表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雪夜が明けて

作者: 藤野あきら

――私はあなたに、ひどいことをしてしまいました


 のそのそと布団を出て、寒さに身を縮こませる。ガウンをはおり、カーテンの隙間から外を見る。白く色付いた町並みが広がっていた。

 息で曇ったガラスをなぞり、ふと彼女のことを思い出す。混然とした気持ちの扱いに困り、そっと首を振る。

 新たなスタートは、もう切られていた。


 何をするでもなく、ただ布団の上に寝転ぶ。借りた本は既に読み終わっていた。宿題はまだ残ってはいるが、急いで済ますほどでもない。だからまあ、暇だった。

 今さらお詫びだなんてさぁ……あ~、オカシイや

 心でつぶやく。その言葉に反し、実際は困惑が広がる胸の中。

 この原因はよくわかってる。もちろん、彼女からの『年賀状』だ。今、他の年賀状と一緒に箱に突っ込まれているアレ。

 彼女。正直言うとどうでもいい。てか既に、記憶のかなたに消えていた。ホントに。

 彼女――幸成 結香ゆきなりゆいかは、小4の時同じマンションに引っ越してきた。

 第一印象とかは覚えていない。忘れた。ただ頭が良さそうな雰囲気とかはあった気がする。まあ、実際良かったけど。

 何がきっかけだったかなんて知らない。それ以前に、こっちはソレをソレとして認識さえしてなかった。

 小学校6年生。自分自身が……無視というイジメにあっていたことさえ。

 ――いや、違うな。気付いてはいた。いたけど、無視程度なら特に害はないしと気にしてなかった。

 気にしてなかったと、思う。

 だから、最初アレを見た時、ただ純粋に驚いていた。彼女が引っ越して3年が経つのだから。

 もう接点が無くなったと思っていた彼女から、不意に『年賀状』が届いたから。

 今さら、だった。

 無視されていたものの、その頃はまだかなり本にのめり込んでいたし。それに、ずっと独りだったわけでもないし。

 一人。彼女のもとから抜け出して、友達になってくれた子がいた。

 何を………何を、今さら言ってるんだろう。こっちが特に何とも思ってないことを、勝手に気に留めて……

 もしかしてかなり悩んだりした? だとしたらザマアミロ、だ。

 でも、だ。もし……もし彼女が悩むきっかけになったのが、イジメられたからだとしたら? イジメる側だった彼女が、イジメられる側になっていたら?

 そっと、目を、閉じる。

 『年賀状』には、差出人名しかなかった。向こうの住所なんて知らない。

 それが――全て。

 勢いをつけて身を起こす。窓に近付き、バッとカーテンを開く。昨夜積もった雪は、もう跡形もなく溶けていた。

 宿題しようか……


 冬はまだ終わらない。雪だってまた降るかもしれない。でも、日常に支障はない程度だろう。

 新たな年はもう始まっている。遅れるわけには、いかない。


   ――☆――☆――☆――


 私はあなたに、ひどいことをされていたのだろう

 傷ついたことも確かに、何度かあった

 でもそれはもう、私の中では過去になっている


 だから……ユゥちゃん

 もし立ち止まってしまっても、後ろを振り返ることがあっても、進むことを諦めないでよね

 こんな私でも今、ちゃんと歩けてるんだから、さ

季節外れですいません。設定はお正月です


迷ったっていいんです。ちょっと後退りするのも、構わないんです(多分)

最終的に前進出来たら、それで十分なんです(きっと)


と、偉そうなことを言ってみたり



降り積もった雪はやがて、溶けて水になります

それまで待ったって、歩き出せるのでは?


てことで、【雪夜が明けて】でした

読んでくださったあなたに、素敵な何かがありますよ~にっ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ