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空中要塞グレイシアス   作者: ホワイトボックス
第五章 土の国編
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第六十九話「お礼のためにはまず家に」

 三時ごろ。


 辺りはまだまだ明るい、空気は土の国の鍛冶と地脈で、一概に綺麗とは言えないが。

 心地よい。

 でも、植物とかは、見渡す所ない。


 風の国とは全く環境が違う。

 そりゃ。山や森林が広がる風の国と、渓谷ではな。


 そんな土の国に居る、俺。

 俺は今、三時間ぶりに地脈から出てきたばかりである。

 

 俺をここから救い出したのは、筋肉質で目立つスキンヘッドの男、『タータス』さん。

 命の恩人である。

 こういう事は、初めて経験した。

 異世界に行ってから初である、前世ではこういう事は一切なかった。


 もしかしたらだけど、異世界では、こういうイベントが起こりやすいのかもしれない。

 まぁ、よくは分かってないが。


 おっと……その前に。

 タータスさんにお礼をしなければならなかった。


「タータスさん、助けてくれて……ありがとうございます」


 俺は相手に感謝の念を込めて、日本流のOJIGAを出す。


 相手への感謝にとって、とっておきの行動である。

 異世界では、多分ないけど。


「お? お、おぉ、こちらこそだ、だが、そんなにかしこまらなくていいぞ? 貴族じゃないんだからな」

「あれ、そうですか?」

「あぁ、人を助ける、まぁ当然のことをしただけだ」


 人を助ける、これは簡単なようで、難しい。


 やっぱり、いい人だ。

 謎が多いけど、いい人に変わりない。


 おっと、危ない、相手のペースに乗らされていた。

 こちらに戻らないと。

 今の俺は、相手にお礼を出す、それを目的としているんだった。


「そこで、なんですが」

「うむ?」

「率直に言います」

「うむ」

「お礼をさせてください」


 よし、言えた、最初の目的は達した。

 あとは、行動に移すのみ。


「お礼?」

「はい」


 タータスさんが、疑心気に聞いてくる。

 

(もしかして………ちょっと怪しかったか?)


「お礼って、あのお礼か?」

「あ、はいそうです」


 なんか、ちょっと会話が………。


「ハハハ、助けただけだ、お礼などいらんぞ」

「いえ、『助けてもらった恩』があるので、ぜひとも礼を」

「そこまでしてか?」

「はい」


 全力を突き通している。

 断られても、なんとしてでもお礼を……。

 恩を返す。


 それが、この国の神との協力に繋がるはず。

 良いことをしていたら、神に気に入られる。


 そんな話を、小さい頃本で読んだ気がするからな。


「……何でもいいのか?」

「お礼なので、何でも」


 なんでも、という言葉に抵抗はあるが、まぁ、致し方ない。


 タータスさんは腕を組み、少し考える仕草をしたあと。

 俺に伝えた。


「なら、俺と共についてきて欲しい」

「はい、えっと……どこへ?」

「それは行ってみれば分かる、受けてくれるよな」


 場所は不明。

 タータスさんと同行。

 うん、行こう。


「もちろんです」


 清く受け入れた。


「よし、ついてきてくれ」


 そう言って、俺を催促しながら歩き始めた。

 それを追い、ついていく。


 どこは行くのかは謎、しかし、俺はただついていくだけ。

 あ、でも………ローバンさん達は、心配しているだろうな。



‐‐‐ 



 移動中、タータスさんの事について考えていた。

 考え事は、もちろん地脈。


 タータスさんは地脈に長い間潜っていた。


 その期間。

 なんと、七年!


 タータスさん、見た所荷物は持っていない様子。

 持っているのは、服と......魔法くらいだ。

 こんなんで、七年も地脈に潜っていられるか?


 無理な話だ。


 いやまて、もしかしたら、丁度使い切ったとか。七年分の荷物を最近使い切ったとか。

 いや、流石にない……。

 そもそも、あの人は年月を知らなかった。

 ならば、その時間分の荷物など用意できないだろう。


(うーん、なにかあるな)


 この人自体、謎の人物、会ったばかりだけど。

 魔力は、普通、力気は強い。

 少し魔法が使える典型的な戦士タイプだ。


 この世界だと、そこら中にいる、ごく一般の人物。

 しかし、ごく一般の人物が、長時間地脈に潜れる訳が無い。

 考えたら分かるだろ。

 

 ここの所、本人は何も言ってない。

 ならば………何かを隠している。


(これは確かなることだろう)

 

 今は詮索しないが、いずれ確かめてみよう。

 謎を解かないままにするのは、嫌いだからな。

 一応『重要リスト』に記録しておこう、俺のメモ帳代わりだ。


(うおっ、凄いなここ………)


 移動中、土の国の様々な景色を知れた。

 

 大きく深い渓谷に、地脈。

 土の国の鍛冶技術。

 その国独自の、文化。


 他にも他にも、観光地としての魅力は沢山だ。


(ふっ、観光中のようだな)


 タータスは、ロベルトに気づいて、わざと歩幅を合わせ歩いている。

 ロベルトにとって、土の国は初。

 初めての国に来た興奮。

 それを、タータスは理解しているのだ。


 トンネルのような場所を越え、広く、渓谷からしたが見える所までやってきた。

 下は海、昼の時と変わっていない。

  

 そういえば、ここは今、どの辺りなのだろうか。


「タータスさん、ここって......」

「あぁ、場所だな......ここは左渓谷(さけいこく)の上層、今、右渓谷(うけいこく)に向かうため、橋へいく所だ」

「う、うん?」


 聞いたことがない単語に、疑問を浮かばせる。


 さけいこく......うけいこく?

 な、なんなんだ、それは、初耳だ。


「うん......? これも知らないのか?」

「まぁ......はい、初耳で.........」


 申し訳無さに、視線をそらす。

 多分、今俺は、バツの悪そうな表情になっているだろう。

 頼ってばかり、面目ない。


「まぁ仕方ないさ、初めてだ......で、渓谷のことなんだが、そこの海があるだろう?」


 タータスさんは指で、渓谷の下に見える海を指差す。

 通りの海だ。


「あの海を中心にして、2つの渓谷に分かれている。今いる場所が左渓谷で、向こう側の渓谷が右渓谷というわけだ。どうだ、記憶に刻んだか?」

「あぁ、はい、一応は」

 

 2つの渓谷、分かりやすいようにこうやって名付けられているのか。

 うん、いい方法だ。

 名前があったほうが、分かりやすい。


「ならいい、さて、そろそろ向かうぞ」


 タータスさんは足を進める。

 俺もそれに次ぎ、後を追いかけていく。


 あとから聞いた話によると。

 この国でもよく目立つ、大きく高い展望台、そこにデカデカと建造されている黄金の鳥の向いている方向で。

 渓谷の右左を決めるんだとか。


 来たときから気になっていたが、なるほど。

 あの展望台はそういう役割も、持っているのか。



‐‐‐



「さて、ついたぞ」


 タータスさんの後を追い、ついに目的の場所までたどり着いた。


「ここは......」

「俺の家だ」


 タータスさんに案内されたのは、木造で建築された一軒家だった。

 

 丸太で支えれれた木の家で、屋根と二階付き。

 森の中の新鮮な木で作ったのだろうか、他の木造建築より、一段と材質が綺麗だ。

 

 そして何よりも。

 この家、木の建築物......。

 どこか、なつかしい気持ちになる。


(.........そうだ)


 これは、俺の家に似ている。

 俺の家も、自然の中の木を使って建築されていた。

 あぁ、懐かしい......妹、父母との思い出が蘇る。


「ロベルト」

「! はい」

「今から、ここに入るんだが......少し気をつけてくれ」

「気をつける」

「子供がいるんだ」

「あっ」


 そうだったのか、まさか子供が居るとは。

 どうもそうは見えなかった。


 というか、七年も子供と会ってないって事になるのか。

 それ、親として大丈夫なのか。

 育児放棄になる......あ、いや、タータスさん、一応世間から行方不明として扱われているかもしれない。


「それじゃ、まずは俺から入る、ロベルトは後からよろしく」

「了解」


 俺の返事を聞いた後、タータスさんは行動に移る。

 素早く手慣れた手つきで、土魔法の鍵を作り出した。

 そしてソレを玄関の鍵穴に入れ回す。


 するとアラ簡単!

 簡単に玄関の扉が開いたではありませんか。


 俺の予想だが、鍵を開けるときの上級テクニックの一つ、土魔法で鍵を作るだ。

 これは鍵穴を覚えないと行けないし、面倒。

 しかし、使いこなせれば、家の玄関はもう安心である。


(まさか、この技術をタータスさんがマスターしていたとは......恐れ入った、尊敬に値する)


「さて、入るぞ」

「はい」


 ゆっくりと扉を開け、顔を少しだけ出し中を見る。


 一般的な廊下だ。

 玄関には誰も居ない。


「留守......でしょうか」

「いや、台所に居るはず......そうだ、ベルがあった」


 ベル......というと、玄関の鐘のことか。

 なるほど、これで呼べばいいかもな。


「よし、じゃ、鳴らすぞ?」

「......どうぞ」

「うむ.........」


 タータスさんがベルを鳴らした。

 ベルを鳴らしたのだが、以外に音が大きく、俺も驚いてしまった。

 鼓膜が......破れるぞ......。


「は〜い」

「!」


 すると、家の奥の方から、女性の声がした。

 多分......状況的に、タータスさんの奥さんだろうか。

 だとすると、約七年ぶりの、家族の再会になるのか。


(俺いていいのか?)

 

 邪魔じゃないか?


 家の奥から足音がこちらに迫る。

 

 ついに、再会の時。

 タータスさん、筋肉が強張っている。

 あ、やばい、緊張する。


 そしてその時が来た。



「は〜い、どちらさ......ま......」


 女性の人は俺達を見た瞬間、石のようにピタリと動かなくなってしまった。

 動画の再生を停止したように。

 時でも止めたかのように。

 俺達を直視して、固まっている。


「な、長い事、待たせてしまったなエイミー.........ただいま」


 タータスさんが慎重に声を掛けるも、反応なし。


 どうしたものかと、思っていたその時。

 なんと、いきなり女性が後ろへと硬直して倒れ伏せたのである。

 その時の衝撃音は凄まじかった。

 

 いきなりの出来事。

 驚愕したが、動くのは速かった。


「エイミー!」


 タータスさんが大声をあげ、勢いよく、女性の元へと駆け寄る。

 

 タータスさんは、女性、エイミーさんを揺さぶっているが、起きることはない。

 エイミーさんは、まるで漫画のように目をくるくる回している。

 これは......気絶状態だろう。


 それはまずい。

 早くなんとかしないと。


「と、とりあえず、ソファに寝かせよう!」

「運ぶの手伝います!」

 

 とにかく、この硬いところじゃまずい。

 なので、ソファに寝かせようとのこと。

 

 慎重に、慎重に運べ、落とすな。

 絶対に落としてはいけない。

 心にそう書き込むんだ。


 タータスさんと協力して運び、なんとかソファに寝かせることに成功。

 その後、タータスさんが手当をした所、命に別状はないらしい。


 ふぅ、良かった良かった。

 事が公にならずすんだ。


 俺は、そこら辺の椅子に腰掛ける。

 タータスさんは真剣な様子で、エイミーさんを見ている。

 心配が、凄い......それもそうか。


「......手伝い、すまんな」

「いえ、そんなことは」


 思うように、話ができない。

 やはり、衝撃だったのか......。


 そりゃそうだ、大事な人が倒れたんだ、衝撃どころではない。

 

(大丈夫だろうか)


 椅子に座りながら、指を絡める。

 前のめりに座り、床をただただ見つめる。

 ......息抜きしないと。


 辺りに沈黙が流れる。



「......うぅっ」

「「!」」


 その沈黙を破ったのは、タータスさん、いや違う。

 その大事な人、エイミーさん出会った。


 意識が戻ったのだろうか。

 椅子から二人を見つめる。


「エイミー......エイミー」

「う......あ、ほんとに......」


 どうやら、無事目が覚めたようだ。

 

「本当に......げ、げんじつ?」

「あぁ、現実だ、長らく待たせて......すまない」

「あ。あぁ......うぅっ......ひぐっ」

「大丈夫だ」


 タータスさんは、エイミーさんの手を握り、熱心に語りかけている。

 次第に、エイミーさんも意識が戻ってきている。


(俺は邪魔だな......)


 ゆっくり、バレずに立ち上がり、廊下へと向かう。

 廊下に行き、階段近くの壁にもたれかかり、一呼吸。

 今は二人の時間邪魔はしない。


(幸せな空間、七年ぶりの家族との感動の再会に、俺はいらねぇ、静かに、クールにそのばから退場するぜ)


 本当は一回休みたかったんだけどな。


 それよりも......微笑ましい光景だ。

 心が暖かくなる。

 うん、なんだろうか......この気持ちは。


 まぁいい、俺は去るだけ。


(そう、できるだけかっこよく、物語のあるシーンの、ある紳士風に立ち去る......主人公だけど、関係ない......クールだぜ、こいつは)

 

 ロベルトは、水魔法と、土魔法を器用に組み合わせ、水入りのコップを作り上げた。

 今回はうまく言った。


(無味)


 水を飲んだ。

 しかし、味がしなかった。

 まぁ、疲れが原因だろう。


 ともかく、二人が終わるまで、玄関で待機しておこう。



 

魔力=おもに魔法使いなど魔法を使う場合の総合力量。

力気=おもに戦士など近距離、遠距離の物理戦闘をする場合の総合力量。


測る時2つの気が感じるので、これを間違わず、分けて観測出来きいる、これがこの世界の一般。


気を測るのは、戦士よりも、魔法使いや僧侶のほうが得意です。 

理由として、魔法使いにとって、己の気、相手の気が重要だからです。

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