第八十二話「二人で向かう太守閣」
翌日
ニヴェリーさんと話したあと、俺は宿へと戻った。
戻ったのは真夜中の夜頃、宿は静まり返っていて。
とても静かだった。
ローバンさんも、すでに寝ていた、受付の子は寝てなかったけど、大丈夫なのか?
遅くなってしまったので、俺も寝た。ぐっすり眠り落ちた。
そして目が覚めると、朝だった。
昨日はだいぶ疲れていた、きっと、昨日の質問攻めで、脳が麻痺しているのだろう。
ありとあらゆる質問をされた。
これ、手配書に必要ないんじゃ? という質問もあった。
嘘もつかず、正直に……のことについては正直に。
自分が知ってる限り答えた。
今思えば、ニヴェリーさんはあの時、俺から情報を聞き出したかったのだろう。
俺のことを、理由は分からないけど。
質問の代わりに、協力はしてくれる事となった。
この国で、偉い人に協力が貰えるのは心強い。
情報も手に入るし、闇神の部下などにも怯えなくなる。
空中要塞、妹の道へとだいぶ近づいたかな。
あ、あと……この国の神、土神の事について聞いてみたのだが。
土神は風神と違って、全く、ほぼ滅多に相まみえる事はないらしい、本当に。
生きていて一度も合う事はないレベル。
そのくらい、会うことはない。
まぁ、土神は大地と共にあり、とか伝承で聞いたことあるからな。もしかしたら、この大地自身が土神だったりして。
(なわけないか。さすがに、そうだとしたら大きすぎるし)
それよりも、神事に現れる頻度が違うのか。
風神は定期的にけど、土神は滅多に現れない。なにか関係しているのだろうか。
それとま、ただの神の気分か。
まぁいいか、俺が分かるような事じゃない。
それよりも、今日なにするかを考えよう。
「はぁ……」
宿のベッドに腰をおろした瞬間、ため息を吐いた。
昨日の疲れが、まだ溜まっているようだ。
朝っぱらからこんなに疲れていると、不便極まりない。マッサージでもしてもらいたい。
こんなところにはないだろうけど。
「さて、今日は………何しようか」
特にやる事がない。
昨日はだいたい話しあいだけで終わったしな。
今日はほとんどなにもない、散歩でもするか……いや、昨日の朝もしたか。
じゃあ、なにする?
考える。
しかし、何も出ない!
(いや、まだなにかあるはず)
考える。
敵出現のための対策訓練、魔法練習。
↓
するところがない→近所迷惑!
(だめだな……うーん)
なら、他に何をしようか、読む本もないし、散歩も、今は気分ではない。リシアの写真も見た。
他にすることといえば……。
その時、ふと視線が俺の荷物へと移動する。
俺は何も考えず、何秒か荷物を凝視する。
そして。
「早いけど。書くか……日記」
日記を書くことにした。
旅を始めたときから、日記を書いている。
父親、ギデカルドが俺のために用意してくれた、記念の代物。
こんな、何枚も紙を使う代物。相当な値段がしただろうに。
感謝しかない。
「さて……書くとするけど、なにか書こう」
日記は今日の終わり。それか、なにかあった時の事を書くものだ。
今日はなにもないし、起きてない。
それに朝っぱらだ。
正直早すぎる。
書くことがない。
「うーん」
筆を指で動かし回す。
暇な時などに、よくやってしまう癖、やり過ぎて慣れてしまった。
最初はド下手だったのに、いつの間にこんな……。
無駄な技術を会得してしまった。
こんな事を思ってるけど、筆を回す指は止まらない。
なぜなのだろう。
「はぁ……なにかな「ロベルト!」……おぉっ!?」
突然の大声とともに、勢いよく扉が開かれた。
振り返ると、そこにはローバンさんがいた、急いでるようだ。
突然の事で驚いてしまった。
「何事!?」
「ロベルト、掴んだぞ」
「な、なにを……?」
なにを掴んだの? 俺の手? いや、俺の手はここにある。
「敵だ」
「敵? えっ?」
「あの貴族の男。アイツの居場所を特定した」
「貴族、男……特定……へぇーー……えぇっ!?」
貴族の男で敵って、昨日あったネルブレムの事か!?
その場所を特定したって……どうやって?
そもそも、本当なのか?
「ほ、本当ですか?」
「あぁ」
「えっ……どうやって?」
「俺は盗賊。つまり、こういう事は慣れている、何度もやってきた」
理由になってなくないか?
(と、とにかく、それはおいておいて)
「す、すげぇ……」
「そうだろう?」
ま、まさか、敵の位置を特定してしまうなんて。
これご盗賊の力ってことか。
ローバンさん、やべぇ!
「それで……敵の居場所は……?」
「それはな……」
ローバンさんが移動し、イスへと座り、こちらに向く。
少しの沈黙のすえ、言葉を発した。
「地下"だ」
「地下……だと」
敵の居場所は地下。
地下か………いや、地下って、どこ?
具体的にどこらへんの地下を指しているんだ?
地下って、いっぱいあるよな。
ほぼ、この国全体ということだよな。
どこだ?
「ぐ、具体的に……」
「俺の調べだと、左渓谷、向こう側の立派な建物の、地下だ」
「立派な………」
どこだ?
まずいな、見てなかった。
左渓谷はあまり知らない、太守閣も宿も、タータスさんの家も、右渓谷だし……。
地図も、持ってないからな……。
「あと、多分だが……そこにセイランもいるはずだ」
「! 本当ですか?」
「多分な」
多分か……いや、情報があるだけよしだ。
セイランが敵の居場所に……ありえるかもしれない。
最近の出来事と、セイラン失踪を考えれば、全然あり得る。
セイランが囚われてることが。
「ロベルト。そういえば昨日の事を聞いてなかったな、話してくれ」
「あぁ……はい、昨日は――」
俺はそう言って、昨日の事、太守閣での事、敵の事。
嘘はつかず洗いざらい喋った。
事を聞いたローバンさんは、なにか悩むような顔をしていた。
それは、沈黙を呼ぶ。
当たりは誰もしゃべらない。
ローバンは無言で黙り込み、顎に手を重ね下を向いている。
ロベルトは空気の気まずさか、何もいえていない。
すこし、空気が重い、気まずい。
沈黙の空気を、最初に破ったのは、ローバンだった。
「……よし」
すると、ローバンさんが立ち上がり、何かを決めたよな声を出した。
そのままローバンさんは、宿の窓側に行き、外を見る。
(?)
どうしたんだ?
意図は不明、というか、今仮面つけてないから、素顔晒しているけど……大丈夫なのか?
バレたりしないのか?
「ロベルト」
「あ……はい?」
また声を掛けられた。
「セイランは敵位置、そして太守閣での会議……そして敵、ネルブレム……状況が連なり、連鎖を呼ぶ、それにより問題は重なる」
ローバンさんは、窓際から外を眺めながら、話し始めた。
「ここへ来てから、何故か知らんが、変なことばかり起きていやがる」
それは、俺も思う。
「それは日を重ねるごとに起きるもんだ。運が悪いのか、なにかに巻き込まれてるのか……」
俺は、多分偶然が重なり合ってる、だけどと思う……多分。
「一人じゃ手に負えん。だから」
ローバンさんはこちらに向き直る。
追白な顔で、言葉を放った。
「ロベルト。行くぞ」
「? どこへ?」
「太守閣だ、さっそくだが向かうことにした」
「………」
太守閣に向かう。
俺とローバンさんが太守閣、そういえば、二人で言って………って。
「は?」
衝撃が走った。
「ちょ、ちょっと待ってください。ローバンさん」
「なんだ」
「太守閣に行く、って言いましたか?」
「あぁ」
ローバンさんが太守閣に行く?
(ローバンさん、指名手配犯だよな!?)
「ローバンさん……貴方、指名手配中、ですよね」
「あぁ、承知の上だ」
承知の上って……正体がバレるとしりつつ行くつもり、なのか。
(!)
まさか。
もしかしてローバンさんは、スリルを求める男だったのか?
「危険を顧みず、その地へと向かう。盗賊はいつもそうだ」
「そうなのか……」
「大丈夫だ。そう簡単にバレわしない」
「……本当ですか?」
疑心の目を向ける。
「任せろ」
その目に、自身の籠もった顔で返した。
それなら、仕方ないか。
まぁ、ローバンさんなら大丈夫だろう。
土壇場にも対応できていた、それに、盗賊歴も、人生経験も長い。
(まぁ、大丈夫か)
「ちなみに今からですか?」
「そうだな。用意しろ」
「あぁ……はい」
朝っぱらからドタバタドタバタ。
今日も大変だな。
‐‐‐
右渓谷
太守閣は目の前。
やはり、いつ見ても大きい所だ。
他の建物と、豪華さが違う、全くここだけ別の国かよ。
この大きさ、派手さに、ローバンさんも、見惚れている……訳ではなかった。
「ほぉー立派な建物だ」
もっと言葉を失うと思ってた。
もしかしたら、別にすごい建物とか見てたのだろうか。
「入口はあそこか。入って良いんだよな?」
「えぇ、まぁ許可は降りてますから」
人を連れて行くのはどうか分からないけど。
まぁ、許してもらえるだろう。
質問攻めをして、かつメモってくれる人だ、きっと大丈夫。
「さてと」
豪華な建物の前で、ローバンさんは腕を動かし、肩を鳴らす。
入る前のカッコイイ準備だ。
「行くか」
ローバンさんは答える。俺はそれに快く返事をした。
「えぇ」
さぁ、太守閣へと二度目のご来場だ。
「ふむ」
太守閣、3階から、男性が下にいる2人を見下ろす。
それは、ロベルトとローバンの二人。
「太守閣に入り、あの者に会うか」
その男は巨人のような体つきに、威圧のある顔。
そしてどこか人とは違った姿をしており、そして、なんと言っても。
男の天辺が光っている。
「上手く彼女に認められるか、勝負どころだな」
男はそう言って、2人を見つめる。
その瞳は涼しさと。
どこか、野心が伺える目であった。
‐‐‐
「入ったぞ……また、豪華だな」
「びっくりですよ」
二度目の来場なのに、内装が豪華すぎて驚く。
ここだけ、全然鍛冶の国じゃない。
雰囲気が全く違うんだよ。
「さて、目標のニヴェリーはどこにいるんだ?」
「3階ですね。登っていけば着きますよ」
「ふむ。そうか」
ローバンさんと、3階へと向かう。
その前に、一通り、一階を、見渡しておこう。
こんな豪華さ、あまり見れない。
(俺もこんな家に住みたい)
ちなみに、二階はいつもどうり、仕事天国でした。
「何日かかる量の仕事だ……?」
流石にローバンさんも、真顔で引いてた、ここの仕事量はおかしい。
仕事時間も長いに違いない……聖閤堂みたいに。
3階へとと向かい、階段を登る。
そこから、左側だったかな? 廊下を渡り扉が見えた。
あの先に、ニヴェリーさんがいるはずだ。
「ここか」
「はい」
「よし。仮面もバッチリ、服装も充分。行けるぞ」
「よし、では……」
最後の確認をした後、俺は扉をトントンとノックする。
中から……声がした、よし。
(入るぞ)
俺は扉を開ける。
中に入ると、そこには大量の資料が机に敷きつみられていた。
困惑した。
しかし、現実に戻るのは早かった。
「いるのか?」
「えぇ……えーっと、ニヴェリーさん? いますかー?」
「居るわよ」
おぉっ、居たのか。
全く見えなかった、紙のせいで。
「その声。貴方ね、今回はなんの用かしら? 人もとうさず直接来るなんて」
「あ、えーっと、少し用事があって……ローバンさん(小声)」
「分かってる」
俺が小声でローバンさんと話しかけると、ローバンさんは前へと名乗り出た。
「あんたに用があるんだ」
「聞いたことない声ね」
「えっと、俺の知り合いで」
俺がそう言うと、紙を避け二ヴェリーさんが横から顔を出してきた。いきなりだな……。
「あなた……」
二ヴェリーさんが、あかにも怪しいやつを見る目つきで、ローバンを見つめている。
「おっと。理由があってこの仮面は外せないんだ。胡散臭いと思うが、そこの所は我慢してもらいたい」
「そう、かしら」
仮面のことも話してる。
やっぱりこういう状況も慣れてるようだ。
「初対面として、お名前を聞いても?」
「ん、あぁ……バーンだ」
ローバンは自分の名前を偽り、二ヴェリーに伝えた、直接行ったら正体がバレるからな。
「バーン。バーンね、分かったわ」
二ヴェリーはバーンの名前を何度も口ずさむ、何回か口ずさんだあと、彼女は向き直る。
そして、くすっと笑い、口に手を当て一言言った。
「安直な名前」
「あ? ……!」
二ヴェリーの言葉とともに、ローバンに向かってなにかが飛んだ。
と、思ったら、ローバンの体に変な……光ったろーぷ? が巻き付いていた。
「なんだ!?」
「拘束魔法、うまく行ったわ」
「拘束、魔法……」
「は? どういうことだそれ」
「魔法よ」
二ヴェリーさんは拘束魔法と言った。
あれが拘束か、ロープと似ている……って、そんな事言ってる場合じゃない。
「二ヴェリーさん。なんの真似で?」
「フフ、正体はバレバレよ」
二ヴェリーさんは、不敵に笑い、そう言った。
あ、まさか。
「おっと。まじか」
「最初は、わからなかったけど。質問と答えで確信した。あなたは指名手配犯、ローバンで、合ってるわね?」
「……なるほど」
正体バレてるじゃん。
全然バレてる、しかも仮面が剥がれるじゃなくてじゃなくて、名前でって。
(たしかに安直だけどさ……)
「このまま、突き出そうかしら」
「おっと、それは困る」
「冷静ね、でも、そうしてる間に下の者が」
二ヴェリーさんが言いかけたとき、突如当たりが爆音とともに煙で覆われた。
いきなりだった、爆破魔法? と、思ったが違う……これは、煙玉?
「な、なに……」
「前が見えない、拘束も解けない」
一体何が起こった、…。
そして徐々に煙が晴れていき、辺りがよく見えてきた。
それと同時に目の前に立ちはだかる、巨大な物体。
ではなく、人が見えた。
「驚かしてしまったか」
「!?」
「あ、あんたは」
「あなたは……!」
巨人のような体つき、そしてどう足掻こうが自然に目がいくその頭。
彼こそ、ちょうど3日くらい前にあった男。
「あまり、こういうのは得意でなくてな」
タータス、謎多い人物であった。




