封じられた光
翌朝。
「おはようございます。セイグラン様」
「・・・・もう起きたのか」
「ただで間借りさせてもらうとは考えていませんよ。この程度は私にお任せください。」
「勝手にしてくれ。私は出かけるからな。」
「ええ、お気をつけて。」
許可が出たのを良いことに、掃除、洗濯、その他家事もやらせてもらい、あっという間に昼を回る。
「もうご飯の時間ね。あなたたちも食べる?」
ご飯、の言葉に昨日ついてきた小鳥やリスがわっと寄ってきた。
「どうしてこんなに懐いてくれるのかしら...」
「それはお前さんの聖気に反応しているからだろうよ」
「きゃっ!、、、お、お帰りなら言ってください!」
「声はかけた」
「聞こえてませんよ!びっくりした。それより聖気って?」
「お前さんからは聖気、精霊の祝福が感じられると言う話だ」
「精霊の...祝福?私に特別な力はありませんよ?」
セレナは初めて聞く言葉だ。
「それにお前は魔力の流れが歪んでいるな。
何か封印されているのかもしれない」
「え……私、魔法は、習ってもてんでダメで……」
妹の方がよっぽど上手だった。だから両親も私への興味を失ったんだろう。
「ならば、私の言うとおりにやってみるんだ」
普通の方法だとうまく行かないのか?...と小言を言いながらもアドバイスをくれる。
「魔法は心だ。何か心に制御をかけられている可能性はあるが、基本的には本人が打ち破ることができる。」
「心...」
「そうだ。お前は魔法を諦めてはいなかったか?初めは自分が魔法を使っているイメージを脳に浮かべることが1番大切だ。ただお前の魔力は少し特殊なようだから、私が手伝ってやる」
妹はできて私はできなかった。
そしていつしか可愛がられなくなった。
私は魔法を使えないんだ。その代わりに公爵の奥方として家の役に立とう。
確かに魔法は諦めていると言えるな、とセレナは妙に納得した。
「まず、お前の魔力は聖に偏っている、そこが他とは違うんだ。
まず寄ってきた生き物たちに接した心を思い出せ。心が温かくなったらそれを外に出してみるんだ」
「温かさを、外へ...。」
セレナは胸に当てていた両手を前へ広げる。
「みんなおいで...」
(光が集まってくる。あたたかい。)
小鳥たちだけではない、蝶や虫たちも集まり、木々も揺れる。
いっぱいに広がる、柔らかな光。
その瞬間、胸の奥に、ひとすじの光が差し、
セレナの体が光り輝く。
(これが...魔法...)
大きく風が凪ぎ、光が離散した頃、
セレナはゆっくり目を開ける。
「できた...?」
「......やるじゃないか」
セイグランはもう背を向けて歩き出していた。
(優しい、人。心がじんとする)
夢心地のまま、その日は過ぎていった。
セイグランの小屋での生活は、不思議なほど穏やかであった。
朝は森の鳥の声で目を覚まし、薬草を摘みに行き、
自然とたわむれながら、時々魔法を練習する。
セイグランからはあの後、
私の力は精霊から授かる先祖帰りのようなもののため、
発現しなかったのだろうと言われている。
どんな力になるか、制御するためにも練習が必要なのだと言う。
「そんなこと知っているなんて、あの方は何者なのかしら...?」




