第八十一話「捕まったままじゃ居られない」
私はセイラン、ちょっと家の良い貴族の女の子。
今は、ロベルト・クリフと一緒に旅の途中……だったけど。
理由はわからない。
気づいたらここにいて、捕まっていた。
セイランは数日前から、この牢にて囚われていたのである。
外を散歩中、突然勢いよく路地裏に引き込まれ、息を止められる。。
突然の出来事に対応できず、そのまま意識が落ちていった。
気絶してしまった。
で、気絶から覚めるとこの牢に居て、外には看守がいた。
牢は薄暗い。あとちょっと臭い。
明かりはなんとか見える、中は暗いけど、外は明るい。
衛生環境は……悪い、ね。
だけど、ローバンさんの所に比べれば、これくらいは大丈夫。
ここ数日間は同じ日々が続いた。
ずーっと、牢屋の中。
どうにか脱出しようにも、隙がないので難しい。
看守は交代式で、時間ごとに変わるから。
今の看守は鬼人の女の子。
交代したあとの看守は、いかにも強そうな人間の男性。
(見る限り……どっちも強い。私じゃ、抵抗できない……かな)
看守はとても強く、倒して脱出! は不可能。
そこで、私は隙をついて脱出! 作戦を一時取りやめ。
今度は、寝ている時に、こっそり脱出! 作戦を開始することを決意した。
この作戦は非常に困難。
看守は、夜になると、少しの間睡眠を取る。
看守とともに、私も睡眠を取っていた。
しかし今回、看守が睡眠中にこっそりと起きる。
夜の行動のスタートってこと!
看守を起こさないように、こっそりと牢屋の入口を壊して、抜け出す。
プランは決まった、あとは実行するだけ。
私は一人で脱出する。
ロベルト達は、今頃私を探しているはず、迷惑をかけているから。
私は一人でもできるって所を、見せないと。
じゃないと、旅にはついていけない。
(だから、私は―――)
セイランは、拳を握りしめ、胸に当て、熱意を高める。
そして天井を見つめる。
「起きてたの」
と、ここで声がかかった。
誰かと思い、牢の入口を見てみると、そこには看守である、グラトニータたが立っていた。
彼女は鬼人でありながら、貴族のような服を着ている。
でも鬼人には、貴族なんていないはず。
(あ、もしかして。ここ最近流行ってる、ファッション? かな?)
「聞いてる?」
「あ、う、うん」
返事を忘れていた。
グラトニータはセイランを見て、不審に眉を寄せている。
(! う、疑われている……?)
「あ、えっと……」
「………」
「? あ、あはは……」
笑みを見せておけば、なんとかなるかな……。
「……はぁ」
その笑みを見て、彼女はため息をついた。
「私はそろそろ寝るから」
「!」
その言葉に驚いた、やっと看守が寝る。
つまり行動ができるってこと!
「あまり変なことはしないでよ、ここから出たり、とか」
「う、うん。分かってるよ」
「……本当?」
「うん」
セイランの目に偽りはなし。
ただただ、この時を待ち望んでいた目である。
「……おやすみ」
「あ」
グラトニータはそう言うと、そのへんの壁に持たれ、座り込む。
自慢の棍棒は横に置いておく。
そして、目を閉じる。
(………)
当たりは静まり返った。
(まだ……寝てないよね?)
目を閉じたからと言って、完全に眠りに落ちたわけではない。
あとちょっとだけ待ってみよう。
数分後。
吐息が聞こえてきた……ということは、寝た?
ゆっくりと近付き、顔を寄せ合わせる、近くで吐息が聞こえる。
(寝た……!)
寝た……これで行動に移れる。
彼女の言うことは破っちゃうけど、まぁ、仕方ないよね?
「さて……よーし」
手を擦り合わせ、牢屋入口に近づき、鍵の下まで来る。
(この鍵が難しいんだよなぁ……)
牢屋の鍵は普通の鍵ではなく、ある魔法がかかっている。
私の予想だと……。
・物質が頑丈になる魔法。
・魔法耐性の効果
・魔法妨害
多分、このくらいついてる。
私は経験があるからね、知ってる。
(これ解くのに時間結構かかるやつじゃん……)
う、うんうん、まだ。まだ時間はたくさんあるから。
大丈夫……看守さんも寝てるし。
こっそりやって、こっそりと抜け出すのが目標だから。
時間は関係ない。
(できるだけ早くやるけどね?)
脱出のため、鍵にかかった魔法の解除に取り掛かる。
こういうときのために、解除の魔法を学習してたんだ。
こんな所で役に立つとは、思わなかったけど……。
それはともかく……はい。
鍵に向い手を合わせ、魔法をイメージ。
すると手の先が光だし発光、少し眩しいけど大丈夫。
多少の光なら大丈夫なはず。
(これ、光で起きないよね?)
流石にね、それに、看守さんは向こうを向いて寝ているし。
大きい音を出さない限りは大丈夫……。
手先から現れた光は、鍵へと向う、光が鍵へと集まった瞬間。
牢屋を守る鍵の鍵穴に、魔法陣が浮かび上がった。
(これかな……うーん、うんうん)
魔法陣は紫色に光っており不気味、魔法陣自体、魔法を形成するための領域。
魔法を正確に、魔力を高めるための用途とされる。
これは人が、使う場合のみ。
もの、鍵。無機物に使う場合、その物質に魔法をかける。
かけられた物質は、魔法を取り込み、そのものにする。
魔法道具とかもそう。
そして、魔法道具は基本壊れない。
この2つが、鍵を開ける難易度を上げている。
これは全てのマジックアイテムに通じる。
(ここかな)
鍵の解除は、簡単ではない。魔法一つ唱えるだけでは、開かない。
鍵に魔法をかけ封じるのだから、難解なのは当然。
魔法を特には、その魔法を形成する所を解く、つまり壊さないといけない。
生命と同じ、核を解けば、魔法も壊れる。
しかしその核に行くまでに、魔法による妨害が入る。
これを解きながら行かないと、ダメ。
(これが難しい……)
常に集中、継続して魔法を解く、頭の回転力も必要、知識も。
(見たところ、この鍵にかかった魔法陣は一つ。良かった、これならまだ簡単な方だ)
「でも、色が紫だからなぁ……」
紫色の魔法陣は一つでも難しい。
解除魔法を初めて、5分が経過。
集中力は切れないから大丈夫、だけど解除が上手く進まない。
複雑だからかな……ここ、どうなってるんだろう……。
なかなか上手く行かないので、気分も嫌になってきた。
上手く行かない、上手く、行かない……。
それが、私の気分を損ねる。
「あっ」
失敗した、うぅっ……悔しい。
(紫色の魔法陣なんて、聞いてないよ……! 難しいって分かってたけど、こんなに……)
解除魔法をやり直す。
やり直しても成功するかどうか。
(……そもそも、なんで私は捕らえられたの……? なわでこんな事しないと行けないの、早くでたいのに)
心のなかで、愚痴をこぼす。
言っても無駄だけど、そうでもしないと気分が晴れない。
(やり直して、成功するのか)
そんなことを疑問に思いつつ、解除魔法を行う。
そうしたらまた、失敗した。
繰り返しだ、ループしてる。
うん………1回辞めよう、意味ないから。
魔法をやめ、無言で立ち尽くす。そして、精神は整える。
大丈夫、大丈夫! 私、落ち着け、焦るな怒るな……冷静に、ふぅ……。
「スッ―――」
ひと息深呼吸、そして、心を落ち着かせる。
さっきの思いは……無かったことにしよう。
(私は純白)
精神を統一させ、心をなだめ落ち着かせる。何事も、焦らず生きる。
これは、誰かが教えてくれたこと。
これを生かし、次に進もう、うん。
「よし!」
気持ちを覚整え、声を出し、やる気を高める。よし、もう一回。
「ん……」
その時、牢屋の外から声が聞こえた。その声で私は硬直してしまった。
その声は看守の声、間違いない……まさか、起きた!?
目を閉じ背筋を伸ばして硬直、看守の声を待つ……。
しかし、いくら経っても来なかった。
片目だけ開けてみる、片目から見える景色は至って変わらない静かな空間。
看守も横になって寝ている、棍棒も倒れている。
もちろん。牢屋も開いてない。
(気のせいだったのかな……?)
なんにも変わらない、しかし今回は好都合。
看守さんも起きなかったし、今は気持ちも快い。解除に取り掛かろう。
もう一度、解除に専念だ……失敗するかもしれない、成功はないかも。
だけど。
「やってみなきゃ変わらないー!」
「ん」
「ハッ」
あ、危ない危ない……大声は出さないように、よし。
手に魔力を集中させ、再度。鍵についた魔法の解除に取り掛かる。
今度は時間をかけて、慎重に他のことは考えない。
早くみんなに、ロベルトに会うために……ハッ!?
心に決めた瞬間に、他のことを考える。
これは人共通のことだろう。
(やろう、さぁ)
光が発光し、魔法陣が浮かび上がった。
対する魔法陣は、紫色。
魔法陣の中でも、難しい方。
それに私は初挑戦、一度もやったことが無い。
だけど、だからといって、諦めるのは早い。
私はやる。ここから脱出するために、してみせる。
(捕まったままじゃ、居られない!)
足手まといには、なりたくないから。
‐‐‐
「――こういうことがありまして」
「ふむ」
俺は現在、太守閣にて、ニヴェリーさんと話している。
あの貴族……ネルブレムとの戦闘から、太守閣へと戻った。
そこで、介護終わりのニヴェリーさんと立ち会う。
そこで突然、『なにかあったの?』と聞かれた。
俺の様子を察しての言葉だろう。だかは、俺は起きたことを説明した。
ここで今に至る。
「闇神ね、にわかに信じがたいことだわ。神が、この国で企みを働いているなど、到底……」
ニヴェリーさんは、あまり信じにくいとの事だ。
それはそうだ、いきなりこんな事言われて、信じれないだろう。
俺だって、思う。コイツは頭がおかしいやつだ、と。
「しかし、これは本当に起こったことで、嘘じゃない」
「真実、で、間違いないかしら」
「あぁ」
俺の言葉を聞いて、ニヴェリーさんは考え込んだ。
今、周りで起きてる事、石。
セイランの失踪。
そしてネルブレムとの戦闘、企み。
これは異常だ。
「……その目。事実のようね」
ニヴェリーさんは、俺の目を鋭く捉えそう言った。
心も同じ、俺の目は本気だ。
そうカッコつけてると、ニヴェリーさんが紙を持ち出す。
「手配書を書くわ。貴方にその人物の特徴を教えてもらえないかしら?」
とのことだ。
なるほど、手配書か。
それなら、あの男もなかなか外には出られないはず。
つまり、企みの幅が狭まる。
良いアイデアだ、納得。
「分かりました」
「えぇ、じゃあさっそく」
そしてまた俺は、質問攻めにあった。
難問か話して、ニヴェリーさんに特徴を教えた。
完璧ではないけど、いい所まで行ってるかな?
「ふむ……はい。さて、難問も質問して、時間を取ってしまったわね」
「いえいえ、時間は充分なので」
「あら、そうなの。私にもその時間、分けて欲しいわね」
「えーっと………」
そうだった。
仕事人の前で時間は禁句だったな。
ニヴェリーさん、ただでさえとてつもない仕事量の持ち主なのに。
これは……すまない。
「手伝ってくれてもいいのよ?」
「遠慮します」
「即答」
即答しないと、強引にやらさせるからな。
グラスさんの時に習った。
「さて、後はこれを……下に送れば、手配書はもうすぐよ」
「おぉ……」
手配書が出来るのか。
こうやって、俺自身が頼んで、手配書を出してもらう。
日本じゃ、こういうのは無いな。
あ、あとそうだ。
手配書を書くならもうひとり……いや。
ひとりじゃない2人だ、セイランを忘れてた。
「手配書ですが……追加。してもよろしいでしょうか?」
「? えぇいいわ。明日は無理だけど、構わないかしら?」
「大丈夫です」
そう、と言ってニヴェリーさんは、先程の紙を横に置き、物で固定。
そして棚から新たに一、二枚、紙を出す、執筆出来るように。
(あ)
俺は思った、まただ、と。
そこから2回。
長い質問攻めを食らうことになったのは、察しのこと。




