死神と私の出会い
今私は11月後半の寒空の下、薄着で夜のお散歩。
車も通らない、お店もコンビに以外閉まってる。そして追い打ちを掛けるように澄んだ満点の星空。
とてつもなく侘しい独り身を演出するにはもってこいの時間帯。
なんでこんな事になったかというと…時は数時間前に遡る
初めて好きな人の家にお泊り。
一人じゃ恐かったから親友も連れて
最初の数時間は3人でワイワイ騒いでいた、けれど…いざ寝る時になって親友は彼に抱きつき、彼は親友に腕枕をし、同じ布団で
私はと言うと一人布団で毛布に包まって…………何この状況
私が彼の事を好きなのを親友は知っているはずなのに、なんで一緒の布団で寝てるのよ!
とそんなこんなで今に至る
私は小さく溜め息を吐いた、白い息とは対照的に思い出したくない物を思い出してしまった脱力感と虚無感が私を黒く染め上げる
「はぁ…」
出るのは溜め息ばかり
本日数度目の溜め息を吐きあてもなく歩く
そろそろ白んできた空を見て私は方向転換をし彼の家へ帰る。
重い足取りで一歩一歩
彼の家へ近づくたびに増える溜め息と親友への殺意にも似た嫉妬、
「もぅ着いてしまった…」
そんなに歩いていなかったため数分の内に家に着いてしまった。しかたなく玄関を開け自分の寝ていた布団へ戻る、隣には出て行く前とまったく同じ体勢で寝る2人、私はその2人を見て溜め息を吐くと2人が見えないように頭まで毛布を被りきつく目を瞑った
何時間経ったのだろう朝の日差しを浴びながら布団からのそのそと顔を出す……
「?!■@★◎◆※▼*!!ッッ」
めちゃくちゃ動揺をしています。
知らない人が彼でもない親友でもない超絶美形が同じ布団で、それも上半身裸で寝ていらっしゃる
絶叫しそうになるのを必死に抑えながら深呼吸をし心を落ち着かせる
私は隣の美形さんを起こさないようにそっと布団から出ようと…ガシッッ
『ひいぃぃぃッ?!』
美形さんが私の腰周りに手を回した、私は心の中で叫びつつパニックを起こしていると
「ん〜…ぁっおはょ…ございます。」
「ぁっ、はい。おはようございます」
「………ところで…あんた誰?」
あんた誰とは何事ですか?
抱きついた態勢のまま見上げてくる美形さん、まだ眠いのかゴシゴシと人の服に顔を擦り付け
「って何やってんですか!それに貴方の方こそ誰ですかーーー??!!(注)彼と親友を起こさないように小声)」
美形さんを引き剥がそうと方を押すがさらに力を込めて抱きついてくる
「俺、榴、(人間年齢)18歳、独身、職業吸血鬼兼死神。……あんたは?」
「ぇっ‥と娃恋、16歳、当たり前に独身で…職業は高校生……って‥ぇ?死…神???」
「ぅん。死神。ということで娃恋。寝かせて?寒いから布団頂戴。」
死神の榴さん、私から離れ今度はもぞもぞと布団に潜っていく……背が高いせいか足が見えてますよ。
今この部屋には親友と彼が一つの布団で寝ていて、そして私の寝ていた布団で寝ている死神の榴さん……寒い部屋に放り出された私…とてもおかしな状況だ。
落ち着く為に彼の部屋に備え付けられているバスルームへシャワーを浴びに行く狭い脱衣所で服を脱ぎ、冷たい冷気を感じながら熱いシャワーを頭から浴びる。眠気はもう無く頭が冴えていく、死神……吸血鬼…美少年‥あたしはとてつもない夢を見ていたのだ、バスルームから出たら元の虚しい一人の世界に戻るんだ、きっとそうだ……あたしは言い聞かせた呪文のように何回も何回も
シャワーを浴びていたはずなのに足はガチガチになっていた、急いで脱衣所に戻ると服を着替え冷たくなった足を引き摺りながら部屋に戻る、布団は二つ、一つの布団には膨らみが二つ、もう一つ、私が寝ていた布団には膨らみが…一つ……あたしは盛大な溜め息を吐いた、やっぱり夢じゃない…現実だ。死神とか悪魔とか美少年とか現実だ…フラフラと歩きながら美少年もとい榴さんの寝ている布団の中に冷たくなった足を突っ込む、ピトっと僅かに暖かい柔らかい物に足が当たる、その瞬間布団の膨らみがビクンッと震え私の脚を掴む
「ひぃ?!」
小さく悲鳴を上げるあたしの目を忌々し気に布団から顔を出す榴さんの視線が重なる、、僅かな沈黙、視線が痛いあの射ぬくような視線が痛い‥けれど目が離せない
「足、冷たいぞ?死んだ奴より冷たくなってる……」
少し失礼だが小さい低い声、だけれどどこか優しい声で囁くそれがとても心地よくて温かくて
「シャワー浴びたんです、ただ足だけ冷えて。……貴方の方こそ死神のくせに温かいんですね。」
自分の順応性の早さに自分で驚きつつも平然を装い私の足を掴んでいる榴さんの手にそっと触れる
「俺が生きた人間より温かいなんて普通はおかしいんだ。だから娃恋が変なんだ。」
「……そんな事言うなら体温分けてくださいよ。今すっごく寒いんですからね。」
ムスっとしながら相手を見ると榴さんは『しょうがねぇな…』と呟き私の腰に手を回すと私を自分の入っていた布団の中に引き入れる
「これで少しはあったかいだろ?俺の体温分けてやるんだちゃんと受け取れ。そしてもうあんなに冷たくなるな。」
「…」
「聞いてるのか??」
「Σ!はっ!なっなななな」
「バナナでも食いたいのか?こんな時に人間って変だよな。普通は『あったかぁいvV榴さんありがとぅ』くらいは言えないのか。」
「バナナなんて食べたくないですよ!それになっなんでこんな事を!?」
「そんなのお前が温めろと言ったからだろ?なに叫んでるんだ?」
ごもっともです。自己嫌悪に陥り落ち込んで静かにしていると榴さんは満足そうに私を抱き締めてくる
普通の男性にしたら長い肩の辺りまで伸ばされた髪からとても甘いいい香りがして、落ち込んでいた私の気持ちを冷たくなった私の体を抱き締めてくれる榴さんの腕が心地よくて
私は再び夢の中へ堕ちていった
「まったく、世話をかけて…やっと寝たか。娃恋、君はやっぱり生きていた方が綺麗だ、だからもう少し生かしてあげるから生を楽しんで俺は君がお婆さんになったら迎えにくるよ。そしたら俺の物にしてあげるから、可愛い可愛い俺の娃恋。」
榴さんは私の首筋にキスを落とし紅い紅い痕を残した、それは見る見るうちに美しい薔薇の入れ墨になった
「これで君は俺の所有物だよ。……でもお婆さんになるまで離れていたら俺の事忘れるかも…」
榴さんは妖しい笑みを浮かべ―――。
朝の日が昼の柔らかく温かい日差しに変わる頃私は再び目覚めた、私の目の前には心配そうに私の顔を覗き込む親友と彼の顔が
「娃恋!大丈夫?!あたしが呼び掛けても全然起きないんだもん!死んじゃったのかと思ったでしょぉ!」
急に泣きだし私に抱きついてきた親友の理久、まったく理解の出来ていない何故理久は泣いているんだろう、何故榴さんはいないんだろう……
「理久……榴さんは?」
「榴って誰だよ;お前もしかして呑気に夢でも見てたのかよ;」
理久の後ろで腕組しながら呆れたように、しかし安心したように微笑んでいる莱臥。
「えっと…榴さんは…死神…?」
「ふぇ!?死神?!どうゆう事よ〜〜〜!!」
「ぁ、ぅ、えっとですね…まぁようするに死神の榴さんっていう超絶美青年と会って話した。」
簡潔に解りやすく話したつもりが2人には理解出来ないご様子で。
2人がそろいもそろって
「馬鹿?」
とか
「とうとう幻想見るようになっちゃったの?!」
とか
「いや、俺は幻想じゃないんだけど…」
とか………
「「ひいぃぃぃ?!」」
「ぁっ、榴さん。」
2人の後ろでヒラヒラと手を振り私を見て楽しそうに笑う榴さん
「本当は娃恋を連れて逝かなきゃいけなかったんだけど、娃恋は生きてた方が可愛いだろ?だから娃恋には生きてもらおうかなぁって思って、ついでに俺も娃恋の最期を見届けて連れて逝く(それで俺の物にする)ために実体貰ってきてやったぞ。嬉しいだろ?」
ポカンとしている2人をよそに私は嬉しかった、こんな美少年が私の傍にいてくれると言っているのだ、頬が緩む
「うん。嬉し
「嬉しいわけないでしょ?!あたしの友達を死神なんかの手に渡すもんですか!」
勝手な事を言う理久に私は小さく呟いた
「いや、榴さんエッチだけど優しいしいいじゃん」
「ぇっ?」
「私が莱臥以外の男の人にちゃんと心を開けたのだから解ってほしいな?」
にっこりと微笑む私を見て理久は嫌々と首を横に振った
「でも?!死神なんだよ?」
「知ってるよ?」
「別にいいんじゃないか?」
私たちの会話を遮ったのは莱臥だった
「俺は娃恋が幸せなら相手が死神だろうとなんだろうといいと思う。」
そう言って私の頭を撫でてくれた
「莱ちゃん優し〜〜」
「で?嬉しいのか、嬉しくないのかどっちなんだ?」
「嬉しい〜かな?」
「かなってなんだよかなって」
私に覆いかぶさるように抱きつき私の上で迷惑極まりない一言が
「さっき寝れなかったから今寝る。ついでに起きたら飯食うから娃恋、うまい血液用意しとけよ?」
「へ?ぁっ、うん?………血?」
下敷きになりながらどうやったらこの体勢でうまい血を用意できるかを本気で悩み首を傾げる
「血ってどうやったら美味しくなる?」
「いや、俺知らないし;」
「あたしだって知らないわよぉ」
こうして私は死神に愛されてしまいました。
これからどんな事が待っているのか、今の私には分からないのでした。
「理久か莱ちゃんの血ちょうだい?」
「「無理!」」
さて私はこれからどうなるのでしょうか?
まぁそれは別のお話。
機会があったらお話します。
感想をいただけるようならお願いします。好評のようなら連載の方で死神と少女シリーズをやろうかと考えています。