プロローグ
初めて書いたので色々作法が間違っているかもしれませんが楽しんでいただけると幸いです。
演劇などでよく木や石などの役をやらされる子がいるが、人数が余るからと言って無理に出さなくて良いだろ、といつも思う。
生徒の親御さんに配慮しているのだろうが確実に逆効果だ。
裏方でも何でもやる事はいくらでもあるではないか。
俺に選択の余地はない。
「今度ボランティアで子供達に見せる演劇、高雄君にぴったりの役があるんだよ!」
配役 剣崎 高雄
魔物が封じ込められた巨石
デカデカと赤ペンで花マル確定してある演劇の台本を渡される。
セリフもないのに台本なんていらねーよ
生まれ持った体質は幼、少、中、高、そして社会人になってからも俺を縛り続けていた。
いつもいつもいつもいつも演劇部に目をつけられては岩だの草だのの役をお願いされ、断ってもしつこく食い下がられる。岩の才能があるだの草花の息づかいを感じるだの…、草系男子か俺は!断るのも面倒なので中学の頃からは諦めて了承している。
まぁ喋らずに突っ立ってるだけだしな
いいっすよ別に
そして当日
ちびっ子どもがワイワイいいながら演劇を楽しんでいる最中、さっきまで晴れていた空が急に荒れ出す
ここは会社の屋上、当然屋根などはない
吹き荒れる風と雨の中、子供達を避難させようと誘導を行っていると
「助けてー!」
演劇そっちのけで遊んでいたのか、子供が柵の外で叫び声をあげている。
舌打ちをして柵まで走り、子供に手を伸ばすが…届かない
離れていく…
俺が地面から
演劇の際つけっぱなしだった巨石のハリボテが風に煽られビルの外にぶっ飛ばされる。
ビルは15階、下は車の行き交う交差点
あ、こりゃ死んだわ
まさか最後までこいつが原因とはね…
来世ではこんな事ないようにして下さいよ。神様
「ごめんくださーい」
からん、とドアベルを鳴らし少女が店内に入ってくる。
白いマントに白銀の軽鎧、眉上で揃えた前髪を揺らしながら燦然とした面持ちで店内を物色していく
汚く狭い店内には様々な武器が大量にかつ整理して並べられ、店主の性格が見て取れる。
少女はこの店が気に入ったのか、大きな目をキラキラ輝かせつつ隅々まで見て回り…ふとボロ武器を突っ込んだ箱の前で目を止める
黒く、鈍い光を放つ柄に七つの紅玉
蝙蝠の羽を模った鍔
異様な気配を放つその剣を少女は引き抜く
「おっそいつに目をつけたかお嬢ちゃん。そいつはウチで一番の業物だぜ?」
「魔剣、ですよね、これ」
ぎくっとした店主に少女は続ける
「実は良い剣が欲しくて…でもお金はあまり持ってなんですよね…二万ベルルしか…」
「おいおいお嬢ちゃん、魔剣と知ってて値切ろうってのかい?定価六万ベルルだぜ?」
「魔剣ティケオウ、その昔多くの剣士がこいつを求め殺し合ったと言われる曰く付き、人を惑わし殺す魔剣だ」
「そんな危ない物を売るつもりだったんですか?教会の人間としてはそういうのは見過ごせませんね…」
ぎくぎくっ
「痛いところをついてきやがったな」と言った顔の店主。どう見ても自爆です本当にありがとうございました
「どうでしょう、一万五千ベルルで譲っていただけませんか?私も上に報告するの気が引けますし…」
「さっきより安…ちっ、わかったよ。もってけ泥棒!ちくしょう!」
「わ、やったぁ!ありがとうございます!」
「…」
「しかしお嬢ちゃん、実際のところこいつはかなり強力な魔剣だぜ?意志のある剣ってのか?今にも語りかけてきそうじゃねぇか…」
「えぇ…魔剣ティケオウ、強力な邪気を感じます。しっかり浄化しないと…!」
魔剣だの邪気だのティケオウだの
好き放題言ってくれちゃって
ここはガツンと言ってやらないとな
「俺の名は高雄だちくしょう!」
そう、異世界転生というミラクルを起こしてなお俺は無機物の役をやらされることになったのである。