図書室
あれから、何日か経った。
私は本好きなので、よく図書室から本を借りている。
そして今日はその借りた本の返却日なのだ。
わざわざ朝早くに登校し、図書室へ向かう。
「失礼します」
中は誰もいないようで、しーんとしている。
いつもいるはずの司書さんも今は席を外しているようだ。
これでは本を返せない。
どうせなら来るまで本の続きを読もうと置いてある本棚に向かう。
私は2巻まで読んだから、次は3巻を借りる。
えっと…、3巻は…。
あ、あった。
異世界召喚ものでとても面白いからずっと続きが気になっていた。
早速、手にとって読み進める。
「…ぇ、ねぇ」
「…」
「おーい、聞こえてる?」
「…うわっ、」
いきなり肩を叩かれる。
え、誰かいたのか。
振り返ってその人を見てみると、男子生徒だった。
柔らかい茶色の髪に同色の瞳を持つ、綺麗で中世的な印象を与える人だ。
「もー、ずっと呼んでたのにー」
「…はぁ、そうですか」
人が楽しく本を読んでいるのに、邪魔をするからだ。
今、ちょうど戦闘シーンだから先が読みたいのに。
「それ、面白い?」
「はい、面白いです」
「へぇ…」
何がしたいんだ、この人は。
どこか行ってくれれば、私も本の続きが読めるのに…!
「僕も読んでみようかな」
そう言って、その人は1巻を手に取ると、私の腕を掴んだ。
「こっちに椅子あるよ」
私はずっと立って読んでいたから、椅子で座って読めるのはうれしい。
素直にその人についていくと古い歴史の本がある棚へ行く。
確か、そっち側には何もなかったはず…。
その人は疑問を浮かべる私に、まぁ見ててと返すと一番下の背表紙に文字がない本を一定のリズムで叩く。
すると、微かにカチリと音がして本棚が横にスライドした。
「!?」
「面白いでしょ」
この学校にこんな仕掛けが…?
驚いて声も出ない私をその人はそのまま腕を掴んで中へ入れる。
私の後ろで隠し扉がゆっくりと閉まっていった。