第八十八話「作戦始動」
「始まった」
ネルブレムは虚空に向いそう呟く。
「堅陣龍によってこの国は滅ぼされるだろう。堅陣龍に施した闇は、堅陣龍の侵攻を進める、滅びも時間の問題」
「そんな事させるわけ、ないでしょう!」
土尖った土の塊が飛んでくるが、ネルブレムは一瞬にしてそれをバラバラにする。
それにとどまらず、今度はこちらからも攻撃を仕掛けた。
「あなたは、闇とかそういうものに取り憑かれてるようね。辞めたほうがいいわよ」
「なぜ」
「闇は心を飲み込み、己を闇へと変える」
闇は人にかかわらず、すべての生き物に悪影響を及ぼす。闇に呑まれた者は思考、姿、力、全てが闇に変わり、自身を滅ぼしていく。
闇は広がり続ける。
闇の連鎖は止まらない。
「……勝手な決めつけだ」
鋼糸を一直線に飛ばす。ニヴェリーはそれに対抗しようと魔法を放つ。
しかし、鋼糸は突然方向を変え、ニヴェリーの周囲を囲うかのように広がる。
そして、鋼糸が一気にニヴェリーを引き締める。
(鋼糸は鋼の強度を誇る糸。これで奴も死……のはずだが)
確かに鋼糸は引き締まっている。
だか、それはニヴェリーを締めるだけで、切断は出来ない。
「それは辞めてほしいわ。肌が傷つくもの」
「なにをしたかは分からないが、お前は動けまい。後は首を狙うだけだ」
鋼糸により、ニヴェリーは拘束され動けない。
そして、急所となる首がガラ空き。
非常にまずい状況だ。
「お前を処し、この国を滅ぼせば、任務は完了……もう少しだ」
ネルブレムはブツブツと何かを呟いている。距離が離れているので、はっきりとは聞こえない。
―――ただ。
「あの神が現れなければ。いや、現れるはずもない」
いま、神といったかしら?
確かに聞こえた、あの神と。言い方を見て、奴らの主君となる闇神ではないことは、伺える。
ならば、一体なにか、神とは。
誰のことを示しているのか。
ニヴェリーは頭の中から情報を絞り出し、答えを探る。
神といっても基本的な神、そして隠れた神も含め、沢山。その中の誰かと推定する。
多すぎるので、情報から絞り出して、神を探らないと。それに、時間もない、私も命も。
誰? 誰なのか、その神は。
(私もまだ死にたはない。抗わないとね)
「さて、早い所済ませよう。私も次の段階へと進みたい」
ネルブレムが手を上げる。それは、遠からずニヴェリーの首を目指している。
ネルブレムの手に纏うように、鋼糸が生成されていく。
あの技術、どうやっているのか不思議。と、そんなこと言ってる場合じゃない。
「っ……!」
体を動かし、鋼糸を取ろうとするが無駄。鋼糸は締まっている。
焼き切るか、切断するかしないとこれは解けないだろう。
そして今は動けぬ状態。これは本当にまずい、何もできない。
「おまえの父にも伝えておこう。なにか遺言はあるか?」
遺言……ねぇ。
そうね、遺言。死ぬつもりはないけど、そうね。
「………そうね」
少し間を開ける。
その隙にニヴェリーは、手を後ろに隠し。ネルブレムに見えないよう動かす。
言いたいことは決まったわ。
ニヴェリーは目をネルブレムを中心に捉え。
「準主には、奥の手があるってこと」
「?」
ネルブレムは意味を理解できなかった。
しかし次の瞬間。
「ストーンブロッド!」
ニヴェリーがそう言い、動かせる指で、指をパチンとはねた。
その瞬間、ニヴェリーの両脇の空間から大きな岩が形成。
それだけでなく、その岩はネルブレムに向かい方向を変え、とんだ。
「なに」
一瞬の出来事に戸惑い、上手く鋼糸を形成できなかった。
ニヴェリーの放った岩はネルブレムに向かって飛び、遂には直撃した。
直撃、体は粉砕。
だか、油断は出来ない。
「!」
瓦礫と埃が混じった中で、ひときわ目立った物が見えた。
腕だ。
ネルブレムが、瓦礫や岩の中から手を突き出していた。やはり油断できない。
「は、はは……」
かすかに声か聞こえる。
「危ない、危ない」
周りの瓦礫が退けられ、中からネルブレムがでてきた。
血だらけになり、各部位が欠損していて、今にも瀕死の状態。
しかし。
(死んでないない)
ネルブレムは、その両の足で立っているのだ、地面に足をつけて。
それだけではなく、徐々に傷が治っていっているようにも見える。
回復魔法を使っていないのに。
(………まさか、そんなこと)
ニヴェリーの脳裏に、ある種族が浮かび上がる。それだとしたら、闇神は……。
ニヴェリーが悩み込んでいたその時、前方から声がした。
ネルブレムではない。それは、あの二人。そして一人の女の子だった。
二人には見覚えがある。
「あなた達……!」
「ニヴェリー……おっと、取り込み中のようだな」
「おまえは……」
一人は渋いおっさん、仮面つけて正体を隠している男、ローバン改、バーン。
少し血だらけだけど、返り血……よね?
もう一人は若い男の子、冒険者。アラン。
そして、そばにいる女の子は、どこか見覚えのある姿の女の子。その服装、髪型から一瞬でわかった。
ロベルト。彼が探していた女の子だと。
(あぁ……無事のようね)
心のなかで安心し、少しの安らぎを得た。
「お前たちは……。そうか、少し前から二人の声が途絶えていた。既にやられていたとは」
「あぁ、ここで終わってことだ」
ローバンは剣を引きずりながら、ネルブレムへと一歩前進。しかし、少し足取りが不安定。
実際、ローバンは怪我をしているのだ。回復魔法を使えばいいのだが。
あいにく、急ぐ必要があり、使う暇がなかったというわけだ。
「さて、さて。どうしてやるか」
盗賊のような言葉をはきながら、ネルブレムを捉える。
「ふっ。私をどうするか? それは私自身の意思による」
「意思だって?」
「あぁそうだ」
「意味のわからないやつだ」
それと同時に謎に満ちている。だか、これだけは多分。
いや確信出来たわ。
「私の意思にによると……ここは引いたほうが良さそうだな」
「なに?」
ローバンがそういう瞬間、ネルブレムが後ろへと飛び出す。
そして、何かを地面に投げつけたかと思うと、辺りに闇とも思える渦が発生。
それは、ネルブレムを飲み込んでいく。
(! なに……?)
誰もが、見たことのない現象に目を驚かせた。
闇の渦は、ネルブレムを取り込み、遂には跡形もなく消えてしまった。
その場に残されたのは4人。
「!」
ニヴェリーを縛っていた鋼糸がはち切れ、動けるようになった。
だか、今までに中に縛り付けられていたからか、疲労のせいでふらっとしてしまう。
「! まずいな」
「危ない!」
アランは、一切に飛び出し、ニヴェリーを既のところでキャッチ。捕まえた。
後もう少しで、地面に倒れる所だった。
アランは肩を持ちながら、地面へと降ろし座らせす。ローバン、セイランもあとから追いついてくる。
(私としたことが……目眩を及ぼすなんて)
目眩なんて、久しぶりの感覚。
「……私、魔法かけます!」
「頼む、さてと……大丈夫か………?」
3人で介護してくれてるようだ。
ローバンさんが面倒を見てくれて、アランが支えてくれる。そしてクリフさんの言っていた彼女が魔法を私に………。
(って………!?)
セイランによる回復魔法が聞いたのか、先程まであやふやだった意識が、きっぱり戻った。
正常な意識を取り戻した。
「それくらいでいいわ」
「!?」
ニヴェリーはセイランによる魔法を手で退けて、立ち上がろうとする。
それに、皆が驚いた。
「だめだ、まだ完治は……」
「いえ。それは後回しよ、今は早く、上にいかないと」
その足取りでか……。
アランは思った。ニヴェリーは少しだけふらついている。一瞬正常に戻ったかと思ったが、まだ完治は出来ていなかった。
ニヴェリーも感じている。
(っ……私。ここまで弱かったかしら)
「地上………あ、そういえば。ニヴェリー、ロベルトはどこだ?」
ローバンが今更気づいたか、ニヴェリーに聞く。
その言葉に、アランと、セイランも反応する。ちょっと頭から抜けていた。
ロベルト……ね。
「彼なら、もう上に」
「そうだったか。なら、俺達も行くとしよう………だか、ニヴェリー。一人で大丈夫か?」
「一人で?」
一人でという言葉に、とぼけるようにし反応する。
「私は準主。ここを統治する者………私はそこまでひ弱に見えるかしら?」
「………そうだったな」
ニヴェリーの言葉に、ローバンは薄笑いを浮かべながら立ち上がり、二人を連れて行く。
「え、あの。いいんですか?」
「あぁ、彼女ならば安心だろう」
「どこから来るのか………」
「もちろん頭からだ」
他愛のない話を話し、場を軽くさせる。それにニヴェリーは温かみを覚えた。
(………あ! そうだった)
「大事な事を忘れてたわ。…、あなた達、地上へ行く道はわかるかしら」
「あぁ……あれだろ?」
そう言ってローバンは、上へと行く場所にバッチリ指を差した。
これは驚いた。
感なのか、知っていたのかは分からない。
魔法わかるかしら、出来るかしら……まぁ、大丈夫でしょう。
「そうよ」
「合ってたのか……」
ローバンの感はすごいようだ。
「ニヴェリー、あんたも上に行くのだろう?」
「えぇ」
「だったら、ここを乗ればいいだろう」
それはそうだ、いに着く先は皆同じ地上だ。ならば、一緒に行ったほうがいいのでは。
別の道からいかなくてもいいのでは?
そうなる。
だか、ニヴェリーの場合、そこでは、ダメなのだ。
「いえ、私は違うところから行くわ」
「なぜだ……?」
「………私にしか、使えない物があるからよ」
私にしか使えないもの。
初耳だ。ニヴェリー以外使えないものなんて。
「じゃあここで」
「あぁ……上にで会おう」
「えぇ、二人も……地上を、この国を守って欲しいわ」
プレッシャーの大きな依頼だ。まぁ、済ませるが。心中で、アランはそう思った。
「頑張ります」
「……任せな」
「頼もしいわ、ありがとうね」
礼を一つ呟いた後、後ろへ向き、その場所へと向かっていく。
後ろは振り返らない、今は行くべき場所を行くまで。さぁ、早く上に上がらないと。
ニヴェリーは向かう、途中大きな音が聞こえたけど気にしない。
「ここね……」
たどり着いた場所は、黄色い光を放った大きな魔法陣。
地面に展開されている。ここへ脚を踏み入れば、そこへと行ける。
(成功するかは分からないけど。あの人の作品よ……きっと)
期待を胸に、一歩足を踏み入れる。
足を踏み入れた瞬間、周りが歪んだかと思ったら、気づけば、明らかに地下ではない場所に居た。
(地上……それも、橋の下。成功した………)
やはり、あの人は素晴らしい人だ。こんな魔法陣を作ってしまうなんて。
胸の内で喜んでいると、突然、横から大きな雄叫びが聞こえた。
何かと思い横を見る。そこには……あの時見た怪獣。堅陣龍ゴライアスが海を渡りこちらへと近づいていた。
「あ…、あ、あれが……堅陣龍の全貌………」
迫力が、圧が段違い。今まで感じてきたどの魔物よりも大きな魔力。
そして、溢れ出る謎の気。
正直、これを撃退するなんて………。
こかまで来て、少し怖気づくニヴェリー、そこへ兵士が駆けつけた。
「ニヴェリー様ー!」
「!? あ、あなた達は……」
「お戻りになりましたか!」
「私達、ニヴェリー様を戻るまで全線を持ちこたえていました」
兵士は腕を合わせ、それぞれ私へ報告を唱えた。
「堅陣龍の攻撃はいまだ無し。ただ……堅陣龍から飛び出た岩石が、ありえない被害を施してます」
「そしてこのまま進めば、この橋を壊し、先へと進みます!」
「先には避難民が!!」
兵士達にによる、報告の数は大きく、一気に聞けば混乱するほどである。
「い、一旦落ち着きなさい!」
「「「はっ」」」
落ち着くの早いわね……。
と、とにかく。状況は深刻ね。国民の避難は既に完了している。
被害は沢山、建物が何件か倒壊、瓦礫、岩石だらけ、大砲………あまり効果は見られない。
「………」
どうしましょう……。
いや、迷ってる場合ではない、行動しなければならない。ここを統治すると決めて、最初に立てた決まり。
迷うならば、急げ行動。
父の言葉……思い出した。
「……準備よ」
「はい?」
「準備して頂戴。アレを打つ時が来たわ」
---
堅陣龍ゴライアス。
山のような巨大に地底春遥か深くに生息するみたことのないものだ。
(お出ましというやつか!)
階段を駆け上り、堅陣龍の元へと向かおうとしたその時。空を斬るような鈍い轟音が轟いた。
その音の正体は。
『大砲』
この国の大砲部隊。
堅陣龍ゴライアス撃退の時に備え、あらかじめ準備されていた部隊。それだけではな。
投降部隊、岩石や、鋼の刃がついた矢を、堅陣龍に向け放っていた。それも大量!
(もう既に、作戦が始まっている)
考えているうちに大砲の音が次々となり、砲弾が発射される。
早く上にいかねば。
ロベルトは走り出し、上へと続く階段を猛ダッシュで駆け上がっていく。
階段を駆け上がる今も、堅陣龍は海を渡り移動を続けている。今の所、被害はないが、いつこちらに被害をもたらすか分からない。
だから、早く向かわなければ。
いや、待て。
俺は行ってどうする? なにする?
俺は堅陣龍を攻撃するのか? いや、無理だ遠すぎる。
ならば、俺はなにをすればいいのだ? なにをすれば正解なんだ……?
(いや、そんな事どうでもいい、今は問題じゃない)
あとから考えればいい。今は早く上へと上がらないと……。
できるだけ急ごう。
地上へと戻ると、そこは阿鼻叫喚の嵐だった。
大勢の人が、逃げ惑い叫びをあげる人たち、避難が完了していない。
「っ……また」
堅陣龍ゴライアスが動くとともに、地上が揺れ、崩れる。
大砲による攻撃では当たっている、しかしそれが堅陣龍を怒らせる引き金。
今はまだ、直接攻撃してくることはない。たが、堅陣龍には意志がある、いつ攻撃してくるか………。
「おーい!」
その時、後ろから声がした。
ロベルトは立ち止まり、後ろふりかえる。
ふり返ると、そこにいたのは、巨漢のドワーフ、ハグワンドであった。
ここにて再会。
「! 無事でしたか」
「そう簡単にくたばらんよ。……それで、そちらどうなった。ここに居るということは、完了したということか?」
完了した………。
まぁ、完了したと言えば、そうだ。だか、まだセイランも救出していない。それにネルブレムも。
まだ、ニヴェリーさんが抑えてくれている。
「ニヴェリー殿は?」
「ニヴェリーさん……は、まだ下に」
「下か……まずいのぉ。ニヴェリー殿がいなければあの大技は打てまい」
あの大技、というと。以前紹介されたあの大きな大望のことか。堅陣龍撃退にとっての大きな要。
ニヴェリーさんが居ないとその大砲が使えないということ。
使えないとなると、まずい。
勝ち筋がなくなってしまう。
「ニヴェリー殿がいない限り、儂らがなんとかせねばな……!」
「……そうですね」
重い空気に包まれる。しかしそれを破るようにして、堅陣龍から飛び出た岩石がこちらへと飛んでくる。
岩石は大きい、当たれば骨折ではすまない。土の壁で防いでいるが、止まりはしないだろう。
まずい状況だ。
何か手を考えなければ。
この状況を打開する突破口は!
とその時、後ろから走ってくる音が聞こえた、ひとりじゃない数人だ。
後ろを振り返る、と。そこには……見慣れた仲間たちが居た。
ローバンさん。アラン。そして……セイランが、そこに居た。
「あ……」
唖然として声が漏れる。
「む?」
それに気づいたか、ハグワンドも後ろに振り返る。そしてあの3人が目に入り、喜びが湧き出た。
「おおっ! お前たちは!」
「ふぅ、戻ってきたぜ地下から」
「おおっ、やはり! やると思った! 無事だと信じてたわい!」
喜びに満ちている、久しぶりに再会が出来て嬉しいのだ。
「ん、そちらは……」
「あ、えっと。セイラン・テラスティアと申します」
そう言って、貴族風の挨拶をハグワンドに向け見せる。正直ハグワンドさんは分かってないようだが。
「セイラン。おぉっ、ロベルトが言っていた事はお主のことか」
「はい! ね、そうだよね………ロベルト?」
ロベルトは、固まっているままだ。
(なにやってんだ……)
「おいロベルト」
「あ、っと……すみません」
ローバンさんに突かれ、正気に戻った。
危ない危ない。いま変なところに行っていた、驚きすぎて。
それより、セイランが居るとは。
「無事でよかった。セイランはどこにいたん?」
「えっと幹部の人たちのところ。囚われてたんだ、ずっと」
やはり囚われていたか。幹部の奴ら、セイランまで手に。許せない。
「ローバンさんが助けたと」
「いや、アランだ」
「は、アランが?」
「まぁ……そうだ」
「なるほど、助けれるのか」
「どういう事だ、それ」
話していくうちに、喧嘩へと発達していく。喋ればすぐ喧嘩。喧嘩に変わる。
「落ち着きなされ、今、言い争ってる場合ではないじゃろう」
そうだだた、ついうっかり。
「バーンよ。ニヴェリー殿は知っておるか?」
「あぁ……あの人はある場所へと向かうらしい」
「ある場所……ふむ。なるほど、その場所に行くということは、儂らとは再会できぬということか」
「そうなるな」
完全に別行動で堅陣龍を対処しないといけないのか、それはそれで厳しいな。
俺、セイラン。そしてローバンさんにハグワンドさん、とアラン。この5人で何ができるか。
直接攻撃するか? とどかない。
魔法を打ったとしても、あまり効果は見込めないだろう。ならどうするか。
考えつかない。次になにするか……急がなければならない、次へと行動を移さないとダメなのに……。
悩み、苦悩し、焦る。
「えぇい、仕方ない」
ハクワンドはハンマーを持ち直し、地面に打ち付けるよう落とす。
ハクワンドさんは、ハンマーを構え、堅陣龍を捉えている。
いまだ堅陣龍ゴライアスは海を渡り、移動を続けている。体が溶岩なのか、あたりが少し溶けている。
どろっとしているのだ、瓦礫が、建物がが。
そんな堅陣龍に向かって、ハクワンドさんは立っている。なんの恐怖もなく堂々と大胆に。
自身に満ち溢れている。
「なにか、方法が………?」
横から質問する。その質問にハクワンドはこう答えた。
「攻撃。武器、魔法による攻撃。これが撃退の初歩的な道ぞ」
初歩的な道。
そうだ……攻撃だ。攻撃、なにか行動しないと、それが大事だ。
「だか、奴は遠すぎる。それに飛び道具のように岩石を放り投げてきやがる。爺さん。それでも打開できる策があるのか?」
ローバンさんがそう聞く。たしかに、攻撃できる手段は……あっても魔法、大砲くらいだ。
現時点で魔法などを打てるのは、俺とセイランのみ。
ニヴェリーさんは、あっちですでに戦闘を開始している。頼みとなるのは俺か。
「皆、武器を構えよ!」
ハクワンドが大声でそういった。それに反応し、手が勝手に剣へと移動した。
ハクワンドは言葉を続ける。
「今から儂らは、あの龍の背へと飛び乗る!」
その言葉に、全員が驚愕した。
当然だ、堅陣龍ゴライアスの背へと飛び乗る。無理だ、無謀すぎる。
背に飛び乗るだって? 無茶すぎる。
「できるのか、そんな事」
「うむ」
ローバンの問いに間も空けず答えた。
「じゃがそのためには、おぬしらの力が必要じゃな」
そういって、ハクワンドさんは、俺とセイランに目を向けた。
えっ、俺とセイランが?
---
「皆、準備よ!」
ニヴェリーの声とともに、兵士、物資隊、技術隊の人たちが、準備を始める。
堅陣龍を食い止める、決してこの橋の先にいかせてはならない。
理由は国民。この国の住人が、この橋の向こうの避難所へと避難しているからだ。
堅陣龍は必ずやこの橋にたどり着く。
行き先は明確には分からないが、行動的にこの橋へと辿り着くのは予想済み。
目的がこの橋でなかったら。
この橋が、堅陣龍の侵攻の障害物でしかないとしたら。
この橋は、確実に破壊されるだろう。
(ので……)
(ここで食い止める、この国の統治者としての責任のため!)
横で大きな音がした。音はなにかを重いものを運ぶ音。
車輪が回り、荷物を運ぶ。その荷物は約10メートルほどの大きな武器。
今までの武器とは比べ物にならないほどの大きさ。
それは、巨大な大砲だった。
「竜砲、運び終えました!」
これを使い、堅陣龍を撃退し、もしくは食い止める。
動きをとめたいところだが、相手はただのモンスターではない。土神眷族、堅陣龍ゴライアスだ。
簡単にはいかない。
「設置して頂戴。できるだけいぞぎめに」
「はっ……」
ニヴェリーは指示を出し、堅陣龍を眺める。
まだ遠いけど、着実にこちらへと接近している。急いで点検、砲撃の準備を完了しないとね。
「ニヴェリー様」
すると、横から対策隊の一人が話しかけてくる。
「なにかしら」
「本当にコレを、撃つつもりで」
この人からは焦りと、不安を感じられる。コレを本当に堅陣龍へと撃ち込むのか。
打ち込んで効き目はあるのかと。
「……撃つわ」
「ですが、先程から、大砲、岩石の投降を開始してますが、効き目など……!」
「それは大砲よ」
「え?」
「私の、この竜砲は違うわ」
私自身が信じている、この竜砲の威力、技術の成果である竜砲を。
竜砲はこの国から継がれてきた技術そのものの結果。竜砲は土の国の歴代の技術が引き継がれている。
この大砲はただの大砲じゃない。
竜砲。
「竜、巨大生物を倒すため、作られた、稀代の大砲よ」
「稀代……!」
「普通じゃない……だから、私はこの竜砲を信じている」
必ず、堅陣龍ゴライアスを、食い止めてくれることを。
国民を守ってくれることを。
「準備の装填を開始しなさい!」
私は大声で、皆に命じた。
その声に全員が答えた。
止めてみせる、堅陣龍を、私はこの国を守るため、戦う。
決意よ、光れ。
「あっ、ニヴェリー様! 」
私の決意が究極へと成ったその時、兵士が、こちらを呼んでることに気づいた。
「こっ、こちらに。すごいことです!」
「なにかしら」
そちらへと向い、兵士に呟く。
すると、兵士は指を堅陣龍の方向へと指し、こう呟いた。
「人です! 堅陣龍に向かって、渓谷から人が向かっています!」
驚いた。
「なっ、なんですって!?」
私は堅陣龍の上、背中に当たる所を見る、そして見つけた。
兵士の言う通り人、ただそれだけじゃない。
「あれは……!」
それは、あの時再開した人たち。まさに助っ人と言えるような立場の。
ロベルト、ローバン、セイラン、アラン。そしてハグワンド。
彼らが、堅陣龍へと向かっていた。
空を渡って。




