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おねえちゃん と わたし

 わたしは、おねえちゃんのいもうとです。


 ふたりきょうだいだから、

 おねえちゃんは、わたしのただひとりのおねえちゃんで、

 わたしは、おねえちゃんのただひとりのいもうとです。



 わたしとおねえちゃんは、とてもなかよしで、

 いつも、いっしょにあそびます。


 ときどき、けんかをして、ぎゃあぎゃあ、たたきあっていると、

 おとうさんがでてきて、


「けんかするな!」


 と、ものすごくおこるので、ふたりとも、ないてしまいます。


「ふたりしかおらんきょうだいやねんから、けんかしたらあかん。ええか。」


 と、おとうさんがいって、おねえちゃんとわたしは、


「うん。」「うん。」


 といいます。


 それから、また、いっしょにあそびます。



 おねえちゃんは、とても『そうぞうりょく』がはたらきます。


 おねえちゃんは、『そうぞうりょく』で、ただのおもちゃのブロックを、

 もりや、おしろや、はたけや、きょうりゅうや、

 ふねや、せんすいかんや、せんしゃにかえてしまいます。


 それだけではありません。


 いえの2かいの、わたしたちのへやにある、なにもかもぜんぶが、

 おねえちゃんの『そうぞうりょく』で、

 いろんなものにへんしんしてしまうのです。


「見ろ、モコ隊員。

 あんなところに、ものすごく高いがけがあるぞ。」


 おねえちゃんが、ラップのしんでつくったぼうえんきょうをのぞきながら、

 たなをゆびさしています。


「あ、みえました。」


 わたしも、ラップのしんをのぞきながら、いいます。


「たくさん、はながさいていますよ。」


 たなのうえに、まどがあって、

 ピンクのはなもようのカーテンがかかっているのです。


「うむ。あれは、どんな病気でも治せる、貴重な魔法の花にちがいない。」


「じゃあ、とりにいきましょう。」


 わたしがすっかりうれしくなっていうと、

 おねえちゃんは、おもおもしくうなずきます。


「うむ。だが、ふたりだけではだめだぞ。

 危険な探検に行くときは、優秀な仲間を集めなくては。」


「では、たんけんきちのみんなをよびましょう。」


「うむ。それがいいだろう。」


 ――どんなだいぼうけんでも、いつも、こうしてはじまるのです。




 たんけんきちは、

 おねえちゃんがいうには「大海原のまっただなか」にそびえる、

 さびないてつと、くずれないレンガでできた、

 ものすごくがんじょうなたてものです。


 どれくらい、がんじょうかというと、

 きょだいなワニクジラが10とうで、

 100かいたいあたりをしても、こわれないくらいです。



 わたしは、おきにいりの、

 あおいふくをきたおとこのこのにんぎょうを、

 かべのうえの、みはりだいにたたせます。


 うちよせる、なみのしぶきをあびながら、

 すいへいせんをみはっています。


 ――あっ、たいちょうが、なかにわにでてきました。


「すた、すた、すた。」


 と、おねえちゃんがいって、てにもっている、

 きいろとくろのふくをきた、おとこのにんぎょうをうごかします。


 おねえちゃんがうごかすと、どのにんぎょうも、

 ほんもののにんげんみたいに、

 あるいたり、しゃべったり、かんがえたりしはじめます。


 たいちょうも、じつにたいちょうらしく、どうどうとあるいてきます。


 たちどまると、なかにわをぐるっとみまわして、


「あと、来ていないのは、誰と誰か。」


 といいました。


「はあい。ぼく、いま、きました。」


 あおいふくのおとこのこが、みはりだいからとびおります。


「うむ。よし、おひめさまと、かいじゅうくんもいるな。」


 おひめさまは、みずいろのドレスをきた、

 きんいろのかみのおんなのひとです。


 びじんだし、きちでいちばん、うんてんがじょうずです。


 かいじゅうくんは、ふわふわしたピンクいろのかいじゅうで、

 ゴーッとひをはきます。


 いちど、かいじゅうくんがはいたひのせいで、

 たいちょうのあたまが、はげてしまったこともあります。


「あれっ。」


 ぼくは、おもわず、あたりをみまわしました。


「おばあさんは? たいちょう、おばあさんがいません。」


「おや、本当だ。だれか、おばあさんを見なかったか。」


「おばあさんなら、ひとりでボートに乗って、釣りに行きましたよ。」


 おひめさまが、おっとりとそうこたえると、たいちょうは、めをむきました。


「何だって! 今は、オオグライウオの産卵シーズンだぞ!」


「さんらんシーズンってなんですか、たいちょう。」


「卵を産む季節だということだ!

 オオグライウオは、卵を産む前に、大量のえさを食べて、体に栄養をたくわえるんだ。

 うかうかしていると、おばあさんが丸呑みにされてしまうぞ!」


「ええっ! じゃあ、すぐにたすけにいかないと!」


「もちろん、今すぐに、救出部隊を出す! みんな、急げ!」



 たいへんなことになりました。


 がけのたんけんのはずが、

 いきなり、おばあさんのきゅうしゅつさくせんになってしまったのです!

 


 ぼくらは、つぎつぎと「せんとうようボート」にのりこみました。


 たいちょうとぼくが1ごうボート、

 おひめさまとかいじゅうくんが2ごうボートです。


 ボートのエンジンがうなって、

 ぼくらはたちまち、あらいなみのうえを、つきすすみはじめました。


「何か、見えるか!」


「なにも、みえませーん!」


 ボートをそうじゅうしているたいちょうのかわりに、

 ぼくは、ぼうえんきょうであたりをくまなくみまわします。


「……あっ、あっ、いました!」


 とおくはなれた、なみのあいだに、

 おばあさんのすがたがみつかりました!


 あの、あおいジャンパースカート、まちがいありません。


 でも、いったい、なにをしているのでしょう?


 おばあさんは、ボートにのっていませんでした。

 

 なぜか、おきにいりの、きいろいひがさをひっくりかえして、

 それにのっています。


 しかも、つえを、なにもないくうちゅうにむかって、

 ぶんぶんふりまわしているのです。


「大変だ。」


 きゅうに、かいじゅうくんが、おおきなこえをだしました。


「おばあさんに、オオグライウオがちかづいているぞ!」


 ほんとうです!


 なんと、ひがさにのっているおばあさんの、すぐそばまで、

 きょだいな、くろいヒレがちかづいていました。


 おばあさんは、そのヒレにむかって、

 つえをふりあげて、いかくしているのです。


「まあ、大変! どうしましょう!」


「たいちょう、このままじゃ、おばあさんがたべられちゃう!」


 おひめさまとぼくは、おおあわてでさけびました。


 でも、たいちょうは、おちついていました。


「全員、聞け! 戦闘態勢だ。

 2号ボートは、オオグライウオのまわりをぐるぐる回って注意をひきつけろ。

 そのすきに、おれたちが1号ボートで突っ込み、おばあさんをかっさらう!」


「了解しました! ブースター、点火!」


 おひめさまがこたえて、

 せんとうようボートのスピードがいっきにあがる

「ブースター」のスイッチをいれました。


 そのしゅんかん、2ごうボートは、

 ロケットみたいなほのおをふいて、もうスピードでとびだしました!


 おひめさまは、レーサーみたいなうんてんのうでまえで、

 いまにもおばあさんをまるのみにしようとしていたオオグライウオのまわりを、ぐるぐるまわります。


 オオグライウオはおこって、2ごうボートをのみこもうとしますが、

 ボートがものすごくはやいので、

 ガチンとかんだときには、もうボートはとおりすぎています。


 しかも、かいじゅうくんが、ゴーッとひをはいて、めをくらませるので、

 オオグライウオは、そのばからうごけなくなっています。


 いまが、チャンスです!


「行くぞ!

 おれは、ボートの操縦で手がはなせないから、おまえが手を伸ばして、すれちがいざまに、おばあさんを引っ張り上げるんだ。

 一瞬のチャンスをのがすな!」


「はいっ!」


 たいちょうがブースターのスイッチをおすしゅんかん、

 ぼくは、ボートのへりをぐっとにぎりしめました。


 ゴウッ! と、ものすごいかぜがふきました!


 ぼくたちのボートが、もうスピードではしりだしたせいです。


 おばあさんのすがたが、あっというまにちかづきます。


 ぼくは、みをのりだして、おもいっきりてをのばしました。


 ばっと、しぶきがめにはいって、なにもみえません!


 でも、そのしゅんかん、ぼくのゆびさきに、なにかがひっかかりました。


 ぼくは、つかんだものを、ちからいっぱいボートにひっぱりこみました。


 そのなにかは、ボートのかんぱんにひっくりかえって、


「あいたたたたた、腰が!」


 と、さけびました。


 おばあさんです!


「やったあ! たいちょう、きゅうしゅつせいこうです!」


「うむ。よくやったぞ! ……おお、あれを見ろ!」


 たいちょうが、えがおになってさけびました。


 ふりむくと、2ごうボートのうえで、

 おひめさまとかいじゅうくんが、てをふっています。


 そして、そのそばには、なんと、

 おかくらいあるおなかをみせて、

 オオグライウオがあおむけにうかんでいました。


 どうやら、2ごうボートがあんまりはげしくまわりをまわったので、

 めがまわって、きもちわるくなって、きぜつしてしまったようです。


「よし、作戦は大成功だ! 大丈夫ですか、おばあさん?」


「ぜんぜん、大丈夫じゃないわよ。

 わたしのボートは、あの魚に体当たりされて沈没しちゃったし、お気に入りの日傘も沈んじゃったわ。

 まったく、今日は、ついてないわねえ。」


 せっかくたすかったのに、おばあさんは、ぷりぷりおこっています。


 こういうせいかくのおばあさんなのです。


「よし。ともかく、これで全員がそろったぞ。

 いざ、魔法の花を取りに行く冒険に――」




『――キコ、モコ! ちょっと、ごはん運ぶの、てつだって!』




「……はあ? 今ぁ? せっかく、ええところやのに!」


 おねえちゃんが、ぶつぶついって、にんぎょうをおきます。


「しゃあないな、モコ。続きは、ごはん食べてからにしよか。」


「うん。……なあ、おねえちゃん。

 きょうは、きちのばんごはんは、オオグライウオのやきざかな?」


「あっ、それ、ええな!

 こうやって、ロープをかけて、基地に引っ張って帰れば、みんなで――」




『――ごはん冷めるで! はやくして!』




「はいはい、分かってるよ!」


「わかってるよ!」


 おねえちゃんとわたしは、おなじかおでくちをとがらせて、

 おねえちゃん、わたしのじゅんに、

 ぱたぱたとかいだんをおりていきました。



               【終】

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