初めての決断
お空を見上げればお月様とお星様がキラキラ輝いて、みんなを照らしてくれている。
斎場という所で会ったお姉さんは、パパ達はお星様になったのだと言っていた。
あの中のどれがそうなんだろうと見ていると、そのお空を背にしているとても綺麗な天使様がまた口を開いた。
きちんとお話を聞くべく、目と耳を天使様へと向ける。
「では、改めて問います。異世界ライトエルに行き、そこで新たな生活を始めますか?」
「はい」
「わかりました。それでは、己が種族や生まれ持つ才能などを多少選ぶ事ができますが、いかがしますか? 自身が持つこの地球での財産を寄付するのなら、その額に応じてグレードアップもできますよ」
「? しゅぞく、さいのう? ざいさん……きふ? ぐれーどあっぷ?」
「おや、説明不足でしたね。これは申し訳ありません。……貴女は今、人間です。そして私は天使。それが種族です。才能とは、お絵かきが上手だったり、ご飯を美味しく作れたり、読んで楽しい絵本を作れたりする事。財産は、お金やお家などですね。それを寄付……良いことに使って下さいと渡してくれるなら、グレードアップという……そうですね、貴女の好きなマジカル少女まこちゃんが、スーパーマジカル少女まこちゃんに変身して強くなるように、凄いものに変わるのですよ」
「!! それ、すごい……!!」
「ええ、そうですね。して、いかがしますか? 寄付、しますか?」
「します」
「そうですか。何を、どれくらいしますか?」
「えっと、おかねだから……。……パパとママのほけんきん、ぜんぶ」
「わかりました。貴女方一家が住んでいたお家やお家があった場所、土地と言いますが、それも財産ですので寄付できますが、寄付しますか?」
「します」
「はい。それでは、額を計算してアップするグレード……マジカル少女まこちゃんをどれくらい凄いものにするか、という事ですが……それを決定しますので、少しお待ち下さいね」
「はい」
私が頷くと、天使様はお空を見上げてお話をやめてしまったので、一緒にお空を見上げた。
やっぱり、あのお星様のどれがパパ達なのかわからない。
仕方なく、ゆっくりとお星様を見回しながらお話する事にした。
「あのね、パパにママ、にーちゃ。パパとママとにーちゃがこのまえ、おでかけしたらそのあとねんねしたままおきなくなっちゃったでしょ? いまはおほしさまになっちゃったし、こーちゃ、さびしいよ。しんせきのおじちゃんやおばちゃんたちは、よくわかんないこといってこーちゃをこわいおかおでみたの。でもほけんがいしゃってところからきたおにいさんが、おじちゃんたちとおはなししてるときはね、やさしかったんだけど……おにいさんがかえったらまたこわいおかおになっちゃって……いったの。ほけんきんだけもらって、このこはものおきにしてるへやにおしこみましょうって」
その時は、やっぱり意味がよくわからなかったけれど……おじちゃん達のお家に来た今は、なんとなくわかった。
おじちゃん達は、保険金というパパとママのお金だけもらって、こーちゃの事は、物がいっぱい積み重なって置いてある、隅に布団だけ敷いたお部屋に閉じ込めるつもりだったのだ。
それがわかって、悲しくて寂しくて泣いていたら、この天使様が来た。
そしてこーちゃに言ったのだ。
『異世界ライトエルに行き、そこで優しい人達に囲まれた新しい生活をしませんか? その人達は貴女をきっと大切にし、楽しい毎日を送らせてくれますよ』って。
そのお顔がとても優しい笑顔だったから、だから、こーちゃは頷いた。
そして今、どうやって来たのかはわからないけど、お月様とお星様がいっぱい輝く広い野原に、天使様といる。
「ねぇ、パパ、ママ、にーちゃ。こーちゃね、あのおへやにいたくなかったの。おじちゃんたちにパパとママのおかねあげたくないっておもったの。だから、これで、い~い……?」
そう聞いてみたけれど、どのお星様も、お返事してはくれなかった。