胡蝶の夢みたい
夢をみているのだろうか。
それとも、夢をみていたのだろうか。
私ではないワタシと、ワタシではない私。本物はどちらかしら?
『異世界に転生する話、流行っているわね』
『チートの主人公が世界を変えていくような』
チートって何よ。ワタシは17年生きてきて、人より優れたところなんて見当たらないわ。
治癒師になるのだって、消去法で進路を決めたじゃないの。
『治癒師を目指す17歳か。私それぐらいの子供いてもいい位の年なんだよね。いないけど』
『結婚生活は順調。ダーリンは優しいし、特に不満はないんだけどな』
結婚なんて、恋人さえいたことないのに!
と、とにかく今は、ダンジョンにいるんだから、学園の高等部の生徒として。
『あれ、私この子達見覚えある』
『CMでやってた、イケメンたくさん出てたから多分乙女ゲームかな?』
は?
『やたらカラフルな髪の毛に、猫耳、猫耳がいる。ファンタジーだわ』
『日本人のゲーマーには馴染み深い。これは、ゲームの世界だわ』
何を言っているの?ワタシ達の外見は、どこもおかしくなんてない。
ゲームの世界ってなに?ここは現実の世界よ。
『そうそう、声優さん豪華だねって、ダーリンと話してた』
長身で青い髪の毛、切れ長の黒い瞳の青年。17歳の魔法使いのたまご、ワタシの幼馴染のリオン。
小柄でふわふわのピンクの髪の毛に、黄金の瞳の少年。18歳の錬金術師見習い、クラウス。
大柄で真っ赤な髪の毛、深い青い瞳の青年。18歳の戦士見習いのアルバート。
ワタシよりちょっとだけ背が高くて、赤いくせ毛に、薄い青い瞳。16歳の戦士科の生徒アルフレッド。ちなみに、猫耳少年で、アルバートの弟。
そして、平均的な背格好で短い金髪に、碧色の瞳。17歳の治癒師のたまごのワタシ、ユーリ・ラピス。
『これから盛大に乙女ゲームが始まりそうね』
『ところで、どうして私ゲームの世界にいるんだろう』
『夢見てるのかな、なんかおかしいけど』
ここは、現実の世界よ。
『ありえない話だけど、私、ゲームの世界に転生したのかしら?』
『だとしたら、私死んだのかしら。ダーリンをおいて?』
『あの人、今どうしてるだろう』
ダーリンて誰よ。
何故ワタシは、その人のことを考えると、こんなに切なくなるの?
『このゲーム、クリアしたら目が覚めたりしないかな?』
『でもどうしようか、私このゲームやったことないからクリア条件がわからない』
クリアってなによ?
目が覚めたら、ワタシどうなるの?
『問題は、これが本当に乙女ゲームなのか分からないこと』
『乙女ゲームなら、誰か攻略しないといけないんだろうけど』
『嫌だな。浮気してる気分になる』
浮気はダメよ!
『私の精神衛生のため、キャラの攻略はしないことにしよう』
『他にもクリア条件はあるかもしれないし。魔王を倒すとか?』
魔王なんていない。
それと、キャラって言うのやめてちょうだい。
『分からないことだらけだ』
『このキャラ、ユーリ・ラピスだっけ?』
『とりあえずユーリとして、行動しよう』
ユーリとしてって……ワタシはずっとユーリとして生きてきたわ。
ワタシがユーリ・ラピスとして生きるのは、当たり前のことよ。
この世界はゲームの世界で、私は日本人の女性で、しかも既婚者だった。
どうかこの夢が、ワタシの妄想などではありませんように。
修正しました。