第七十四話「迫る敵」
「早い所帰ろう」
タータスさんから注意喚起されているからな。
盗賊……とか、あった襲ってくるヤバい奴らだし。
いや、ローバンさんも盗賊なんだけどな。
とにかく。
危ない目に合う前に、早い所宿に戻るとしよう。
こんな真夜中に戦闘とか、したくない。
あたりは真っ暗。
まだ目が慣れていないのだろうか、先が見えない。
それに加えて、この夜の寒さ。
早い所戻ろう。
凍え死にたくないし、盗賊にも会いたくない。
そういえば。
ローバンさんは、夜、大丈夫なのだろうか。
「道わかります?」
「当たり前だろう」
「前、見えます?」
「俺は夜の中で、何年も暮らしてきたからな。目は良いさ」
流石に道は分かるか。
にしても、このくらい中、よく前が見える。
盗賊の力なのだろうか。
それとも、慣れか。
俺はそう簡単に慣れはしない。
今日は、月も雲で隠れてるからな。
来た道を辿り、宿へと急ぐ。
宿とタータスさんの家は、同じ渓谷にあるので。
道を辿るだけでよい。
橋を渡らずに済む。
でも、あの宿。
結構迷いそうなところにあるからな……。
路地は避けられないだろう。
「ここを進んだ先に路地がある。暗いがそこが近道だ」
やっぱり路地だ。
本当に行きたくない。
しかし当然、そんな事言えるわけなく。
渋々、ローバンさんの後を追い、路地へと向かうことに。
近道してまで、危険を犯したくないんだがな。
(今言っても、遅いか)
‐‐‐
路地は真っ暗。
先程と同じく、前が見えない。
しかし、それを見かねたローバンは、松明をつけるとのこと。
「火をつければ、辺も見えるだろう。問題は起こるが……」
良かった。
これで、あたりが見える。
あと、温かい。
炎で照らした灯りで、先へと進む。
洞窟探検を思い出す。
しかし、松明をつければ問題も起こる。
それは……盗賊に目当てにされること。
このくらいなかの松明の灯り。
さぞ目立つことだろう。
なにせ、暗い中、一つの灯りだ。
加えて、俺たちは人数が少ない、ローバンさんと俺の2人だけ。
格好の的だろう。
絶対、有り金を要求してくる。
「静かですね」
「あぁ、嵐の前触れみたいな静けさだ」
今のところ、気配はない。
だとしても、油断はできない。
いつ現れるか分からない。
だから、あたりを索敵する。
(自分的には、このままなにも起きなければよいのだが)
2人は歩く。
静かな道をひたすらに。
夜は長い。
暗く明かりもなく、冷たい。
その夜を、盗賊たちは好むもの。
盗賊たちにとって夜は武器。
夜にこそ、盗賊たちの本領を発揮できる。
夜だからこそ、できる事がある。
盗賊達は見る。
一つの灯火を、今。
一斉に獲物を捉える、鋭い目をした、盗賊たちが。
このくらい夜の中の路地を、拠点とする盗賊たち。
今、盗賊の中のひとりが、弓を構える。
徐々に狙いを定め、松明を持つ男の背中を狙う。
(ヒヒヒ)
見せつけてやるのだ、
この夜の中、出歩く怖さを。
盗賊たちの恐ろしさを。
有り金と小道具を奪い取り、盗賊たちの強さを見せつけてやるのだ。
盗賊たちは、二人を見る。
未だ、こちらに気づく様子はない。
なにも心配はいらない。
松明を持つ男の力気は、苦戦するほどでもない。
盗賊の一人は感じ取っていた。
ただ、一つの疑問として、あの男の後ろにいる若い男。
あいつからは力気も魔力も。
なにも感じない。
人形のように、全くと言って気が感じられない。
この異質な男は一体………。
(まぁいい)
男は弓を男に向ける。
矢に全身を集中、狙うは頭。
脳天に矢を打ち込み、一撃で仕留める。
これこそが盗賊の快感。
(さぁ………いまだぁ!)
今、矢が放たれた。
音もなく矢は放たれ、松明わ持ったローバンのもとへ向かう。
そしてそのまま音もなく、刺さる。
事はなかった。
「!」
ローバンはすぐさま、剣を取り出し、後ろから迫る矢を斬り落とした。
一瞬の出来事であった。
素早い剣捌き、強者。
「なに!?」
「なっ……!?」
ロベルトと盗賊は。
この出来事に驚愕した。
何だこれは。
なぜ、ローバンさんは矢を斬り落とせれたのか。
矢に気づき、素早く斬り落とす。
まさか、そのくらいの技術があったのだろうか。
それよりも!
「バーンさん!」
「ロベルト、敵だ。やりたくなかったが戦闘は避けられないらしい」
(えっ、なんだって)
ロベルトは、あたりを見回す。
暗闇の中でいない、と思った。
しかし、違った。
暗闇の中で、足音が響く。
一人じゃない、何人もいる。
これは、まずいことになった。
そして、姿が見えてきた。
「ヘヘっ」
「刺す」
「おい、金、置いてけ」
盗賊たちが、腰や、懐から剣や短剣を取り出し近づいてくる。
殺す気満々のようだ。
盗賊たちは、俺とローバンさんの二人を狙っている。
おっさんもいれば、ちょっと若い男もいる。
よりどりみどりだ。
「バーンさん、あの盗賊、お知り合いで?」
「いや、残念ながら違うな」
カサドラ盗賊団の一員ではなかった。
つまり、この国を拠点とする、野良の盗賊団か。
ならば、問題ない。
俺は背中の剣を抜き、片手に持ち、盗賊たちに向け構える。
「盗賊共、舐めるなよ」
ローバンさんの団ではないのならば、問題はない。
相手は野良。
数々の人々を、ここで襲ってきた。
容赦はしない!
「! ヒヒヒ」
盗賊達は、未だに気色悪い笑顔を浮かべ、笑っている。
気味が悪いな。
「ロベルト、準備はいいな」
「もちろんです。」
「よし。ロベルト、今回は殺さずに気絶、もしくは戦闘不能にするまで叩きつけろ」
「結構、惨くなりますけど」
「例えば?」
「土魔法で、四方から高速で岩をぶつけます」
「痛そうだな……」
まぁ、しないけど。
「なに、喋ってやがる! かかれ!」
盗賊達は脇目も振らず、襲い掛かってきた。
一斉攻撃だ。
「さて、片付けるぞ」
「はい」
俺とローバンさんは同時に飛び出した。
その方向はどちらとも別。
前と後ろで、背中を預けた。
前には盗賊3人。
それぞれ剣、短剣、剣。
相手をみるからに、技術はそれほどではないが。
戦闘経験は高いだろう。
そして、気絶、戦闘不能にする……ここは。
俺は飛び出したと当時に、持っていた剣を、上空に高く投げた。
盗賊は気づいていない。
しかし、ただ、投げたわけではない。
(俺が持っ武器は……)
右手に土魔法を込める。
武器を形成するんだ………形成する武器は。
固く強靭。
そして、打撃武器。
(そう、棍棒だ)
打撃の武器なら、お手の物よ。
突然の魔法による棍棒。
それにより、盗賊は大いに驚いた。
なにせ、剣を持っているのに、魔法を使ったからだ。
「魔法!? まさかコイツ、まほうけぶっ……!」
盗賊が言い終わる前に、棍棒で顔面を殴り飛ばす。
見事クリーンヒット。
口から音を立て、後ろに飛んでいった。
「コイツ!」
盗賊は攻撃を仕掛ける。
ここはさすがの戦闘経験。
武器の使い方は慣れているようだ。
棍棒と、剣が交差する。
(良かった、石で作っておいて)
土で作っていたら、壊れていただろう、危ない。
ここで、上空に飛んだ剣が、落ちてくる。
それを、見事キャッチ。
棍棒で強引に、盗賊の剣を押しのけたあと。
キャッチした剣の、手持ち部分を、勢いよくみぞおちに入れる。
衝撃で、盗賊は、鈍い声をあげたあと、地面に倒れ伏せた。
「………コイツ」
「ふざけた真似を!」
「ほぉ」
ローバンも、その状況を巧みなステップで見ていた。
「どこ見てやがぅ゙ぐがっ!!」
ローバンは、素手での近接戦2持ち込んでおり。
相手との距離感は掴んでいる。
そして、衰えた所に、剣の持ち手部分で、盗賊の腹を突く。
ドスッという音がした。
2方向。
ロベルト、ローバン。
同時に攻撃したのだ。
(結構深く入ったか)
「コイツラやべぇ」
「言ってる場合か、早く!」
「させるか」
ロベルトは、盗賊が驚くスピードで懐に迫る。
ここでローバンと向き合う。
「ロベルト、行くぞ」
「! はい!」
盗賊が、二人の後をおう。
それと同時に2人は交差する。
交代だ。
「ッ……!」
「!」
剣に魔力を込める。
込めるのは風の魔力。
相手は殺さない、ただ戦闘不能にするだけ。
地面に足を踏み込み。
剣を勢いよく振った。
「真空波!」
剣が振られるとともに。
凄まじいほどの風が、敵を襲う。
「ぬぁぁあ!!?」
「なにぃぃぃ!!」
盗賊は、衝撃と、凄まじい風により、飛んでいき。
数十メートル先の、地面に転んだ。
風の威力が強かったか、起きれないようだ。
……あ、ローバンさんは!
「終わったぞ」
「え」
ローバンさんの方をみてみる。
ローバンさんの奥には、盗賊達が、口から血を流して、倒れている。
全員がだ。
(もう、終わっていたのか……)
「ロベルト、お前はどうだ」
「え、えぇ、今終わりました」
「ふぅ、終わったか。これにて、落着というわけだ」
一応、これで、全員か。
「ん、まだ動いてるぞ」
「なに......」
俺は風で吹き飛ばした盗賊を見る。
気絶した、と思っていたがまだだった。
まだ、少しは動けるようだ。
だが、ここで動いても、変わらない。
すぐに、気絶させる。
俺とローバンさんは一度見合った後、同時に盗賊めがけ走り出す。
ソレを見た盗賊は腰を抜かし倒れ込む。
「ッ......! 来るな!」
「やめろっ!!」
来るな。
そう言われても、こっちも譲れない。
見てると可哀想だが、俺達を襲ったんだ。
覚悟してもらおう。
「ッ......!?」
ローバンは走ってる途中、感づいた。
前から漂う、異様な殺気を。
いち早く、感づいた、ただごとではないと。
「ロベルト!」
ローバンは呼びかける。
「!?」
「下がれ、危険だ!」
ロベルトはその言葉を聞き驚いた。
危険?
なにがだ、盗賊がか?
いや、危険も微塵もない。
一体何が.........。
「上から来るぞっ!」
う、上。
ロベルトは一旦後ろ浮きにジャンプし、上を見る。
そして気付いた。
上から降り注ぐ、銀の光を。
「おい、なんだ!?」
「なにがおこって......!!」
その瞬間。
盗賊がいた辺り一変に。
鋭い銀の光が、綺麗に降り注ぎ。
盗賊たちを細切れにした。
「なっ......!」
「なんだ......」
いきなり盗賊が、あんな。
細切れ、ありえない、何が起こった。
前方を見る。
盗賊の死体の周りに銀色の光が浮いていた。
あの光は、一体......。
ん?
銀色の光をよく目に捉える。
ここでロベルトは気付いた。
これは、光とは全く別のもの。
(これは......針? いや、糸......か?)
銀色の光は、針、または、糸のようにも見えた。
「ロベルト、無事か」
ローバンが駆け寄ってくる。
怪我は、負ってなかった。
「えぇ、なんとか」
だが、いまのは一体。
なぜ、いきなり盗賊たちが細切れに......。
わけがわからない。
(......それよりも)
激臭。
人間の死んだ臭い。
とんでもない臭いだ。
きついな......。
とっさに、手で鼻をつまむ。
まだ臭う、やばい。
だが、一番の問題は、この死体を、どう処理するかだ。
このまま放置しておくわけには行かない。
「この死体、どうしましょうか」
「さぁな、魔法でなんとか出来ないか」
魔法。
死体をどうにかするならば。
水魔法、風魔法、炎魔法、土魔法が思い浮かぶ。
あ、待て。
風魔法はダメだ。
臭いが国中に蔓延してしまう。
想像するだけで、壮絶とするな。
「火葬にしときます?」
「燃やすのか......まぁ、それが一番手っ取り早いか。死体を処理するにしても、辺りに蔓延しな......!」
突然、ローバンさんの言葉が途切れた。
ローバンさんは死体の方向を向いている。
俺は、疑問に思った。
「ローバンさん?」
「なにか居る」
「え?」
「見ろ。あれは誰だ......」
ローバンさんの言葉どうり、死体の方向を再度見る。
そこには......人がいた。
(は......?)
死体の方向には、貴族を思い浮かべる格好をした、人が居た。
いや、あの格好は遺族そのもの。
男の貴族、漫画で出てきそうな風貌。
冷たく表情のない顔だ、でも、なぜここに?
「誰だ」
ローバンはすぐさま、その人に向い、強い言葉を放つ。
警戒している、それもそうか。
ローバンさんの言葉に対し、男は初めて、言葉を話した。
「私は......闇のもの」
「......なに?」
......なんだって?
闇の者だって? 闇って言ったら、あの闇か?
闇、思い化べるは闇神と、その部下。
こいつがそうなら、あのピエロとイケメンの仲間ということになる。
充分に警戒が必要だ。
「名を名乗れ」
「今は、その時ではない。時間をおいて話そう」
「なんだお前は......闇の者とか言ったな、それはなんだ」
ローバンが質問する。
闇の者、闇神の者のことを指すのだろう。
俺は知っている。
「私は闇神に忠誠を誓う闇の者。闇を崇拝し、闇の道を作る者。私の計画はすでに始まっている」
「計画......?」
「私は、命により。この国を混沌に招き入れる、そのつもりだ。ロベルト・クリフ、お前なら分かるであろう」
「!?」
いきなり名前を呼ばれた。
俺の名を知っているということは、やはり。
「知り合いか」
「いえ、ただ間接的に、関係があります」
「そうか」
ローバンは少しだまりこむ。
その間に、男は話す。
「ロベルト・クリフ、石を持っているだろう。渡してくれないか?」
「なぜ、渡す必要が?」
「その石が必要だからだ」
「なるほど......だが、、答えはNOだ。理由はお前は怪しいこと。そして、得体のしれないやつに、この石を渡すわけがないからだ」
「アイツのときもそうだった。お前は警戒深いようだな」
男がゆっくりとこちらへ歩みを進めてくる。
それに気づき。
ローバンは素早い動作で男に剣を向ける。
「......それ以上近づいてみろ」
ローバンは剣を横に振る。
「怪我ではすまんぞ」
脅しである。
こうすれば、大抵の敵はビビって逃げていくだろう。
しかし今回は違った。
「やってみろ。その前に私の鋼糸が、お前の首を飛ばす」
対抗してきた、怖い。
それよりも、鋼糸といったか。
鋼の糸というわけか。
これはまた、厄介な能力だ......いや、魔法か?
あのイケメンにピエロの時もそうだったし、よくわからない。
二人の間に、静かで異様な空間が生まれる。
どちらも相手を見ている。
異質な光景、近寄りがたい。
(......!)
俺は息を飲む。
そして。
「はぁ、このくらいにしておこう」
「?」
男がため息をつき横を向く。
諦めてくれたか?
「今回は退こう。私は忙しい。そうだ、明日、私の刺客がお前のところに来るだろう、一筋縄では行かないだろう。
注意はした、私はここで退くとしよう」
「! おい、まて!」
男は手を巧みに回すと。
周りに黒色のオーラが出現、男を飲み込み、消え去った。
あれは、どういう原理で......。
「居なくなったか。ヤツは刺客といった、こりゃ、とんでもないことに巻き込まれたな」
薄く笑いながら、そういった。
俺は結構前から、関わってるけど。
「さて、帰るか」
「はい......あ、死体は.........」
「あぁ、気づいたらなくなっていた。訳がわからんな」
本当だ。
確かになくなっている。
どういう事だ。
「一体これは......」
「さぁな、まぁとりあえず。宿へ戻るとしよう」
そうしよう。




