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いま、ここにいる──やがて家族になる日へ──

ちょっと気が向いたので短編を一話

「神々の記憶の中で、ただ君の平和を願う 〜戦乱の世で神の【記憶】を宿した少年と、天涯孤独の少女が世界の真実と闇に挑む物語〜」のサツキのお話です。

「おはよう!みんな」

 朝日が昇ると同時にさわさわと話しかけてくれる木々たちに挨拶をする。


 ”おはよう、皐月。今日もいい天気だよ”

 ”ねえねえ、今日もお水欲しいな。早く!”

 ”皐月、何かお話して~”


 みんなそれぞれがおしゃべりさんで、たくさんお話ししてくれる。

 大切なお友達。

 独りぼっちだと寂しく思う暇もない。


「今からお水あげるから待ってね!」


 いそいそと井戸に向かい、水を汲む。

 上呂に移し、ほんの少しお祈りをささげる。

『みんなが元気に健やかに育ちますように』

 元気を分けてもらっているから、せめて健やかでいてほしい。


 水やりをしていると森の動物たちがやってくる。

 ”皐月、おはよう!一緒にご飯食べよう”

 ”皐月!少し蜂蜜が舐めたいな~”

 ”ずるいぞ!俺も欲しい!”

 今日は子リスさんたちが一番乗りだ。

「喧嘩はだめよ。今、スプーンに取ってあげるから待っててね」

 冬前のこの時期は餌を確保するために忙しくしているのだろう。

 甘いものが欲しいみたい。

 ”やった!いつも皐月の蜂蜜は元気になるんだ~”

 ”うんうん。昨日もご飯を少し減らしっちゃったし。冬用に回しちゃったから”

「あらあら、それは大変ね。明日も蜂蜜を用意しておくわね」

 ”やった!明日も一番に来るよ!”

 本当にかわいらしい子たち。

 無事に越冬できるようにこの小屋の近くに木の洞があればいいのだけど。


 今度は鹿やタヌキがやってきた。

 ”おはよう、皐月。今日も元気そうでよかった”

「鹿さん、おはよう。今日も元気よ。風邪もひいていないわ。心配してくれてありがとう」

 ”大切な私たちの『娘』だからね。当たり前だよ”

 ”そうだよ。ずっと、ここで楽しく暮らしていこう”

「ありがとう、私もここが大好き。ずっとここにいるわ」

 ”よかった。どこにも行かないで!”

 子リスたちも会話に参加してきた。

「どこにも行かないわ。行くところ、私にはないもの」

 そういって近寄ってきてくれた子たちを撫でる。

 みんな”次は自分に!”と群がってきた。


 なんて幸せなんだろう。

 家族はみんないなくなった。

 最初は寂しくて泣いていた。

 でも、みんなが傍にいてくれるからもう寂しくない。


 ”皐月、きっと新しい家族ができるから、待っていよう。それまでは私たちが家族だ”

「新しい家族?」

 ”そう、新しい家族。皐月を大事にしてくれる家族だ。子どもも授かる”

「そう……。私は今のままでもいいけど……」

 もう、家族がいなくなるのはつらいから。

 このままでいい。

 ”私たちもずっと傍にはいられない。人間より寿命が短いからね”

「そうだけど……。怖いの。」

 ”大丈夫だよ。きっと大事にしてくれる人が現れる。皐月は幸せになっていいんだ”

「ありがとう。期待せずに待ってるわ」

 ”大丈夫、もうすぐだから”

 物知りな鹿さんはいつも不思議なことを言う。

 ちょっと予言めいていて面白い。


 私に新しい家族ができる。

 考えもしなかった。

 3年ここで一人で暮らしている。

 元の世界には戻れなさそうだと感じてからは深く考えないようにしてきた。

 家族もいない方が、いなくなった時に辛くない。

 いつも諦めていたのかもしれない。

 でも、子どもも授かることができるのなら、少し期待してもいいかな。


 さて!今日は畑の収穫をして、冬支度しないとね

 やることがいっぱい!

 今を生きられて、私は幸せ。


 動物たちと歌を歌いながら畑へ向かう。

 これが――”今”の私の日常。


また、気が向いたらほかの登場人物の短編を書こうと思います。

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