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☆離縁のお話をいたしましょう☆



『カレン?どうしたんだ?』


目の前には、結婚したばかりの旦那様。

白金の髪に、青い瞳。

優しげな瞳に、柔和な顔立ち。

どこを取っても、前世の旦那様──正一さんとは似ても似つかない。


それにしても、だ。

前世のみならず、今世でも白い結婚を宣言された私は、もはやそういう星回りに生まれたのかもしれない。

どんな星回りよ、と言いたくなるけど。


(白い結婚を言い渡されるのは、前世と今世、合わせて2度目ですもの。場馴れしておりますわ)


以前は、突然のことに動揺してただひたすら泣くだけだったけど。


前世の経験がある今の私は、強かですのよ?


ただ、黙って耐え忍ぶ女は卒業するの!

私の人生は、私のもの。


私がどう生きるかは、私が決めるわ!


幸も不幸も、私が決める。

他人に決められたり、ましてや他人に強要されるなんて真っ平。


瞬時に今の状況を理解した私は、すぐに考えた。

そして、今の旦那様──マシュー様に取引を持ちかけたのだ。


彼と結んだ契約事項は全てで三つ。


まず、一つ目。


『三年したら、離婚しましょう。離婚理由は、白い結婚もそうですが、子ができなかった、とか。そういったものでもよろしいかと。離婚するにはじゅうぶんな理由ですわね!その後は、愛人と再婚するのでも、再婚せずに愛人と余生を過ごすのでも、お好きにされたらよろしいですわ』


二つ目。


『子ができなかったことで離婚する、となった場合。謗りを受けるのは私です。私は貴族令嬢として痛いほどの傷を負います。ですから、慰謝料をいただきたく思いますわ。いわゆる、手切れ金です。金額は公爵閣下のあなたからしたら、些細な金額だと思いますわ」


そして、三つ目。


『ひとつだけ、この邸で気に入ったものを持ち出す許可をくださいませ。ああ、家宝とか、そう言った貴重な品ではありませんわ!ドレスや宝石のようなものだと思っていただければ』


マシュー様は怪訝な顔をしていたが、最終的に合意してくれた。


この三年の間に、マシュー様は恋人と結婚できるように根回しを進めておく。

私はその間、公爵夫人として振る舞う。




そして──本日が、その三年目なのである。


ティーカップをソーサーに戻した私は、旦那様を見て言った。


「今日で、結婚から三年が経過しました」


「ああ、そうだな……?」


きょとん顔で私を見るマシュー様。

どうやら、完全に忘れているらしい。


確かに、この三年間、取り交わした契約の話は一切しなかったけど……。


でも、忘れられたら困るわ。


「もう、旦那様ったら……。お忘れですか?」


困ったように私が言うと、旦那様も困り顔になった。


「いや、だから何を」


「少しお待ちくださいませ。用意しますから」


そう言って、私は席を立つ。

そして、自室のライティングデスクの引き出しから一枚の紙を取り出した。

その書類の最下部には、私と彼の名前がそれぞれ署名されている。


カレン・カーター

マシュー・サザランド


署名日は、今から三年前。

私はそれを手に、私室へと戻った。


旦那様は、私の手にしている書類を見ると、目を見張った。


「それ」


「はい。三年経ちましたから」


とうぜんだと言わんばかりに言葉を返すと、旦那様は黙ってしまった。


あら……?どうしたのかしら。


顔色が悪い。

それに、彼はグッと押し黙った後、俯いてしまった。


少し気になったが、しかし明日からは他人の身。

何か思い悩むがあるのだとしても、相談相手は私では無い方がいいだろう。


私は、ふたたび対面のソファに腰を下ろした。


「さ、旦那様。離縁のお話をいたしましょう!」


私が明るく言うと、旦那様はのろのろと顔を上げた。


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