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ぐだぐだな昼間

いつもよりも遅く出勤する羽目になってしまった。いつもは通勤ラッシュに巻き込まれないように早めにいくのだが、朝のことがあり、寝癖を直した髪も無惨な結果になっているし、通勤用の靴もつま先を踏まれまくって、薄く泥がついている。

あのスマホは居間のちゃぶ台の上に置いたままにしている。結局ロックは解除不可能だった。当たり前か。


出勤すると、席の半分は埋まっていた。ちらりと視線を向けると、私の天敵の潔癖眼鏡も来ているようだった。潔癖眼鏡の説明をしよう。潔癖眼鏡とは、私の上司であり、不備のある書類を奴に提出してしまうと、姑の嫁いびりのごとく、メンタルをへし折ろうとしてくる、ノンフレームの眼鏡をかけたピリピリ野郎の渾名である。彼奴の嫌味はレパートリーが広く、普段の業務態度から重箱の隅をつつくような些細なことまでに及ぶ。

柔らかそうな髪を撫で付け、細長なキリリとした目は隙を見せないように鋭い。白のシャツはしっかりと糊がかけられ、更に潔癖さを醸し出す。友人によるとスーツは何処かの高級ブランドのものらしい。

こんな潔癖そうな奴なのに、他の部署の女の子達には人気らしい。彼奴の嫌味を一度でも聞くとそんな考えも浮かばなくなるが、知らぬが仏と言っておく。

そんなことを考えていると、潔癖眼鏡の目に止まってしまったようだ。


「おはようございます。」一応部下なので先に挨拶をする。

「あぁ。」

てめぇは挨拶一つもまともにできないのか。などと脳内で罵詈雑言を並べる。

「…安藤、昼までにこれらをまとめて、表にしておけ。」そういって渡された書類は数センチの厚さを持っていた。脳内の罵詈雑言レパートリーが尽きたので、二週目に入る。

返事を返して、急ピッチで作業に入る。私の会社は、ホワイトな会社として有名だったが、この部署だけは違ったらしい。間違いなくあの潔癖眼鏡が原因だ。仕事量は普通だが、一定のクオリティを求められる。嫌味も、言っていることは正論だから言い返せない。私が朝、ベッドで叫ぶ文句はほとんどが奴に関することだ。


必死に作業したためか、昼までには終わらすことができた。昼からは、会長と行動する予定だったはずだ。会長とは、会社の1番トップのことを通常は指すが、ここでは、会社の創始者であり、現在、コンサルタントとして雇っているおじいちゃんのことを会長と呼んでいる。正式な場では言わないが。本人の了解も得ていたりする。会長は私の唯一の癒しだ。潔癖眼鏡のせいで荒んだ心をほっこりとさせてくれる。


そろそろ会長のところに行こうか。

立ち上がり、潔癖眼鏡にそのことを伝える。

「わかったが、朝の書類に不備があった。帰ったら至急再提出しろ。」

お前の眼鏡にいつか指紋のあとをつけてやるからな。覚えてろよ。

主人公…安藤佐理

潔癖眼鏡…竹中政行

会長…西村滋

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