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導きと、入口

さてこの後まずはどのように家に帰るか...

馬車を手配するにも、持ち合わせがない。

城門を抜けると、冷たい石畳の匂いと森の土の香りが混ざり、鼻をくすぐる。


ふと、眼前に広がる丘陵を歩き、その先の林に入りたくなった。


「いつも教育で外になんて出してもらえなかったし...」


太陽の光が葉の間から差し込み、緑がキラキラと輝く。胸の中に小さな高揚感が広がった。


自然ってこんなに香りが濃かったんだ!


青い小鳥が枝から枝へ飛び回り、どうやらついてきているようだ。

セレナは微笑みながらおもむろに腕を伸ばすと、なんと小鳥が指先までやってきた。


「休憩したいの?ごはんはないのよ?」


ピーと一声鳴き、セレナの指先に止まる。


「一緒に来てくれる?」

小鳥は離れることなく、セレナの頭上へ移り歌い出す。


何だかわくわくして、セレナの足は広大な自然を前に踊る。

気づけば一緒に数羽の小鳥、リスや野うさぎがセレナと一緒に歩んでいる。


「案内してくれているのかしら、冒険仲間が増えたわね」


葉擦れの音や風の感触に顔はほころび、先ほどの騒動など忘れ、自然の中で自由を楽しんでいる自分に少し驚きながらも、馴染む自分がどこか心地よい。どんどん木をかき分けて進み、気づけば森へ入り込んでいた。



「——娘が、こんな場所で何をしている?」


低く響く声に、足が止まる。

振り向けば、古びたローブをまとった老人が音もなく立っていた。

白い髭、そして深く光る琥珀色の瞳。

怪しい、とセレナは思うが、この状況では私も怪しい、間違いない。


「ご、ごめんなさい……。ここの居心地がとてもよくて……散歩?です。」


「ここは普通簡単に来れる場所ではないんだが......どこに行くつもりだったんだ?」


どこへ、と言われて初めてセレナは思案する。私はどこにいけばいいんだろう。


しばらくセレナが言い淀んでいると、


「行くあてがないか。俺の小屋にでも来ればよい。どうするかはそこで考えればいいだろう。」


貴族の女が森に1人、というだけでも訳ありである。

彼の声が妙に心地よく、ありがたい提案にセレナは思わず頷いていた。

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