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我は神の子  作者: 横山
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 困った。手を引かれ歩く。母の元にまで連れて行ってくれるつもりらしいが、母は本殿奥の神域に居るので祭りの準備している所を抜ける事になる。この女児が怒られてしまったらどうしようか。

「わたし三ツ野村のあかね。ボクの名前は?」

「ええっと……」

 答えられないでいると、あかねは困ったような顔で笑った。

「しょうがないか、まだ小さいんだもんね?」

「むぅ、小さくなんかない!」

「はいはい」

 しばらく互いに何も言わずに歩いた。

「わたしね、君くらいの弟がいるんだ。将太って言うんだよ」

「しょうた?」

「うん、将くんって呼んでるの」

「祭りには来ておらぬのか?」

 それらしいのは見当たらなかったので尋ねると、あかねは頷いた。

「うん、今は病院にいるの」

 せっかくの祭りなのに来れないとは可哀想なことだ。

「次は来れるといいな」

「……うん、本当にね」

 驚いた事に、それから少し進んだところに母が立っていた。

母様(ははさま)!?」

「え、お母さん?」

 母に駆け寄り手を伸ばす。

「連れて来てくれてありがとう」

 坊を抱き上げた母はあかねへ礼を述べた。

「いえ、どういたしまして」

「少し待て」

 頭を下げ、下に戻ろうとするあかねを呼び止める。

 地に降ろしてもらい何か無いかと辺りを見回すと、丁度石英の欠片が落ちているのを見つけた。拾ってあかねの手に押し付けた。

「別に坊だけでも戻れたがな、ここまで連れて来てもらったからな。弟への土産じゃ、次の祭りは一緒に来い」


 あかねと別れた後、母と鳥居をくぐった。

 やはり拝殿では準備が進んでおり、母が来てくれなければあかねが怒られてしまうところだった。

 忙しなく動く氏子達の横を通って本殿へ、境内には村々の神使が集まっていた。

 石の上には蜥蜴、小さな滝の側には蛙、草地には兎、木に止まっているのは啄木鳥、山鳥の居場所は三年前に坊が落ちてから浅くなってしまったので川の淵にちょんと座っている。

「みつの、みつの」

 声をかけると兎のみつのが寄って来た。

「若様、どうされました?」

「お前の村のあかねがな、今さっき坊を山の途中まで送ってくれたのじゃ」

 みつのは嬉しそうに鼻をひくひくと動かした。

「それは良かったですね。あかねというと、最近戻ってきた伊藤の次男ですな」

 最近ここに来たのか。道理で余り馴染んでいないようだった。

「いっせき、一石村の子等は太鼓が上手いな」

「ありがとうございます。皆、夏頃から練習しておりました」

 蜥蜴のいっせきが石の上でひょこりと頭を下げた。

「八谷の子とはだるまさんがころんだをやったぞ。今は初めの一歩がとっておけるんじゃな!?」

「町の子等を呼んだ時に教わったそうで」

 山鳥のはちやは飛び上がり、坊の肩まで羽ばたいた。艶のある羽を撫でてやる。

「うちはどうでした?」

 啄木鳥のいつきが聞いてきた。五木村か、

「若衆がな、坊が供え物を食べたのを見てカラスが取ったのだと言っておった」

「ふむ、今度祟っておきましょう」

「止めんか」

 おぉ、蛙のふたきが華麗に跳ねていつきを蹴り落とした。

「相変わらずふたきは凄いな」

「いえ、いえ、此方は蛙ですので、跳ねるしか芸が無いのですよ」

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