蹴りが得意な挑戦者
ある日、蹴りが得意な挑戦者がやってきた。裏スポーツ界では有名らしいが俺は見たことも聞いたこともないやつだった。とりあえずマリスの元へ案内するとやつはポケットから取り出した石を蹴りで削り『球体』にした。
「オレと戦えばお前もこうなる」
「ふーん、そうなんだ。でも、その程度じゃ私に一生勝てないよ」
「いいや勝てるね、オレの蹴りをくらって生きてるやつは今のところ一人もいないんだから」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、やろっか」
「おう」
やつは『刹那の隙間』に到着すると試合が始まる前にマリスの後頭部に蹴りを入れた。
「どうだ! まいったか!」
「不意打ち、夜襲、急所狙い……私はそういうの嫌いじゃないけどそれで敵を倒せないやつって何なの? バカなの?」
「な、なんでお前は普通に動けるんだ? 今のでビル一つバラバラにできるんだぞ?」
「え? あんたまさかビル一つしか破壊できない蹴りで私に勝てると思ったの?」
「う、うるさい! オレの蹴りは最強で完璧なんだ! それがこんなガキに通用しないわけがない! オレは今からお前を殺す!」
「それって試合じゃなくて殺し合いがしたいってこと?」
「いいや違う。今から始まるのは狩りだ! そしてお前はオレの獲物だー!!」
「ねえ、アユム。こいつ、殺してもいい?」
「それより屈服させた方が便利だと思うぞ」
「そっか。じゃあ、今からこいつを屈服させるね」
「ああ」
やつの飛び膝蹴りがマリスのみぞおちに当たる直前、見えない何かに阻まれやつの膝は壊れた。
「どうしたの? 私を殺すんでしょ? ほら、早く立ってよ、いつまでのたうち回ってるの?」
「う、うるさい! 黙れ!!」
やつはマリスの顎めがけて蹴りを放つがそれも見えない何かに阻まれてしまった。
「あーあ、もう片方の足も使いものにならなくなっちゃった。どうする? まだ続ける?」
「ま、まだだ……オレはまだ負けてない……!」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、今度は私の番ね。えーい」
「うわああああああああああああああああああ!!」
マリスはやつでリフティングしている。彼女のローファーがやつの体を蹴り上げる度にやつの体とやつ自身が悲鳴を上げる。
「一分経過ー。ねえ、もうワンセットやる?」
「い、いえ、結構です……」
「そう。じゃあ、今からあんたは私の奴隷ね」
「は、はい……ご主人様……」
「よし。じゃあ、肉体だけ元に戻してあげる。えいっ」
「あ、ありがとうございます! ありがとうございます! これからはご主人様のために私の全てをご主人様に捧げます!!」
「はいはい。じゃあ、最初の命令。今後、私以外に負けちゃダメ。分かった?」
「はい!!」
「いい返事だね。じゃあ、もう帰っていいよ」
「はい! では、失礼します!」
「ねえ、アユムー。これでいいの?」
「ああ」
「そっかー。じゃあ、帰ろっか」
「おう」