錬金術師は巡回の冒険者の方が回収することになっているわ。


 ところでこの巡回の冒険者の方の仕事、けっこう大変なのよ。特にこのマキナのダンジョンではね。

 ダンジョンに異常がないか見回ったり、窮地に陥ったパーティーを救出したりする他に、通路で寝落ちした錬金術師や滞在期間を過ぎた錬金術師を回収しなければならないの。

 

 マキナではダンジョンを探索する際に、管理者ギルドで滞在期間を申請する。

 ダンジョンにある各部屋はモンスターハウスになっていて、この部屋の中で素材集めのためにモンスターを狩るのよ。

 この部屋のひとつひとつを管理者ギルドが管理していて、希望の階層と目当ての素材にあった部屋を滞在期間中無料で貸してくれるの。

 申請が受理されると、滞在期限が過ぎるとアラームが鳴るアイテムと部屋の番号が書かれた札が渡される。

 借りた部屋に着いたら札を扉の横に掛け、部屋の中にセーフゾーンを作って拠点にし、ただひたすらモンスターを狩るのと休憩するのを繰り返すのよ。

 そして滞在期限が過ぎアラームが鳴ると、巡回の冒険者が回収にやって来るというわけ。

 そう、このアラームが鳴るアイテムというのが通行証なの。

 大抵の冒険者はアラームの鳴る前に引き上げるのだけれど、何らかの理由で回収されていくひとは後を絶たないそうよ。

 

 このダンジョンでの素材集めはパーティーを組むのが基本なのだけれど、それを単独で行う錬金術師もいるわ。

 カートさんがそうね。

 自作のトラップと自分のポーチにドロップアイテムを転送する魔法陣を展開して素材を集めつつ、自分はセーフゾーンで研究をする。

 この方法でダンジョンの部屋に住み着いた錬金術師が過去にいたらしく、他の冒険者から部屋の占有について管理者ギルドへ苦情が寄せられたそうよ。

 そんなこともあって滞在期限が設けられたのね。

 もっとも一番の理由は、研究に没頭するあまり体調管理が疎かになる錬金術師を心配してのことらしいけれども。

 

 そういえば、研究塔で食事の配達サービスがあったけれど、安否確認も兼ねているのかもしれないわね、アレ……。

 

 

 



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