第六十七話「地脈採掘:後編」
真っ暗闇。
なにも感じない、闇の中。
ただただゆらぐ、暗い暗い深海の、クラゲのように。
ゆっくり、ゆっくりと、フラフラ......。
あれ、なんだか光が見えてきた、太陽の光かな?
上昇しちゃった、上には人がいるはず......。
あれ。
あれぇ? なんだろう、この記憶。
みたことがない、存在しない記憶のはず。
どういうことだ、幻覚......。
.........俺は、幻覚でも、みているのか?
荒れた大地、歩く視点と、横手に見える、もう一人の人物、どこか......寂しげな表情をしている。
空はオレンジ色の夕焼け。
あ、奥に光が見える......幻想的だ。
こんな所、いつか行ってみたいなー。
(それよりも、なんだか、体が熱い)
なんでだろう。
そんな熱い状況なのか。
あれ。
体が熱い。
なんか燃えている?
いや、まさか、そんなわけな―――。
ロベルトはここで初めて、目が覚めた。
いや、最初から覚めていた、ただただ精神内で遊んだだけであった。
最初に見た景色は、天井。
天井は、なんというか赤い、真っ赤ではないんだが、少し赤く照らされている。
それよりもだ、地面が硬い。
そのせいか、体が悲鳴を上げている。
「ッ......熱っ!!」
熱さで飛び上がってしまった。
床を見ると、なんだか黒い石が転がっていた......なるほど、この上に転がっていたのか。
(だから、体が痛かったのか)
俺は、服をサッサと払い、少しの汚れを落とす。
幸い酷く汚れてはなかった。
でも......。
背中の中心のあたり、ここだ、黒く焦げてしまっている。
黒い石のせいで、燃えたか。
せっかくのこっちでの服、旅用の服が少し燃えてしまった。
大事なものなんだけどな。
(うーん、直したい、できれば失いたくない)
この世界って、クリーニングとかあるのか?
あるとしても、最高技術の水の国か、他の国。
この服結構気に入ってるし、直したいな。
とそれよりもだ......。
上を見上げる。
見上げた通り、上右斜めには穴が空いている、あそこから落ちてきたのか。
見た所、結構深いところまで落ちたか。
なるほど、分かった。
ここは、地脈の奥深く。
危険区域を越えた、更に危険な場所ということか。
見る限り、ここから脱出する手段は、手は見えない。
戻るのは、困難だ。
(やばいよ!!!)
この地にて、ロベルト・クリフの物語は、『完』ってか?
そんなの、酷すぎる! 俺はまだくたばりたくない!
手を強く握る。
俺はまだ、妹を救い出していない、目標、悲願を達成できていない。
妹と、幸せに暮す願いを。
妹に幸せになって欲しいという、願いを。
叶えてないじゃあないか!
心に火が灯る。
それと同時に、俺は立ち上がる。
俺はここら抜け出し、生きて帰る。
旅を続けるために。
(そうと決まれば、早速行動に移ろう)
俺は辺を見回す。
辺りは極熱の熱さ、周りにはマグマで溢れている。
一応、通り道があるが、崩壊しないよな?
安全とは言い切れない。
とにかく、まずはこの危険なところから抜け出そう。
そのためには、この道を通らなければ。
俺は道まで歩き、立ち止まる。
見るからに、すぐに壊れそうな道だ。
これ、壊れたら………マグマにドボン。
(慎重に渡ろう)
いざとなれば、魔法で跳べばいい。
道に一歩、足を乗せる。
右足が乗った瞬間、嫌な男が鳴った。
こういうのが、怖い。
いつ崩れるか、分からない恐怖、心底震える。
しかし他に道はないので進むしかない。
左足を乗せる、これで……体が道にすべて入った。
こっから、慎重に動こう。
まだ落ちると決まったわけではない。
忍者の如く、ソロリソロリと、ゆっくり歩く。
下は細く不安定な道。
しかし、辺りは一面マグマ。
(おっとと……)
少し転びそうになった。
まじで、命の危険を感じたぜ。
中間地点、まで来たよな。
やっとここで半分か、長いな……でも、今の所は無事だ。
何も異変は起きていない。
このまま崩壊する前に、渡りきろう。
ゆっくり、一歩ずつ足を進める。
そして、ついに向こう岸にまで、もう僅かな所。
(!)
その時、地面にヒビが入った。
メキメキと音を立て、次々に道が後ろから割れていく。
俺はそれを素早く察知した。
(まずい……!!)
そこからの行動は早かった。
ゆっくりのろっと歩く、から、激走の猛ダッシュへと変更。
全力かつ、落ちないよう、走った。
そして、最後に俺は、ジャンプで道を飛んだ。
そのまま、向こう岸に、着地。
なんとか間に合った。
後ろを振り返ると、先程まで通った道が、崩壊していた。
危機一髪だった。
もし、遅れていたら……確実にあの世行きだったな。
いやー、疲れた。
とにかく、向こう岸まで渡ることに成功した。
さて、ここからどうするか。
向こう岸は広い、それと同時に道が何本と、枝分かれしている。
よく考えて行動しないと迷う。
それに、いつまでもここにはいられない。
この気温、そして地脈の危険区域の奥深く。
これは命が掛かっている。
俺だけではない。
俺と一緒に落ちた、あの三人組もだ。
しかし、三人組はいない。
どこへ行ったのだろうか。
(もしくは先に動き始めたのかも知れない)
信じよう。
とりあえず、まずは上を目指さないとな。
魔物が出るかもしれない。
一応、警戒に剣を………。
肩を触る。
しかし、触れた感覚、いや。
触っていない。
(剣が………ない?)
あれ、剣がないぞ、常に肩に背負っていたはず………。
ロベルトは、すぐに戦闘に移れるよう、肩に剣を背負っていた。
ロベルト的には、腰よりも、肩のほうが抜きやすく。
かつ、邪魔にならないのである。
そのため、肩の剣を一旦、抜こうとした。
しかし、肩に背負っているはずの剣が無かった。
ぽん、と消えていた。
(くそっ………さっきから、肩が軽いなー、と思っていたら、剣が無かったこからか!)
しくじった。
落下中に巻き込まれて、どこかへ飛んでいったのだろう。
そうに違いない。
しかし、まずいな。
剣がなければ戦えない。
魔法は使えるが、近距離用に剣が欲しい所。
なぜなら、俺が魔法剣士だからだ。
近接、遠距離のエキスパートは存在。
そんな俺が剣を使えない。
これは、まずい、まずすぎる。
魔法だけでは、上手く対処しきれない。
(探さなければ)
しかし、探そうと思っても、周りには何も無い。
俺が転がっていた場所にも、無い。
あと、俺が転がっていた場所には、もう戻れない。
道が崩壊してしまったからだ。
(と、なると、後は……こっちか)
向こう岸のどこか、あるか。
それか、もうマグマの中……か。
どっちにしたって、まずい流れだ。
(あ、そういえば、ツルハシも……おまけに頑丈な帽子も無い!)
なんにも残ってない、全部失ってしまった。
武器は0 道具も0 食料も0
最悪の状態である。
(はぁ………)
落胆して、沈み込む。
………とりあえず、移動しよう、いつまでもここにはいられない。
それに、食料がないのだ。
早くいかなければ、空腹で野垂れ死んでしまう。
四の五の言わず、早く行こう。
‐‐‐
「土の神を、知っているか?」
とある地脈の奥深く。
そこには黒い岩の中に、一人の男。
その近くに、剣さえも持っていない、青年がいた。
「この国の神であり、同時に大地を司る巨神である」
巨神とは、体格が大きく、でかい神である。
また、古くから、長年世界を守ってきた神を、大神と言う。
「土の神は、この地にて土や岩の加護を与え、そして、人々に技術を与えた、進化のため」
男は長々と喋る。
言葉には、どこかただならぬ気を感じる。
「人々は、地脈に潜り、鉱石を掘り、国を高めていった」
先代の人々は鉱石を掘りまくり。
今の技術を身に着けたのである。
「しかし、それと同時に、地脈は痛み、鉱石を自然再生する、自然の機能、地脈の中に棲息する魔物たちが、次々と、奥へ奥へと追いやられてきた」
魔物たちが、地脈の奥に棲息するのは、人間、ドワーフのせいである。
また、鉱石は、自然再生するらしい。
原理は知らん。
「地脈の痛みを全て受けていた、土神の眷属、『堅陣龍ゴライアス』は、土神に助けを求めた」
堅陣龍ゴライアスといえば、この地で有名な龍の名。
まさか、土の神の眷属だったとは。
「しかし、土神は、その助けを蔑ろにし、耐えろ、と命じた、無情なものだ………」
巨大な土の男と、頑丈そうな龍の姿を思い浮かべる。
今でも、思い出す。
あの言葉を、決定権を。
「当時、土神は、今より硬く、強圧な男だった、そのための命令だったのだ……今でも、助けてやれば………この地脈も、何かが変わっただろう」
念が深い。
相当な熱心。
しかし、その話を、何故この人が?
「なぜ、その話を……俺に」
ロベルトは聞く。
黒い岩の中に埋まった、男は、静かに答える。
「俺は、ゴライアスに会うため、地脈の奥深くへと潜っていた……暴走を止めるために」
男は言った。
それにしても、暴走だって?
話からして、堅陣龍ゴライアスが暴走を、している。
そう聞こえる。
「長年の地脈の痛みにより、限界に近づいたゴライアス、このままでは、いずれ、この地は滅ぼされる」
「なんだって!?」
「ゴライアスは山のように大きい魔獣、下手すれば、他の国にも被害が出る、なんとしてでも止めなければ」
そんなに、大きいのか? ゴライアスっていう龍は。
と言うか、なんだよ。
この地が滅ぼされる!?
ゴライアスが、土神の眷属がか!?
どうなってる、話が難解で、よくわからない!
と言うか、なぜこの人は、こんなにも理由を知っているんだ。
「……あの、それよりも、あなたはなぜここに?」
さっきから疑問に思っていた。
「地脈を進む途中、よく見ない珍しい石を発見し、取ろうとした」
よく見ない珍しい石………?
どこかで聞いたような………。
ロベルトは考える。
それと同時に、真相が明らかになった。
「そしたら、地脈特有の、地層削りに捕まってしまった、まったく動けん」
男は地面に黒い岩石ごと埋まっている。
姿は見えない、本当に黒い岩の中にいるようだ。
………光景がおかしい。
『地層削り』
地脈に起こる現象。
起こるのは稀で、巻き込まれると、この男のように、地面に埋まってしまう。
基本は埋まるだけですむが、運が悪ければ、窒息で死ぬ。
「姿は見えんが、お前、炭鉱班だろう、助けてくれれば、ゴライアスにはならずにすむ」
男はそういった。
思ったが、地面の中なのに、なぜ声がよく聞こえるんだ?
地脈だからか?
謎である。
「俺は、炭鉱班では、無いです」
「そうか、まぁよい、ツルハシで、周りの岩を掘ってくれないか?」
今度はツルハシを求めているようだ。
しかし、ロベルトは、ツルハシなど持ち合わせてはいない。
途中で失くしたのだ。
「持ってません」
「なんで? ………まぁ、良い、ならば、土魔法で作ればよい」
「えっ、作れるの?」
土魔法で、ツルハシを作る?
そんなことが出来るのか………?
「当然の反応だ、土魔法は、攻撃用、防御用、もしくは骨董品として使われる魔法だ」
本にも書いてあった、これが基本。
それが以外の反応があるのか?
「しかし、土魔法の凄く、有効的な方法が存在する、これぞイメージの新天地」
「具体的にどんな……?」
ツルハシが土魔法で作れたら、一気に効率的になる。
なにせ、鍛冶が必要ないのだ。
「魔法はイメージが大事、これは知っているだろう?」
「まぁ、常識ですし」
「そのイメージをフル活用する、少年、名は?」
「ロベルトです」
一応、俺は大人で青年なんだけど。
姿が見えないから、誤解されているな。
「ロベルトよ、ツルハシを頭の中でイメージしろ、なんでもよいぞ」
「イメージ………」
言われた通り、頭の中で、ツルハシをイメージする。
俺がイメージするツルハシ。
それは……基本的に鉄で作る、一般的なツルハシ。
全体を表すんだ、頭で!
そして、フル活用するんだ。
「イメージを保ちながら、土魔法で形を形成しろ」
難しいことを、簡単に言う。
結構これは難解なんだぞ、集中しながら、保つのは。
しかし、こんなことでは負けられない。
俺は頑張る。
頑張って土魔法で、ツルハシを作る。
徐々に、ツルハシの持ち手部分が形成していく。
いいぞぉ……その調子だ。
「そのまま、ゆっくり、気を抜かずだ……」
集中だ、集中。
常に、意識する、ツルハシを。
持ちて部分が完成、あとは……肝心で重要な部分。
そこを作れば、完成だ。
「作るまで気を抜くな、形成の魔法は、集中を持続しなければ型を保てない」
持続するのは、精神的にも負担がかかる。
魔法を保たなければ、形は維持できない、これが土魔法の弱点。
しかし、土魔法を使う魔法使いたちは、これを乗り越えてきた。
俺も登り切る、壁を。
「あと少し……」
「おぉ……」
そして、今、完成する。
「プロダプス」
「!?」
「………アイアン!」
突然、見知らぬ単語を叫んだ。
その後に、アイアン、鉄の単語。
その時、手のもとで、鉄が形成されていく。
それが、俺の土魔法に混ざっていく。
「まだ気を抜くな!」
「!」
あ、危ない……気が抜けるところだった。
それより、完成した。
ロベルトの手には、鉄のツルハシが握られていた。
「本当に、出来た」
「これが、土魔法の工夫よ」
凄い、こんなことができるのか。
と、それよりも、さっきの単語は一体……?
「それより、さっきのは……」
「あれか、あれは……鉱石を作る魔法だ」
「鉱石を作る魔法だってぇ!?」
そわ、そんな、とんでもない魔法が、あるというのか!
とんでもない、魔法だ。
「プロダプス……このあとに、作りたい鉱石の名を入れればよい、この時、『かっこいい単語を使う」
「なるほど……」
鉄じゃなくて。
アイアン、と言わなければいけないのか。
謎のこだわりだ。
理由でもあるのだろうか。
(おっと……それよりも)
「それって、どんな鉱石でも行ける?」 「鉱石によっては魔法量をくうが、基本的にはなんでも行ける」
「へぇ」
なら、金を作れるのか。
そこから、金貨を作る。
素晴らしい金儲けだ。
これならば、億万長者になれる。
「………今、悪い考えをしただろう」
「わかりますか」
「分かる」
ふっ、こちらがわだったか。
「こういう、悪党のための、除去の方法を生み出している。上手い手を使わない限り、金儲けは出来ないぞ」
「そうだったか……」
これならば、と思ったが……。
やはり、だめだった。
これは、残念。
金を出して、金貨にする、永久機関が完成したかと……。
まぁ、その話は置いて置こう。
さて………掘るか。
‐‐‐
「どこらへんから、掘ればいいですか?」
ツルハシを持ち、構える。
男の救出に取り掛かる。
「周りから掘ってくれ、あと、頭に当てないでくれ」
「分かってます」
頭に当てたら、即、即死。
それだけは勘弁を、人殺しにはなりたくない。
さぁ、掘るぞ。
ロベルトは周りの石に、狙いを定める。
慎重に、彫る。
でないと、怪我させてしまう。
(………ここだ)
ツルハシを振り下ろす。
ガン!
鋭い壊れる音と共に、岩石が砕ける。
いいぞ、その調子。
「そのまま、頼む」
はい、もう一丁。
ガン、ガン!
勢いで、2回振り下ろしてしまった。
しかし、凄い勢いで砕ける。
このツルハシ、出来がよいのか、使いやすい。
これも、魔法の力か。
「少し早いな、まぁよい」
次、行きます。
ガ、ガツン!
高速、いや、凄い速さで打った。
勢いよく、壊れる。
正直気持ちが良い。
「いい感じに彫れてます」
「くれぐれも当てないでくれ」
承知のうえですよ。
さて、もう一回、行くぞ。
今度は、力強く。
魔力を込めて、その岩に……打ち込む。
行く!!
(おおっ!!)
ガキン〜!
か、硬!
「あぁ、痛ってぇー!!!」
「いぃっ!?」
男が、凄い声を上げた。
まさか、あたった!?
その時、地面が少し揺れた、と思ったら、地面から腕が出てき。
それは……岩。
(な、だ……)
岩でできた、腕はこちらめがけて向かってくる。
そして、ロベルトの顔面にヒット。
「ゔぎっ」
俺は勢いよく、後ろに吹っ飛び、何度かバウンドし倒れ込む。
距離にして5メートル。
凄い痛みだ。
俺は、前を見る。
微かに地面が揺れている。
かと思った、次の瞬間。
地面、それも、先程まで掘っていた岩石が突如裂け。
中から、人が飛び出した。
痛みの中、見えた姿は。
「す、スキンヘッド………」
「うおぉぉぉぉ!!」
スキンヘッド、光輝く、スキンヘッド………。
ドシンと衝撃音が眼の前になり響く。
眼の前には、巨大な大男。
筋肉質で、凄いデカい。
2メートルは超えるだろう、巨人のような巨体。
そして、光るスキンヘッド。
まさに、映画で見たかのような人物が、眼の前に。
「頭にツルハシが当たった、痛かったぞ」
「あ、あなたが、さっきまでの……男」
「そうだ」
一人で出るてるじゃん……。
「というか、なんで、頭にツルハシあたって、無事なんだ……」
「………鋼の魔法で、頭蓋骨を硬質化させた」
意味が分からない。
何を、言ってるんだ、この人。
やばい、意識がモウモウとしてきた。
クソだめだ………意識が持って狩れる。
さっきの一撃が、決め手となったか。
「む、大丈夫か」
「う」
やばい。
あ、まずい。
「ふ……な………こ…」
ロベルトは地に伏せた。
意識は闇の中へと落ち、ロベルトは気絶した。
この熱い中で。
気絶しただけです。
魔法
プロダプス 『ここに鉱石の名前を入れる』




