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戦場がやってきた

 何かが……来る!


「スペア!」


「何?」


「今回は大物だからアユムと一緒に観戦してなさい」


「分かった。アユム、行こう」


「あ、ああ」


「……いつでも来なさい。私は逃げも隠れもしないから」


『ウォー、ズー』


「今回の相手は世界中の戦場の記憶の集合体なのね」


 見た目は浮遊大陸だけど負のオーラでできてるから周囲の人間には黒いもやにしか見えない。まあ、これが人間界に留まるとよくないものを引き寄せちゃうからさっさと『刹那の隙間』に行った方がいいわね。


「こっちよ! ついてきなさい!」


『ウォー、ズー』


 ここは『刹那の隙間』。


「いつでもいいわよ。さぁ、かかってきなさい!」


『ウォー!』


 投石、投げ槍、矢、銃、爆弾、戦車や軍艦の砲撃、戦闘機の爆撃、ミサイル、そして無数の武装した兵士たちの荒波。


「地面には地雷、落とし穴、毒の沼。色々あるけど私に有効なものは一つはないわ!」


 私は戦場を歩く。こういうのは核さえ壊せば一気に崩れる。でも、邪気が濃すぎて核がどこにあるのか分からない。


「えーっと、こういう時は……ガキども、そこをどけ、私がお前たちを救ってやる」


 やつらは泣きながら私に道を譲った。


「戦場よ、気づいているか? 邪気が一番濃くなっている部分があることに。十中八九、核はそこにある。違うか?」


『ウォー!』


「どうやら図星のようだな! そこだ!!」


「オギャー!」


「戦場で命を落とした赤子の霊か。おい、お前はこれからどうしたい? 今すぐ私に殺されるか? それとも生きて何かを残すか?」


「オギャー!」


「後者か。いいだろう、望み通りにしてやる。えいっ!」


『ウォー!』


 戦場は消え、赤子は肉体と命を得た。


「スペア、こいつを姑獲鳥うぶめ保育園に連れて行け。あそこなら大丈夫だ」


「分かった」


「養育費は私が出す。それからこいつの名前は『不動ふどう 戦人せんと』だ」


「分かった。じゃあ、行ってくる」


「ああ」


「……今回はちょっと変わった相手だったな」


「うん」


「……おやつにするか?」


「うん」


「マリス、どうした? 笑ってくれよ」


「私が何もしなくても滅びた世界がいくつもあったからな。少しそのことを思い出してしまったのかもしれない」


「お前の名前、悪意って意味らしいけど全然そんなことないと思うぞ」


「え?」


「誰一人傷つけず勝利したお前は悪意なんかじゃない。英雄だ」


「私はそんなんじゃない。私がいるだけで世界の寿命は縮んでしまうんだぞ?」


「だとしても、お前は化け物でも悪意でもない。そういう体質を持って生まれたかわいい吸血鬼の女の子だ」


「……そ、そんなこと言っても何も出ないぞ!」


「そうか。でも、顔は真っ赤だ」


「むー! アユムのいじわる! 今日一緒にお風呂入ってやらないぞ!」


「そうか。じゃあ、スペアと入るよ」


「うっ! ぜ、前言撤回! 私も一緒に入る!」


「そうか。じゃあ、帰っておやつ食べるか」


「うん!」

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