空っぽな悪魔
とてもきらびやかで大きな屋敷。その中でも一段と豪華な部屋に二人の男がいた。
「な、なあ頼む!代わりならいくらでもある!だから私を見逃してくれ!!」
「…………………」
片方の男はもう片方の男に必死に懇願しておりもう片方の男はただ黙って聞いていた。
すると男はポケットから小さい人形を取り出して人形を強く握る。
すると
「や、やめ!うわああぁぁぁぁ!!!!」
懇願していた男は人形に吸い込まれた。
男はもう片方の男が人形に吸い込まれたのを確認すると屋敷から踵をかえす。
ここで男について説明しよう。
男の正体は悪魔だ。
男は地獄の魔王の命により人間と契約して魂を集めるように言われた。人間の願いを叶えて契約する代わりにその人間の魂をもらう。その魂は地獄に行くのだが大抵は悪魔の愉悦のために苦しめられるのだ。
だがこの悪魔は違った。
彼は魂を集めたらその魂を地獄に送り、そしてすぐに魂を集めに行くを繰り返していた。
なぜ彼は他の悪魔のように魂を蹂躙したりしないのか?答えは簡単だ。
彼には
感情が無いからだ。
ただ魔王の命令を『言葉通り』に受け『そのままの意味』で願いを叶えて契約をし、魂をとる。
そこに善意も悪意も無い。
そう、『何も無いのだ。』
彼が屋敷の門から出るとそこに一人の男がいた。
「よお、■■■■。調子はどうだい?」
「さっきので664人目だ。」
「はぁ~、やっぱり優秀な悪魔様は違うねぇ。」
「それで何の用だ。」
「ああ、そうだった。今度集めた魂を地獄の猛獣に食わせるんだけど一緒に見ないかい?
あの恐怖に歪んだ顔はたまらないぜ~。」
「いや、魂を送ったらすぐに集めに行く。」
「相変わらずつれないねぇ~。まあいいや、気が向いたら俺に言ってくれよな。」
そう言って男と同じらしい悪魔は煙のように消えた。
悪魔が消えたのをみると男は再び歩き始めた。
3日後、男は森の中を歩いていた。
屋敷を出てから男はずっと歩き続けておりその結果数百キロも離れたこの森に着いたのだ。
男は『仕事』に関しては優秀だがさっきも言ったように感情が無い。
つまり、効率良くする等の考えを起こさないので今のように歩いて契約する人間を探しているのだ。
男が歩いていると近くの茂みが揺れる。
男は音がした方を向いたその時
「グオオオォォォォ!!!!」
音がした茂みから熊が姿を現したのだ。
しかし男は熊を見ても何もせずにただ立っていた。
熊が今まさに男に食らいつこうとする。
がその瞬間、
「あぶな―――い!!!」
反対側の茂みから少年が出てきて男を掴みそのまま熊から走って逃げた。
「グアアオオォォォォ!!」
「へっへ―ん!誰がお前なんかに捕まるもんか!」
少年と男はそのまま走って逃げ去った。
少年と男が逃げた先は森の奥にある小さな家だった。
男は少年に連れられるまま家の中に入るとそこはお世辞にもキレイとは言えないほどボロボロだった。
家の中に入ると少年は大きな声で叫ぶ。
「おーい!ミネア!帰ったぞー!!」
すると上からドタドタと音が聞こえたと思うと少年と同じくらいの年の少女がおりてきた。
「おっちゃん、紹介するよ。こっちは双子の妹のミネア。それで僕はピケア。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
双子が紹介をしたので男も紹介をする。
「私の名は■■■■だ。」
「え?何か難しそうな名前だなあ。とりあえずおっちゃんはおっちゃんでいいや。」
「ちょっとピケア!この人に失礼でしょ!」
ピケアの態度にミネアは叱責するが
「いや、それでいいなら私は構わない。それに私は人ではない、悪魔だ。」
と、さらっと返す。
普通は驚いたり信じなかったりするが双子は
「そうなの!?じゃあさじゃあさ!悪魔だから空飛べたりするの?」
「コラ、ピケア。おじさんに無理言わないの。」
全く普通の対応だった。
するとミネアは思い出したかのように言う。
「あっ、それでは人の命を奪ったりするんですか?」
「いや、私は人間の願いを叶える代わりに契約してその魂をもらうのだ。」
「それじゃあさそれじゃあさ、契約はしないけどお願いしてもいいかな?」
「どういうことだ?」
「うん、おっちゃん。僕たちの家族になってくれない?」
「ちょっとピケア!」
「それはできるが、契約せずにするにはどうしたらいい?」
「簡単だよ、僕たちと一緒にここに住んでよ!」
ピケアのお願いに男は少し黙った。だがすぐに口を開く。
「いいぞ。」
「やった―――!!!」
「え、いいんですか?」
「構わない。」
そうして双子と悪魔の生活は始まった。
悪魔は人間の生活には全く触れなかったため最初は慣れなかったが徐々に慣れていった。
そして数年が経った頃
「ゴホッ…ゴホッ…。」
ミネアは原因不明の病に犯された。
ピケアは妹の病を治そうとあらゆる薬草を飲ましたが、一向に治る気配は無かった。
そしてミネアの容態は悪化していき、ついにはベッドからおりれないぐらい悪くなった。
ある日、ピケアは男を呼び出した
「おっちゃん…僕のお願い聞いてくれるかな?」
「なんだ?」
「ミネアの…妹の病気を治してよ!!」
「…それは契約をするという意味か?」
男はピケアの懇願に少し感じていた。普段の男なら淡々と契約しただろう。だが男は双子と暮らしている内に胸の中がもやもやとするのを感じた。ミネアが病に倒れた時、そしてピケアが契約をしようとする今が特にもやもやとした。
「本当に…いいのか?」
男は濁しつつ言う。
「僕は…ミネアに生きて欲しいんだ!だから…だからおっちゃん、ミネアを助けてよ!!」
それを聞いた瞬間、男のもやもやは苦しさに変わる。
どうして胸が苦しくなる…?
「……契約…成立だ…。」
男はピケアに手をかざした。
翌日ミネアの容態は嘘のように回復した。
が、そこにピケアの姿は無かった。
男の胸の苦しみはずっと続いていた。
男がテーブルでうずくまっているとミネアが近づき、ポツリと言う。
「おじさん、悲しいんだね。」
「悲しい…?」
「私わかってるよ。ピケアがおじさんと契約して私の病気を治したんだね。」
「……そうだ。」
「ピケアがいなくなって悲しいけど、私はおじさんを恨んだりなんかしないよ。」
「…………………」
「だからおじさん、私のお願い聞いてくれるかな?」
「……なんだ?」
「私のお願いは―――――」
数年後、男は孤児院で孤児の世話をしていた。
数年前、ミネアがやった願いはこうだ。
『おじさんに心が生まれますように。』
その契約により、男に感情が芽生え、直後に双子の喪失を悲しんだ。
そしてそのあと男は決断する。
あの双子のような子供を生み出さない、と。
そして男は現在、孤児の世話をしている。
「院長先生!遊ぼ――!」
「わかったわかった。じゃあ今日は何して遊ぼうか?」
男は子供に微笑んだ。




