表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ふち

作者: 粉砕骨折

穴がぽっかりと空いている。


最初は、ただの小さな窪みだった。だが、その横を毎日通って観察し続けるうちに、それは次第に大きく広がり、雨が降る度、水溜りができるようになり、それをじっと見ている自分の顔が映るようになった。


なぜ、穴が大きくなるんだろう。


遠く離れたところに座って眺め、もし、もっと深く掘ったら、どうなるんだろうとぼんやり考え、そして、好奇心に負けて行動に移した。


ああ、一生の不覚だ。これでもう逃げられない。


その日から、ひたすらひたすら穴を掘る。来る日も来る日も土埃を被る。爪の中の泥が気になる。頬に張り付いている粉々が癪に障る。足がどころどころにできている小さな沼に嵌って抜けなくなる。度々土砂崩れで下敷きにされる。


叫びたくなる。


だが、掘らなければならない、一度手を付けたら最後、やり遂げる義務が課される。


そして、番人になる。


毎日の課題は、縁を回ること。雨の日も風の日も関係ない。うかっり足を滑らせて淵に落ちたら、何日も何週間も掛けて這い上がり、また巡る。


「馬鹿だな、君は。落ちるとわかっていてなお周囲をクルクル回ってどうする」


「そんなこと言われなくても、自分が一番うんざりしてる。だが、掘ってしまったもんはしょうがない、大人しくそれを見張るしがないんだ」


見張る。そう、見張るんだ。誰かが自分の代わりに落ちないために。そんな義務感に掻き立てられる。


そして、どこへも行けなくなる。


そして、朽ち果てる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ