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招集

 少女には不思議な力があった。


 何事にも恐れない力。何事にも立ち向かう力。全てを切り開く力。


 人はその少女を勇者と呼び、信頼と尊敬の眼差しで見つめる。その裏側には自分たちに備わっていない力を持つ少女に対する恐怖の念が遺伝子レベルで染みついていた。


 少女の他にも不思議な力を持つものは各地に居た。


 一人は火、水、風、雷、氷、土、光、闇を自在に操る魔法と呼ばれる不思議な力を持つ少女。


 一人は、どんな病も一瞬で消し去ることのできる高速治癒と呼ばれる不思議な力を持つ少女。


 一人は望めば望むほど技と言う形で身に付く格闘術と呼ばれる不思議な力を持つ男。


 そんな不思議な力を持つ四人の者たちが、その日とある国の城内にある王室に客人として招かれた。




「遠いところ呼び出して申し訳ない。君たちにある役目を担ってもらいたく、この場に読んだのだ」


 王室の玉座に堂々として座るその国を統治する国王は集めた四人にそう告げた。四人はそれぞれ、勇者、魔法使い、僧侶、格闘家と呼ばれ人々から信頼と尊敬そして恐怖の対象として見られていた。


「君たちには不思議な力が宿っていると聞く。中でも勇者レイド・ユウ。君は代々勇者の家系だそうじゃないか」


「はい」


 ユウと呼ばれたその少女は俯きながらもそう答えた。


「失礼ながら、国王陛下。わたしたちが担う役目と言うのは?」


「そう焦るでない勇者レイド・ユウ。君たちに担ってもらう役目と言うのは魔物の討伐だ」


「魔物、ですか?」


 魔法使いの少女の問いに国王は大きく頷いた。


「魔物、の存在については知っているであろうが地域によっては異なる解釈をしていると聞く。念のため説明しておくと、魔物はこの国から西に十数キロ進んだ先にある魔界に潜む生物だ。奴らは時折人間界にやって来ると小さな村や里を襲い人間の血肉を食べ成長する。そこで我が国では定期的に君たちの様な不思議な力を持つ者を集め魔物を討伐しに向かわせている。これについては両親が勇者とその仲間であったレイド・ユウがよく知っているだろう」


「はい、知っています」


 ユウはそう言ったが、あまり乗り気ではなかった。その理由と言うのが、


「レイド・ユウ、君の両親は魔界に向かう最中魔物の手によって倒されてしまったのであったな。辛い事を思い出させてしまうようで私としても君を今回の役目に任命するのはいささか気が引けたが、勇者の力は必要不可欠だ。やってくれるね?」


 国王はユウに断っても仕方がないと感じさせる優しさの溢れた声でそう告げたが、王室の壁際に並ぶ兵隊からは断ることを罪とする威圧が感じ取れた。その威圧を若干ながらも感じ取ったのだろうユウは小さく頷いた。


「君たちはどうするかね?」


 国王の問いに二つ返事で答えたのはユウの幼い頃の友人で魔法使いの少女ナルミ・マホだった。


「ユウちゃん、勇者レイド・ユウがその役目を担うというのなら私もお供する覚悟を持っています」


 続いて、僧侶の少女キサキ・リョウも答えた。


「お二方の力になるか判りかねますが、私もお供させて頂きたく思います」


「君は、どうするのかね?」


 最後に格闘家の男が答えた。


「魔物討伐の任務を少女に任せ逃げ出すなど断じてなりません。私もお供させて頂きます」


「では、例のモノを持って来てくれ」


 国王がそう言うと、四人の目の前には呼び名にふさわしい衣とそれに見合った武器が運ばれた。中でもユウの目の前に運ばれてきた剣は純白の輝きを放っていた。


「それは、歴代勇者が魔物討伐の際に使って来た勇者のみが持つことを許された剣。その名を『聖なる剣』という」


「これが、伝説の」


 両親の話だけでしかその剣の名を聞いた事が無かったユウだけでなくマホやリョウ、格闘家までもがその剣の輝きに魅了された。


「今日はこの城に来るまでの道のりで疲労しているだろう? 客間とささやかな料理を用意した。今日はゆっくりと身体を休め、明日からの旅に備えてもらいたい」


「明日、ですか?」


 家族を失い、一人で生活をしているユウ以外の三人は突然の知らせに驚いた。


「魔物は今こうしている間も村や里を襲っているかもしれない。仕方のない事だ」


 そう言われてしまうと反論のしようがなく。三人は抱いた感情をどこにぶつけることも出来ないまま王室を出た。


「レイド・ユウ様、客間までご案内いたします。どうぞこちらへ」


「失礼します」


 ユウも三人に続き、王室を出て客間へ向かった。


 王室の扉が閉まると、一人の兵士が国王の前に歩み寄った。


「国王陛下、良いのですか?」


「何の話だ?」


 国王は兵士の告げることが何を指しているのか分かりながらもとぼけたようにそう訊き返した。


「魔物の事にございます。現在、王国周辺の村や里を襲っているのは我が国が開発に失敗し野に放した合成獣にございます」


「だから、それがどうしたというのだ? 勇者というシステムは古くから我々世を統べる者たちの失敗を隠ぺいするための駒に過ぎなかったはずだろう? 今回もそれは変わらぬ」


「それにしても国王陛下、貴方は本当に意地の悪いお方にございますね。まさか、ご自分で殺すよう命じたレイド夫婦の娘を勇者として抜擢なさるとは」


「そうか? 普通の事だろう」


 国王は玉座から立ち上がると黒い天使の絵画に彩られた天井を仰ぎ大きく笑った。国王の玉座には漆黒の羽が舞広がっていたが、兵隊は誰一人として不思議がってはいなかった。


この物語から私を知ってくださった方は初めまして。前作『優等生は劣等生』や『このヒーローになるフィクションではありません』をご覧になった方はお久しぶりです。

東堂燈と申します。

この物語ですが『優等生は劣等生』の前日談と言ってはいますが、『優等生は劣等生』を読んでいなくても大丈夫です。なんと言っても前日談ですからこっちから前作には続きますが前作からこっちには続いていません。


前作からの読書はご存知かもしれませんが、私は戦闘描写がとても苦手です。その為、戦闘描写が多そうなこの物語では読みにくい文章を書くことが多々あると思いますが、どうかお許しください。改善していこうと思います。


初回という事で後書きが長くなってしまいましたが、これからよろしくお願いします。


東堂燈

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