出会いの夜
老人はセイグランと名乗り、
森の奥の、木造りの小屋に住むという。
そのまま休ませてもらうことになり、
ご飯が用意されている。
「貴族の娘に出すようなものではないのだが。」
「とんでもございません。お心遣い、感謝いたします。」
用意された食事をありだたくいただく。
スープ暖かさにセレナの心がほぐれた。
一緒に来た動物たちは、小屋の近くで休んでおり、時々窓から心配そうに顔を覗かせている。
緊張の糸が解け、セレナはここまでの話をゆっくりとセイグランに話す。
「王太子がそんなことを...それは常識からは考えられない話だ、その様子では家も頼りにならないだろう。」
「そうなのです。仮に家に戻っても婚約破棄で傷物として後ろ指を指され、魔力がないので家にも貢献できず厄介者扱いでしょう。」
自分は悪くないと思っているものの、セレナはうつむく。
「大変申し訳ないのですが、どうか此処を私の一時的な拠点に...「嫌でなければここは部屋もあるし、好きなだけ過ごせばいい」」
「えっ」
こんな見ず知らずのただ歩いていた私に、なぜそんなことまでしてくれるのだろうか。
驚いたままセレナが固まっていると、
「行くあてのない奴を追い出したら、それこそ私が常識外れになるだろう。」
と、言うな否や、
セイグランは立ち上がり、食器を片づけ始めてしまった。
ぶっきらぼうではあるが、温かみのある声。
「ーーーありがとうございます!」
セレナはここでお世話になることにした。




