第六十八話「地脈から出よう」
「ハッ!? 今何時!?」
目が覚めた。
どうやら俺は寝ていた………いや、気絶していたようだ。
時間は………。
いや、無いな、それにここは……。
俺は起き上がり、周りを見る。
すると目の前には巨漢なスキンヘッドの男。
地面を移動する鈍い音が聞こえる。
(なんだ……?)
俺はこの時、初めて自分のいる所を目にした。
自分がいる場所。
それは木、木でできた荷台。
なるほど、荷台に俺を乗せ、運んでいる途中ということか。
「ハッハッ、起きたようだな」
俺を運搬中の巨漢の男が話しかけてくる。
あ、思い出したぞ。
この人、俺が助けた? 人だ。
筋肉質な体に、目立つスキンヘッド、間違いない。
「今は午後2時だ、あれから結構気絶していたんだぞ?」
「そうですか………あの、どこへ向かって?」
「上、地脈の外だ」
あぁ、なるほど。
地脈の外へ運んでくれているのか。
それはありがたい、助かった。
俺は、床、木の荷台を手で触る。
いい作りだ………あれ?
「この荷台、どこから?」
「作った」
「え?」
「魔法で作った」
魔法で作った。
木の魔法……生命の魔法か。
凄いな、木も作れるのか、それもこんな上手く。
俺も見習いたいものだ。
それよりもさ。
(暑ッ………!)
流石地脈、暑いと思っていたが……ここまでだとは。
すげぇ、暑い。
動いてもないのに、暑い。
暑くてまた気が飛んでいきそうだ。
(厳しいなぁ、はぁ………)
「おっと、登り坂だ、気を付けてくれ」
相変わらず渋い声。
そんな事思っていると、急に地面、いや、荷台が浮いた。
登り坂に入ったか。
結構急だ。
上へ上へと向かうための坂だ、ここを登らないといけない。
現在、俺は荷台の端っこ。
落ちないように、忍んでいる。
でも、この体勢、ちときついな。
動いていないのに、少しだるい。
歩いたら、倍以上。
あ、そうだ。
「あの、まだ名前聞いてないですけど………」
「む、そうだったな」
名前は大事、情報の彼方。
さぁ、貴方は、一体……。
「うーむ……タータスだ」
「ウーム、タータス、ですか?」
「違う、タータスだ」
「すみません」
タータス。
どこか……なんだかどこかで聞いた名前と似ている。
多分、気のせいだろう。
それより、タータス、タータス。
うむ、苗字。俺でいう名前の後につく『クリフ』という家名がない。
一般的に隠している場合。
または、それだけの2つに分かれる。
違いとか、分からないので。
結構、面倒だ。
(どっちでもいいけど)
「そうだ、お前さん、炭鉱夫じゃあないんだよな?」
「はい」
そんな事聞いていた。
なぁに、俺は普通の旅人Aです。
「なぜここに?」
「実は、かくかくしかじかで………」
俺は、この国に来た事と、その理由。
分け合って、地脈採掘体験に来た事を説明した。
結構長くなったが、まぁ、いいだろう。
移動中だし。
「おぉ、なるほど……地脈採掘体験、そんな物をやっていたのか……」
「あれ、知らないのですか?」
喋り方的に、知らない、今知ったという感じだ。
意外と、情報が伝わってないのか。
「知らん」
「えぇ……有名らしいですけど」
土の国でも、これは有名だ。
まぁ、いうてもここ最近できたイベントらしいけど。
最近って言っても、年だ。
「少なくとも、ここに潜る前はなかったはずだ」
あれ、そうなのか。
………ん? 潜る前には無い。
なら、一体この人は。
『いつからこの地脈に潜っていたんだ?』
「一つ聞いていいですか」
「なんだ」
聞きたいことがある。
大事なこと、確認のため。
「その、タータスさんが、この地脈に潜ったの、いつ頃で?」
「そうだな、ちょっと前だな」
ちょっと前じゃ、分からない。
「できれば、年月を………」
「ふむ……」
年月。
多分、何年かはっているはず。
イベントが無いなんて、何年か前のはず。
たがら、確認したい。
タータスさんの言葉を持つ。
そして言葉を話す。
「創世記761年、くらいだ」
「ななっ!?」
創世記761年だって!!?
え、今が768何だから………。
(約七年前………!!)
そんな前から、この地脈に潜り続けている。
と言うか、ちょっとじゃねぇ!
「なんだぁ、そんな驚いたのか」
「驚くもなにも、七年前ですよ! 7年!」
すごい長い時間。
それだけ潜っていた。
食料とか、どうしていたの……。
「むっ、そうか……たしかに、長いな」
めちゃくちゃ、気にしていない。
凄い平然としている。
「そんな平然と……」
「はははっ! まぁ、いいじゃないか、時が流れるのは早い、それに。………土の神は何倍以上の時を生きている。それに比べれば……だろう?」
比べる相手が異次元ですよ。
神、と人間は、天と地の差がある、分かりきっている。
まぁ、基本的には強さと、知恵の位、勝てはしない。
生き物としての格が違う。
そのため、信仰する人も多いらしい。
または、神に挑む、猛者もいるとか。
それでも、簡単には勝てない。
現に、人間が神に勝てた事なんて、普通は無い。
一応神に近い力を持った者を、打ち倒した人間はいる。
それが、(おおよそ一万年前の勇者一行)である。
話が長くなった、終わろう。
‐‐‐
起きたのが午後2時時。
ならば、今は3時だろう。
初めての地脈で、もう3時間以上潜っている。
こんな事が、本当に起きるとは。
事故ってのも、怖いものだ。
「おっと」
地面、荷台が少しガタついた。
尖った石にでも当ったか?
危険な感じだし、今のところは少しだけ平坦な道。
先程のような急斜面ではない。
まぁ、危険なのは変わりないけど。
そういえば。
今、どこらへんなんだろう。
辺は、溶岩、地脈。
あ、あそこに鉱石がある。
白い………何だ。
プラチナでは、ないな。
他にもある、やっぱり、地脈は鉱石が多い。
それも、みた所高価な物。
土の国が、豊か、技術力が高いのは頷ける。
それに加えての知恵。
凄い。
「もうそろそろ、出られるぞ」
「え」
え、本当に?
もう、いや……もうちょっとかかるかと思った。
そしたら、もう少しで地脈を出られるとの事。
「早いですね」
「近道を通っているからな」
ほぉ、近道。
そんな物があったのか。
やはり、地脈に七年潜っている人は違う。
経歴が長いから、知識も深い。
………あれ、この人何歳なんだ?
俺を乗せた荷台は、先へと先へと進んでいく。
すると、先ほどとは違う、暗く薄い坑道に入った。
(暗くて見えない、松明をつけよう)
俺は松明をつけようとした、しかし。
「待て、松明はつけるな」
と、タータスさんに止められた。
この暗い中、何故松明も付けずに坑道を進むつもりか。
それは危険だ。
鋭い岩だって、あるのにだ。
「なぜ」
「それは、この先に理由がある」
「理由」
「そうだ、この先の坑道で、耳を澄ませておけ、理由はそこにある」
「耳を澄ませば……何が分かるんですか?」
「………」
それ以上は何も言わなかった。
仕方がないので、坑道内では耳を澄ませておくことに。
暗いだろうな。
(それにしても、坑道の中に一体何があるというのだ?)
坑道の中へと入っていく。
やっぱり、暗いな………。
松明がないと、本当に何も見えない、一応進んでいるのはわかるが。
少し不安だ。
(さて、それじゃあ、言われた通り……耳を澄ませてみるか)
耳に集中を集める。
移動する音など、気にならないほどに集中。
そして、あたりを確認する。
(何もないが……)
一変なにもないように感じる。
しかし……なんだかな、なぜだか。
少し、おかしい。
このあたりは、魔力が……魔力の流れがおかしい。
激しくもなく、穏やかでもない。
変だ。
普通ではない。
例えると………狂ってるような。
「分かったか」
「上手くは掴めないけど……」
ちょっとは、理解? 出来る。
しかし、何なんだ。
この現象は、一体何が引き起こしているんだ。
「ここで火をつけると……まぁ、なんだ」
タータスさんの口が止まった。
言いにくいことでもあるのか。
「?」
「簡単に言うと………怖い事が起こる」
凄いいきなりだ。
それに、怖いだって?
あれか、この世界の怪奇現象というやつか。
それか地脈の七不思議。
怖い、で思い浮かべるものは幽霊。
ホラーは怖い。
ここは、前世の世界とは違う。
ファンタジーな世界。
だから。幽霊をファンタジーで置き換えると。
出てくるのは………アンデット。
RPGゲームでよくでてくる『スケルトン』『ゾンビ』『ゴースト』
そこらへんか、怖いというと。
この世界に存在しているかは別だが。
「まぁ、何もしてなれけば、何も起こらない、これが最善よ」
何もしない、より。
何もできない、ゴーストの場合はな。
その後、タータスさんからこのことについて聞いた。
まずこの現象。
やはり闇が関係しているとの事。
あと、ゴーストとか、アンデットなどはいるらしい。
しかし、この現象は全く別らしい。
いや、よくわからない、この世界。
17年経ったが全てを掴んだわけではない。
世界は広い。広すぎる。
坑道を抜け、地脈の上層に到着。
結構上まで来たかな?
暑さも、下に居た時よりは収まってきた。
もうすぐだな。
俺は、地上を思い浮かべる。
3時間以上の探索。
それに、事故。
多分、上では俺を探しているだろうな、二人。
いや……ローバンさんは、酒場でくたびれてるかもしれない。
となると、セイランだけ。
まぁ、流石に心配してくれてるだろう。
「そろそろ外だぞ」
お、外か。
ふぅ……ようやく外に出れる。
これほど、良いことはない。
「やっとか」
「長い事潜っていた、久しぶりの地上………どうなっているか」
俺は3時間だけど。
タータスさんは七年ぶり。
七年と言ったら、超長い。
俺の訓練している間よりも長い。
その長い間、ずっと地脈の中。
俺だったら、嫌だ。
と思うよりも、生きるので精一杯だと思う。
地脈だからな。
前方光が見えてきた。
よく差し込んでいる、この先は地上。
ついに出れる。
疲れた……宿に戻りたい。
フカフカのベッドにダイブ、いいね。
「さぁ、眩しいぞ」
「うっ……」
外に出るときは、意外と光が眩しかった。
咄嗟に手で光を隠す。
隠してもまだ眩しいぞ、どうなってんだ。
光が照らしている間は、手で隠す。
ん、熱さがなくなった。
外に出たのか。
「もう、大丈夫だ」
「………おぉ」
光がやみ、手を戻す。
するとそこには。
初めてきた時と、同じ光景が広がっていた。
まさに、絶景。
「………懐かしい」
タータスさんは、この景色を見て、懐かしんでいる。
どうやら、変わってないようだ。
この、国の景色は。
まだ、空は暗くない。
多分、4時くらいだろう。
ちょうどよい、少し、買い物でもするか。
(今は気分がいい、気分がいいいい時こそ、買い物してこそよね)
何を買おうか。
一応節約もしないといけないが……この国のものも買いたい。
そんな欲がある。
金は……まぁ、あるか。
よし、なんか買おう。
食料でも、道具でも。
と、その前に。
タータスさんにお礼しないとな。
俺をここまで運んできてくれた。
命の恩人だ、礼を言わないと、(元)日本人だから、気がすまない。
お礼。
この世界だと、言葉だけでいいのか。
いや、目上、位が上の人には………何か上げたほうがいいか。
ほら、映画とかでよくあるやつ。
あれを、したい、と言うか、しないと駄目だろう。
金を使うかもしれないが、気にしない。
命に比べれば、安いもんよ。
さて、やってみるか。
俺はタータスさんのため、お礼を考えることにした。
どんなお礼になるかは分からない。
でも、常識的なお礼だろう。
多分




