19話
二人の戦いを、到着したゴブリン達と観戦していると、
羅刹が来た方角、つまりモンスターの群れが逃げてきた方向からでかい気配が1つ近づいてきていることに気づいた
『もう少しで2人の戦いは終わりそうだが、お前達どうする?
このままここで観戦しているか、それともでかい気配の方に俺と行くか』
ゴブリン達は基本弱者であるため、ビビリである
なので、全員残ると思っていたが、練気のレベルが上がった7体の内4体がついて行くと手を上げた
『お前たちの速度に合わせるから、ばらばらにならない程度に走れ』
そう言うと自転車の全力疾走程度で走りだし、氣もかなり安定して見える
これなら5分ほどで目的地に到着するし、内功もある程度残るだろう
しかし、
『お前たちでは戦闘にもならんから、見学だ、到着するまでに氣をすべて使い切るつもりでやれ』
到着してすぐに戦闘にならない限り巻き込まれたりはしないだろう
到着時にコイツラの氣がなくなっていたところで問題は無い
それに内観しての修行も大事だが、実際に使うことで練気の熟練度を上げることも重要だ
加速してから3分後、到着することが出来た
そこにいたのは、血によって口と前足部分が赤くなっている一軒家より大きな大狼だった
ゴブリンを見つけ、ご飯だと思ったのか走ってきた
氣を使った様子は無いが、その速度は先ほどまでのゴブリンたちよりも早く、
周りへの被害も大きかった
巨体であるため、通り道の家々を潰しながら進み、瓦礫とともに襲いかかって来る
『〝土よ、水よ、高きより落ち、押し流せ〟〝泥水壁〟』
魔術で大量の泥水を生成し、壁を作る
思いつきで作った魔術なので効率が悪い、大狼の突進を抑えるために大狼より質量を重くしなくてはならず、上空に出現させるために魔力を多く消費しなくてはならなかった
まあ、そのおかげで瓦礫もなにもこちらへは通らず、逆に押し流すことができた
地面はドロだらけで動きづらくなったが、氣で沈まないようにできるし、振りになるのは相手だけだ
『〝土よ、固く、高く、形成せよ〟〝石塔〟』
そして、ゴブリン達の観客席を作ってから大狼のもとへ近づく
泥にまみれ、体が重いのだろう、先ほどより遅いが直線的な動きではなく
左右に揺れながら泥の少ない家屋を足場にして突っ込んでくる
スキルを発動したのだろう俺から10mの距離まで近づいたと思ったら、いきなり加速し、炎をまとった爪で襲ってきた
巨体ゆえ、身体のドコを狙うなどはなく、高速で近づいてくる大型トラックの如き凶刃は、俺を引き裂き、
押しつぶそうと殺意が込められた必殺の一撃なのだろう
だが、足りない
ただ火を纏っただけのせいぜい数t程度の攻撃では、氣をまとわない状態でも耐えきることが出来る
レベルが20を超え、筋力値が30もある、成人男性で5前後の力だが、30は成人男性の6倍を意味しない
そして、生命力は高くなればなるほど生命器官すべての性能を底上げし、
ステータスは一つの能力値で単純に比べることは出来ない
もしかしたら筋力はこいつのほうがあるのかも知れない、
しかし、生命力は間違いなく俺のほうが高いし、氣を扱える様子もないため、ろくに攻撃は通らない
とはいえ、観戦しているゴブリンどもの参考になるように戦ってやるために、
氣を使っての防御術、回避術、隠密術を見せながら戦う
普段から使ってはいるが、戦闘時の氣の動きは実戦でしか学ぶことが出来ないためこれは悟りを得るきっかけになればいい
一通り技を使い終わり、ゴブリンたちも鍛錬を始めており、レベルこそ上がっていないが練気の熟練度が上がったように見えるので、首を落として戦いを終了させる
『それにしても、羅刹の氣に変なのが混じったと思ったら、羅刹も導馬も全く動く気配がないぞ?』
大狼と戦っている途中でもう気づいてはいたが、導馬の策略で一時的にそうなっているだけだと思ったらまだそのままだったので気になる
『お前達、こいつを解体しておけ。肉は持ち帰るとして、爪とか牙とかほしいのあったら各自持ち帰っていいから。俺は先に戻る』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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side羅刹
『ぐっ、何だ?何をされたんだ?』
呪術が発動し、鎖を弾こうとしたらすり抜け、この身を縛った
動けないうちに更に強力な呪術で攻撃を仕掛けるのかと思いきや、導馬のやつも呪術を維持するために他の呪術を使えないようだった
『何人もの同族を犠牲にして発動したのがただの拘束術なのか?!どうなんだ導馬!』
『ふあははは!馬鹿か?そんなわけ無いだろう?この呪術は貴様の望みを邪魔するためのものだ
術の効果を無くせるのは我だけ、貴様の望みを叶えるには我の下に付くしか無いのだよ』
『俺の望み?俺の望みは種の繁栄だぞ?種族全体に呪術をかけたのならともかく、そうではないのにどうやって俺の望みを邪魔するというのか』
そう、俺の使命は種の繁栄、今いる同族がいくら減ろうと、最終的に全体として栄えればよいのだ
それを俺単体に呪いをかけて妨げられるものか
『この術の効果はあえて教えないでおこう。しかし、だからといってハッタリだと思うか?
そして貴様の望みを我が知らなかったと思うか?』
確かに...
どうにかなると確信して行動を起こしたはずだ
しかし、
『お前の下にはつかない。お前が王になったら今以上に同族に犠牲が出るだろう。
ただ、おそらくお前を殺してもその術の効果はでるのだろう?
だから譲歩してやる、罰を与えないでやるから術を解け』
『罰を与えない...我を殺さないし、呪物も奪わないということだな?
ここまであからさまに反旗をひるがえした者に対して甘いと言えるほどの温情だな。
それほど、強い同族である我を失うことをもったいないと思ったか...』
『そうだ、失ってしまうには実に惜しい実力だ。大人しく従え』
『解けだの従えだの、うざったいな。まあ、貴様のほうが強者であるのも事実、今も術を解こうと氣で抗っているな。維持するので手一杯だ。
だから我も譲歩してやろう。
我は貴様が約束を守るかどうか、また、守ったとして今後の我への対応を信用できん、よって、
我に許しをこえば術を一時的に無効化してやる』
どんな効果かわからないが...
マスターもこっちに来ているようだし時間がかかりすぎだ、ここが妥協点か
『わかった。それでいい、マスターの前で誓おう』
『マスターを待つ必要はない。いま、契約はなされた』
そうして、マスターが到着すると同時に拘束が解かれた




