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超超弩級戦艦紀伊外伝~狼の涙~  作者: 生まれも育ちも痛い橋
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単冠

戦闘シーンは勝手に筆が進むのに、そうじゃないととことん遅筆。

なんとかしたいです・・・

1942年 11月24日


寒空続く単冠湾には多くの軍艦が集っていた。

船体に施された灰色の塗装は、その景色を一層寒々としたものにしていた。

「すげぇ…」

中谷は感嘆の声を漏らしていた。

数年前までは世界最大空母の一隻であり日本が誇る空母「赤城」「加賀」

去年就役したばかりの新鋭空母「翔鶴」「瑞鶴」

その他にも見たこともない艦もいた。

しかし、なによりも、今自分の目の前には、大型の戦艦が二隻、鎮座していた。

日本軍が誇る新鋭戦艦「大和」「武蔵」である。

今まで中谷は柱島に投錨している「大和」の姿は何度か見たことがあった。

しかし、いずれも遠くからであったし、何よりも二隻の大和型戦艦が揃って、しかもかなりの至近距離で見るのは初めてであった。

それを中谷は自分の担当の砲である一番高角砲から眺めていた。

「坊主、こんな寒い中どうした」

後ろをふりかえると、この艦では上司であり先輩にあたる砲台長兼射手の藤田武上等兵曹がいた。

「坊主はやめて下さい」

「はははっ、生言ってんじゃないぞ」

藤田は時に厳しく時に優しく、中谷に対して良き兄の様な存在であった。

しかし、まだまだ未熟な中谷の事を名前で呼ぶことはほとんど無かった。

「今はこの「大和」と「武蔵」を眺めていました」

中谷は目の前の「大和」を見上げながら言った。

「こんな寒い中よく外にいられるな」

本田が身震いしながら言う。

「これからは毎日間近で眺めることになるんだ、それこそ飽きる程にな。風邪をひいてもしょうがないから中へ入れ」

本田に促されそれもそうかと思い、中谷は名残惜しく思いながらも本田と共に艦内へ入っていった。


その頃、三人の男たちが「大和」のある一室に居た。

「ハワイか・・・」

第六戦隊司令官五藤存知は憂鬱な面持ちでいた。

「我々はみすみす死ね、ということかな?」

角田司令官がつぶやく。

「こんな指示に馬鹿正直に従うというのですか!」

第七駆逐隊司令の小西要人は憤慨する。

それは何故か?

それは三人の目の前にはある命令書が原因であった。

その中身は要約すると、「機動部隊の空襲の後、港湾に突撃し残存する艦艇と施設を破壊せよ」との事だった。

「これがどういうことか、奇襲を受けて警戒を厳重にしていると思われる敵の太平洋艦隊の根拠地にむざむざ突っ込むということです!更に我々に与えられた戦力は完成したばかりの戦艦「大和」「武蔵」、あとは駆逐艦四隻に旧式重巡洋艦四隻です。たったこれだけの戦力での突撃は全滅必死です!」

小西が捲し立てる。

「まあ待ちたまえ、我々が突撃する前に南雲艦隊が空襲をする。その成果次第では我々が生還する機会があるのではないかね?」

角田がなだめるように言う。

「しかし、航空機の効果がどれほどか分かりません。最悪敵戦艦が撃破されずに多数残ったり、強力な沿岸砲がある。いくらなんでも無茶が過ぎると思います」

五藤が反論する。

「もっともだが、イギリスはタラント港空襲でたった数機の攻撃機で戦艦三隻を大破着底させている。今回は他にも攻撃目標があるとはいえ全部で三百機以上もの航空機を投入させる。思ったよりは成功率、生還率は低くは無いと思うぞ?それに上からの直々の命令書だ、逆らうわけにはいくまい。それに確かにこの突撃はうまく行けばこの戦争の命運を左右するやもしれん。命令された以上我々は軍人として全力を出すべきではないかね?」

角田の言葉に、他の二人は頷く他なかった。

「それじゃあ、この事を各艦長や士官に伝えてくれ。どこまで話すかは君たちに任せる」

それを最後に三人は解散し、角田を除いた二人は自分の乗艦する艦に戻っていった。

二人を見送り、角田は自分の部屋でようやく息をつく。

結局二人には、山本長官の真意を伝える事はしなかった。

彼は事前に山本に呼び出され、その作戦の真意を伝えられた。

要は、死んでこの先の戦いを優位に運べるようにしてこいというものだ。

自分が選ばれたのは恐らく自分が砲術の専門家であり、勇猛果敢であるとが知られており敵前逃亡をせず最大限の戦果を挙げることが出来ると見込まれたのであろう。

断っても良いと言われたが断らなかった。

逆に、山本の思惑をへし折ってやろうと息巻いていた。

「頼むぞ「大和」よ」

角田は小さく、自分の乗艦する艦に対して呟く。

今はこの新鋭戦艦だけが頼りであった。

次回は真珠湾での青葉の活躍です。

お楽しみに

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