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我は神の子  作者: 横山
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6

 姿を見せないことを約束して、再び下に降りてみた。今度は山鳥のはちやと蛙のふたきが一緒だ。

 子供達の太鼓が響く中、集会所では昔語りが始まるところだった。

「昔々、辺りの村を治めるでっかいお屋敷がありました」

 中学生の子が年下の子にせがまれてこの神社の縁起が書かれた絵本を読み聴かせている。

「辺りって、一石村?」

 内一人が声を上げる。ここの縁起でこの神社に一番近いのは一石なので、そう考えてもおかしくは無いが、

「いやいや、この辺りにはまだ村がなかった頃だよ。でも、一石と二滝と三ツ野と五木と八谷、全部合わせたよりも広い所を治めていたんだって」

「うわぁ、凄いね!」

「そんなに大きい家だったのに今は無いの?」

「その辺は後で分かるから聴いてね。で、その家には娘が一人だけおりまして、いつの頃やら夜中になると一人の男が通って来ると噂になりました」

 一枚めくった先には月の出た夜の縁側、着物を着た男女が描かれている。

「それを聞いた父親は、相手が高い身分であるだろうと思い、娘に男の事を聞くように命じます。初めは渋った男ですが、ついには娘にこう言いました『明日の朝、この衣をそっと持ち上げなさい、ただし、決して驚いてはいけないよ』そして、次の日の朝……」

 何人かは食い入るように絵本を見つめ、何人かは笑いをこらえている。この先を知っているのだろう。

「娘が衣を持ち上げると、そこから大きな白い蛇が這い出てきました!」

 人程の長さがあろう蛇が書かれているのを見て一番前の女児が小さな声をあげた。

「そう、娘もそんな風に悲鳴をあげて、衣を振って蛇を叩きました。すると蛇は悲しそうな声で言いました。『約束を違えたな』そして、そのまま姿を消しました。蛇は山神の化身だったのです」

「でもさ、そんな大っきい蛇だったらだれでもビビるよ」

「うん、蛇だって言ってくれれば良かったのに」

 子等の言うことももっともだ。なぜ初めから正体を明かさなかったのだろうか?戻ったら尋ねてみよう。

「娘のお腹には男の子供が宿っていました。十月十日の後、生まれてきた子供の全身には鱗がびっしりと、それを見た父親は怖がって、娘と赤ん坊を山のふもとに建てた家に追い出しました」

 小さな家に娘と子供、そして男の姿。

「何時しか家には一人の男も住むようになり、三人で暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

 ぱたりと本は閉じられて、一斉に不満の声が上がった。

「まだ半分しか読んで無いじゃん!」

「続きは〜!?」

 しかし、丁度上から手伝いを求める声がかかり、中学生は本を置いて離れてしまった。

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