こんばんはー、天井裏に住んでる不動くんの右腕でーす
俺はマリス・ブラッドドレイン(はじまりの吸血鬼)と彼女のスペアと共に帰宅した。二人が玄関で騒いでも俺の両親は無反応。二人は食事中だろうと入浴中だろうと俺のそばで騒いでいる。
「二人とも頼むから少し静かにしてくれ。勉強に集中できないから」
「勉強? それって面白いの?」
「正直そんなに面白くはないけど、今日習ったところを復習しておかないと後々困るんだよ」
「ふーん、そうなんだ。ねえ、今日は何習ったの?」
「ん? えーっと、今日は炎色反応とか世界遺産とか四面楚歌の語源とか習ったな」
「なあんだ、花火とまあまあ貴重なものとすっごいピンチな状況かー」
「へえ、お前って意外と物知りなんだな」
「物知りというか私の場合、そういうの全部経験してるからね」
「あー、そういえばそうだったな。でも、お前を世界遺産の中に閉じ込めて花火とかマシンガンとかで攻撃しても無意味なんだろ?」
「うん」
「はぁ……なあ、どうしてお前を倒せる権限持ってるやつらは全員放任主義なんだ?」
「私が正気だからだよ」
「つまり、お前が暴走したらやってくるんだな?」
「うん」
「そうかー。じゃあ、世界中の超人にケンカ売るかー」
「そいつらって強いの?」
「強い。けど、お前より強いかどうかは分からない」
「そっか。でも、なんか面白そうだからやるー」
「そうか。じゃあ、忍者に頼んでみるか」
「忍者?」
「ああ。まあ、忍者というかストーカーだけどな」
「ふーん」
「ということでお前の出番だ。『陽忍 巫子』」
「こんばんはー、天井裏に住んでる不動くんの右腕でーす」
「誰?」
「俺のストーカーだ」
「ひっどーい! 幼馴染って言ってよー」
「ピンク色の長い髪……お前、本当に忍者か?」
「うん、忍者だよー。あと、これは地毛だよー」
「ん? ちょっと待て。お前、マリスのこと見えてるのか?」
「えー? あー、うん、見えてるよー。というか、マリスちゃんのそばにマリスちゃんのそっくりさんいるねー」
「はじめまして、スペアです」
「スペアちゃんかー、かわいいねー」
「コミ力おばけめ。というか、なんで見えてるんだ?」
「さぁ? 私が忍者だからじゃない?」
「そうか。まあ、そういうことにしておこう。巫子、世界中の超人たちに『ねえ、自称最強さん。本物の最強と戦って勝つ自信ある?』と書かれた手紙を送ってくれ」
「はーい。じゃあ、陽忍法使いまーす」
「ああ、じゃんじゃん使ってくれ」
「承知しましたー。陽忍法『縦横無尽飛脚』ー」
彼女は小さな光球になると俺の部屋から飛び出した。
「絶対帰ってこいよー」
「はーい」
「マリス、多分明日からいろんなやつに襲撃されると思うけど大丈夫か?」
「余裕余裕。それよりもう寝ようよ。明日も学校あるんでしょ?」
「ちょっと待て。明日必要なものをカバンに入れるから」
「はーい。スペア、一緒に寝よう」
「はい」
明日は……いや、明日も騒がしくなりそうだ。




