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始まりのダンジョン 2

 幸か不幸かワタシが無事にフィリア達のパーティーに入って数日。

 これといった問題もなく平和な学園生活を送っているわ。

 例の試合の後、ワタシに関わろうとする生徒がいないからなのだけれども。

 ワタシに話しかけてくるのはアランくらいね。

 そういえば、まだ一度もロウと話したことがないわね。何度かお昼ご飯を一緒に食べているのに。

「ロウは無口だから」

 これ、無口ってレベルかしら?

 ここの食堂、食券式だからしゃべらなくても注文出来ちゃうのよね。

 今日のお昼はチーズ入り肉団子のトマトスープと温野菜のサラダよ。ここの日替わりメニューはとっても美味しいの。

 急に食堂が騒がしくなったっと思ったら、リオンとアルフレッドが来たのね。

 あの試合のせいでふたりが避けられたりしないか心配していたのだけれど、杞憂だったわね。

 アルフレッドは戦士クラスの男子生徒達と仲良くなったみたい。

 リオンは例によって女子に囲まれているわね。そして、当たり前のように彼女達を無視してワタシの隣に座るものだから、ものすごく睨まれているわ。もちろんワタシがね。

 アルフレッドも女子の集団におびえつつ、席に着いた。

 ラピスでは男子校と女子校に分かれていたから、何かのイベントでもない限りこういった体験をすることはなかったのだけれど、なるほど、共学だとこんな感じなのね?

「違うと思う」

 アランが疲れた顔で呟いた。


「あのさ、フィリア達あれから凄い機嫌悪くてさ。人前で恥じかかされたって」

 まあ、そうでしょうね。

「いや、逆恨みだってのは分かってるよ?たださ、あいつら結構人気あってさ、ユーリ陰で凄い悪く言われてるぜ」

 まあ、そうでしょうね。

「今のとこ陰口言うぐらいだけどさ、気をつけといたほうがいいよ」

 ああ、気が重いわ。

「ええ、分かったわ。ありがとう」

 実力行使で何かするほど、彼女達がバカではない事を祈りましょう。

「ところで、ラピスの治癒師はみんなああいった戦い方をするのか?」

「いや、基本治癒師は戦わない」

「戦士科の生徒と模擬戦する治癒師科の生徒はユーリだけだから、安心していいですよ」

 ちょっとふたりとも、もう少しロウがしゃべったことに驚きなさいよ!

「へぇ、ユーリっていつもアルフレッドと模擬戦してんの?」

「いや、俺じゃなくて俺の兄貴」

「戦士見習いだから留学してこなかったんだけどな」

 戦士見習いときいてロウの表情が強張った。

「じゃあ、君らのパーティーで一番強いのって、その戦士見習い君?」

「いや、錬金術師見習いだな」

 クラウスとミケを思い出して深く頷くワタシ達を、アラン達は奇妙なものを見る目でみているわ。

 もちろん、純粋な力比べでアルバートに敵うことはないわ。

 そう、純粋な力比べならね。

 アルバートは優秀な戦士だ。彼とまともに打ち合って勝てる生徒はラピスの学園にはいないでしょう。

 だからクラウスはアルバートとまともに打ち合わない。

 彼が勝利するときはいつだって、アルバートの剣の届かないところにいる。

「ワタシだと、結局足止めしきれずに打ち合うことになって、負けちゃうのよ」

「もしかして、フィリアがその戦士見習い君と同じ強さだと思ったの?」

「ユーリって、兄貴を戦士の基準にしているところありますもんね」

「しかし、彼女は何故魔法を使うと宣言した奴に真っ直ぐ突っ込んだんだ?」

「いやだって、素手で棒立ちだったし?魔法使ってくるとか思わなかったんだろ」

 ワタシもリオンも特訓したのよ。呪文の詠唱も予備動作もなく魔法を使えるようにね。

「無抵抗に見えた治癒師にロングソードで切りかかるって……怖いですね」

 だ、大丈夫よアルフレッド。

 ワタシが本当に無抵抗だったら、手加減したはずよ。たぶん。

 







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