第八十三話「対巨大生物用兵器」
絶対絶命のピンチ!?
そこに駆けつけた、いや現れたのは、あの男。
名はタータス。
子供とそのサポート? と一緒に仲良く暮す優しい大男。
つい最近まで地脈に潜っていたとは思えない。
(まさか、こんな形で再会するとは思わかなかった、ほんとに)
拘束されたローバン。
後ろで立ち尽くす俺。
そして、目の前で向き合うニヴェリーさんと、タータスさん。
なんだこの状況。
「あなたは……何者?」
「俺か。後ろの友達だ」
「友達……?」
一応、友達です。
「友達なら、少し退けて欲しいわ。取り込み中なのよ」
「しかし、暴力的に見える。どうも穏やかな雰囲気には見えなくてな」
タータスさんは薄く笑い、ニヴェリーを挑発。
大丈夫なのだろうか、相手はお偉いさんだぞ……?
「友達が困ってるもんでな、止めさせてもらおう」
「あらそう。止めるとしても、あなたに止められるかしら」
「ほぉ、自身があるな。」
「えぇ、私は自分を信じてるもの」
ここからみても、バチバチ。
大きな大男と、綺麗な女性が立ち会って話している絵面。
なんだ、コレ。
タータスとニヴェリーは常に笑顔を絶やさず、冷静に相手を分析していた。
相手の行動を見るのは、策士にとって重要なこと。
相手のことなど、把握済み。
「そういえば。貴方も彼のように、情報が一切ない。特例人物だったわね」
そう言って、ニヴェリーは俺の方に目を向ける。
まさか、俺のことか? 俺って、そんなに情報ないのか?
謎の存在だというのか。
「名前は、そう。タータス」
「ふむ、合ってるが、それがどうしたと言うんだ?」
「少し話を……。最近にかけて、身元の分からぬ者が各地から、様々な国へと渡っています」
それに俺も当てはまるなぁ。
ニヴェリーは、手を机に触れながら、部屋をゆったりと移動する。
「その者達は、自らの正体を隠し行動し、裏で暗躍する存在。それは、闇神の幹部と名乗る者達。ご存知ですか?」
「ふむ……」
タータスはそう言って考え込む。
「えと、俺は知ってますよ」
「貴方は、すでに知っていましたね」
「まぁ……発見者だし」
あの貴族の男と、最初にあったのは俺と、ローバンさんだ。
タータスさんはどうなのだろうか。
「俺も、多少は知っている」
「……そうですか」
ニヴェリーは、タータスの言葉に、一言答える。
そして、行動した。
「では、貴方も関係者になります!」
ニヴェリーの目に周りに、金色に光る模様が浮かび上がる。
俺は、あれを知っている。
あれは、あの光はまただ、ローバンさんを拘束した時の光。
まずい、タータスさんの方に向かっている。
このままじょ、また拘束される、拘束の連鎖だ。
光を模した模様は、回転そして、タータスへと、高速で飛んでいく。
その光は確実に相手を捉らえ――
「!」
無防備なタータスへと直撃した。
しかし、なにも起こらなかった。
「!?」
「あ、あれ?」
当たったよな……なんで? あれ、拘束魔法だよな。
ローバンさんを捕らえた物と同じ魔法のはず。
なのに、なぜなにも起こらないんだ。
「き、効かない……?」
ニヴェリーは、見るからに動揺している。
しかし、この国の準主、瞬時に冷静を保ち、切り替えた。
「なぜ、私の魔法が……」
「この魔法は、なんだ」
「……後ろをご覧に」
ニヴェリーの言葉通り、タータスは後ろを向く。
その方向は拘束されたローバンだ。
「この魔法は、高度な拘束魔法。光で捉えた標的を拘束する魔法……。必中した者は拘束されるはず……」
「なにもないぞ」
タータスさんの身にはなにも起こっていない。
しかし、確かに光は当たった、なのになぜ、その魔法は発現しない。
「どうやら、詳しく調べる必要がありそうですね……」
ニヴェリーは、強く鋭い目で、タータスを捉える。
(! 魔力が上がった!)
ニヴェリーさんの魔力がいつにもまして、上へと上がった。
俺には分かる、この魔力は……。
上級レベルの魔法は、難なく使いこなせる魔力量だ。
しかし、その変化にタータスは動じず、その場から動いていない。
堅陣、堅固な城のような立ち振舞。
二人が向き合い、異質な空気が生まれる。
ロベルト、ローバンは後ろで、その二人を見つめる。
入れる隙はない、この二人からは、他とは違うなにかがある。
二者がまみえ、太守閣の一つの部屋は、他とは違う気配を漂わせる。
ニヴェリーは、自身の魔力を普段よりも上げている。
いまにも戦闘が始まりそうになる、その時。
扉が開く音がした。
部屋に居る4人は一斉に、扉の方へと目を向ける。
そこには、太守閣の授業員である女の人が、そこに居た。
「あ、あの……」
心細い声、すこし震えている。
「……どうしたの」
「あ、えっと」
女の人はそう言って、真ん中、タータス、ローバンの方へと目を向ける。
「あぁ、言って大丈夫よ」
彼女の動向を察したか、ニヴェリーは、優しく告げる。
「あぁ……では。準主様、開発完了しまして」
「! 本当?」
「は、はい!」
大きく返事をする。
「あっと……失礼しました!」
そして一度礼をした後、そっと扉を閉めて、出て行った。
(係員の人だろうか、よくこんな状況の中、部屋に入ろうと思ったなぁ……)
「間が入ったわね、では」
「ニヴェリー殿、よろしいか」
「……何かしら」
ニヴェリーは、次へと話を移行しようした時。
タータスによって遮られた。
「一度、話し合いを所望したい」
「話し合い? 貴方と?」
「いや、彼たちとだ。あの二人も、貴女に用があってここに来たのだろう、その行動兼ねて、どうか一度、話し合いを入れてくれないか? 頼む」
タータスは頼み込む。
俺達のことを考えて、頼んでくれている、話し合いという体で。
タータスの懇願に、ニヴェリーは黙り込む。
内心は悩んでいる最中だ。
(一人はともかく、もうひとりは指名手配犯。話し合いで済むことでは……しかし)
(ニヴェリー殿なら、きっと……)
一方タータスは、答えが分かっているのか、余裕に満ちている。
悩み始めて数秒、ついに答えが返ってくる。
その答えは……。
「ふぅ、分かったわ……心入れましょう」
了承だった。
‐‐‐
あの後、拘束魔法をといてもらい、とりあえずは助かった。
これでようやく話に移れる。
一時はどうなるかと思ったが、なんとか戦闘にはならずに済んだ。
半分戦闘のような物だったけど。
まぁ、いい! 細かい事は気にしない。
それに、今は迷ってる場合じゃない。
重要な秘密を掴んだんだ、これは、はやく伝えなければならない。
そう思い、俺とローバンさんは話を進め、あの事について話した。
『敵の位置を把握した』事について、話した。
そしたら、ニヴェリーさんはこう言った。
「フフッ、それならすでに把握済みよ」と。
はぁ……?
すでに知っていたのである。
つまり、無駄足。
「敵の本拠地に一人。潜入の得意な人物を向かわせたわ」
「ほぉ、潜入か」
「えぇ、ただ……」
「ただ?」
何やら不穏な空気を感じる。なんなんだ、一体。
「ただ……、その潜入人が、戻らないのよ」
「戻らない?」
「そう。そろそろ帰ってくるはずだけど、どうしたのかしら」
ニヴェリーさんはそう言って、上を見つめる。
目はどこか寂しげだ。
潜入官が帰ってこないのは。
だいたい道草食ってるか。
死んでるかのどちらかだ。
こういうのは、お決まりなんだ。
それに、敵の本拠地に一人だけ潜入させるなんて危険だ。
その道のプロでもない限り、成功するとは限らない。
も、もしかしたら、捕まって……?
「無事を願おう」
今はこれだけを願うとしよう、俺達には何も出来ないし。
「さて、俺にも、少し聞きたいことがある」
ここで、ローバンさんがニヴェリーに問いかける。
「この敵をどうするかだ」
この敵をどうするか。
それが、あとの事に通じるな。
「今の所は様子見よう、下手に動いても上手くいかないもの」
「まぁ、一理ある」
「だけど、この間にも、敵は裏で動いている。見過ごすわけには行かない」
「適切な対応が必要ね」
各自話し合う。
話を進めるごとに、情報(明かしていき、さらなる情報へと繋ぐ。
それは、時間を忘れるほどの事。
時間を忘れてた話を進める、気付いた時には、十一時になっていた。
「おっと、もうこんな時間だ」
最初に気づいたのはタータスだった。
「娘たちを待たせている。俺は、そろそろ帰るとしよう」
「待って」
帰宅の準備をするタータスを、ニヴェリーは待てと言う。
「なんだ」
タータスは聞く。
「帰る前に、貴方は何者なのか、教えてほしいわ」
タータスは何者なのか。
それは、俺も少し気になる、タータスさんは情報が薄い。
一人だけ、よく話さない、基本は傍観者の視点で見ているからだ。
ちょっとは、聞いても良いかもな。
「俺か。何者と言われても……何者でもない。ただ、俺はこの国で、いつもと変わらず暮らせればそれでいい。そう願っているただの一般人だ。ではそろそろ」
タータスさんは、一度手をこちらへと振る。
その後そくさくと帰っていった。
(謎深いなぁ……)
なんだか、意味深な言葉だった、俺はよくわからない。
でも、なにか込めてあるのだろう。
「ニヴェリー殿よ」
「……なにか」
「あの方は、いつからこの国に」
「分からないわ」
あの人は、よくわからない。
でも、いい人だと言うことは分かる。
(そう、信じている)
タータスさんが去った後、この部屋は静かになった。
それはなぜか。
理由は簡単、誰もいないから。
さっきまでざわざわしてたのに、なんで誰もいないのか。
それはニヴェリー。
彼女の一言から始まった。
「貴方達に、紹介したいものがあるわ」
‐‐‐
ニヴェリーさんに連れられ、一階まで戻ってきた。
ちなみにローバンさんの正体についてだが。
皆には明かさないらしい。
ホッとした。
さて、一階に来たが、紹介したいものがある? らしい。
なんだろう。
思い当たる節としては、先程の人が言っていた『準備完了』の合図。
あれが関係しているのだろうか。
「で、紹介したいって言ってたな。それは、どこにあるんだ」
「こっちよ」
ニヴェリーさんがこちらへと引き寄せる。
従って、そちらに向かってみると、そこには階段。
「まだ、下が……」
地下への階段があった。
(こんな所、来た時にはなかった気が……あ、隠し階段か?)
「この先に、お目当ての見世物があるわ、行きましょう」
地下へと先導するように、階段を降りていく。
それを追い、ローバンさんもあるきだす、地下か。
俺も行くかな。
地下の渡りを通り、先へと進む。地下は少し明かりがあるので、一応道は見える。
抜け穴とかはない、安心できる。
それに、地下の渡りは広い、縦横と大幅に広い。
まるで何か大きな物を運ぶために作られたような。
大きい物、うーん、なんだろう……投石機とか、って、なんかぶつかった。
そう考えているうちに、二人は既に先へと進んでいた。
遅れちまう、急ごう。
先へと進む。歩いていると、光が見えてきた、外の光だ。
ちょ明るい。あまりの明るさに手で視界を防ぐ。
何秒かして、光が止んできた。
俺は目を開ける。すると視界には、大きな渓谷が広がってきた。
(なるほど。下まで降りてきたか)
渓谷の中間より上あたりか、下まで降りたわけではなかった。
地面は、渓谷の地形をうまく使って、足場が出来ているようだ。
それよりも、ここに何があって……。
(うん?)
今、気付いた、俺と、ローバンさん、ニヴェリー以外に。
数人くらい人がいる。
それも、なにか準備をしているような光景だ。
「こっちよ」
声がかかった。
声の主はニヴェリーさん、横側に居た、そっちか。
そちらへと向かう、それにしても……高いな。
「ここですか」
「えぇ、お目当てはここよ」
「ここ」
「ロベルト、こっちだ」
ローバンさんが呼んでいる、何やら足場の淵にある柵から、下を眺めている様子。
下に、何かあるのか。
「すげぇぜ、これは」
(ふむ、そこまでか……どれどれ。俺も拝見するとしよう)
心のなかで妙なキャラ付けをしながら、そちらへと向かう。
到着し、柵に持たれかかり、下を見る。
するとそこには、大きな物、いや。
「な、なんだアレ……」
「武器だろう、とんでもねぇ大きさのな」
武器があった。
(で、でけぇ……)
十メートルは有に越えるだろう、あの武器、なんだ?
形からして……大砲?
なにかを、撃ち込むような武器ににている、遠距離系の。
「ニヴェリーさん、あれは?」
「水の国からの資源と、私たちの国の技術を兼ね合わせた、試作品。名前は決めてないけど、そうね……巨大な大砲、そして大型の生物用だから……竜砲。とでもいうかしら」
竜砲か……巨大な生物に目掛けてうつ巨大な兵器。
ロマンだぜ。
「威力、速度、射程ともに、凄まじい成果を発揮できる。方向も入れ替えれば、自由に狙える。ただ、撃ったあとの衝撃と効率が弱点ね」
「量産すれば、すごい兵器になりうる……」
こりゃ、とんでもないものが完成してしまったな。
「巨大な生物に撃つと言ったな」
「えぇ」
「あんた達は、これを今作り上げたのか」
「ちょうど5日前から、制作を始めたわ。ぶっ続けで」
ぶっ続け5日でこれができるのか。
なかなかに効率がよい、じゃなくて、ブラックだなぁ……。
鍛冶の人死なない? 大丈夫?
「そんな短時間でか。それならば、これを作るなりの理由はあるのだろう?」
「えぇ、もちろん」
理由、なんだろう。
「主に魔物の撃退用ね」
「撃退か、魔物ではないだろうこの大きさは。主な的に言えば……そうだな。狙いはそう……堅陣龍、とかか?」
え、堅陣龍だって?
そんなまさか。
「当たってるわ」
「マジか……」
これって、堅陣龍のために作り上げられたのか、嘘だろ。
え、でも、堅陣龍は土神の眷族で、敵ではないはず。
「これで、堅陣龍攻撃するのか」
「……そのつもりよ」
「なぜ? 堅陣龍は土神の眷族、この国を守らんとする龍だぞ?」
「分かってる。でも、必ず守ってくれるわけではない」
ニヴェリーはそう話す。
守ってくれる存在が、必ず、守るとは限らない、か。
「あの時の出現でだいたい察した。あれは、攻撃、会議でもそう定義された」
「攻撃だとしても、堅陣龍は……」
「国に被害が及び、民衆を危険にさらした。それはなってはならぬこと、この事を踏まえ、私達は、攻撃……撃退を決意したわ」
ニヴェリーさん……。
撃退か。
まぁ、俺もみたから分かる堅陣龍のあれは、攻撃に見えなくもない。
思いっきり腕振ってたし。
堅陣龍ゴライアス、なぜ、現れたのか。
「これだけじゃない。もちろん、投石、警鈴、そして拘束用の武器、魔法も用意してあるわ」
ニヴェリーさんは、やる気だ。今堅陣龍が現れれば、すぐに向い撃てる体勢。
見て熱意が伝わってくる。
「準備万端だな」
「えぇ、私は国を守る準主よ、当然」
きっぱり言い放った。
「せっかく来てくれたの、貴方達にまやってもらいたいことがあるわ」
「俺もか」
「えぇそうよ、大盗賊……だったかしら。力を見せてくれるかしら」
(大盗賊の事まで知られているのか……)
内心、少しだけ恐ろしさを感じるローバン、しかしそれくらいでは揺るがない。
「いいが。そのやってもらいたい事、とはなんだ?」
「貴方達がよく知ってること」
俺達が知ってること……? うーん、なんだ、俺達が。
………あ!
「敵居地」
「そう。侵入作戦決行よ」
「それか。まぁ、これは俺達の仕事みたいなもんだ。それに、俺の得意でもある」
潜入はローバンさんのお手の物、盗賊の力が活かさせる時。
胸が高鳴ってきた。
「やってくれるかしら」
「問題ない」
決まった、さて、侵入作戦か。
やるしかないか、よし。そうと決まれば作戦立てだ。
やってやろうじゃないか。




