第六十五話「ローバンが説く、有り難い教え」
マタードの宿で宿泊の手続きを済ませたロベルト一行。
作戦を決める前の、僅かな休憩として、それぞれ自身の個室へと向かっていた。
借りた個室は3人分。
部屋は五番、六番、七番である。
俺は七番の個室を選んだ、数字的に良いと思ったからな。
ローバンさんから授かった、鍵を受け取り、自身の個室と向かう。
二階に上がり、右側廊下を進む。
進んでいくと、それぞれの番号が示された部屋を発見。
案外、分かりやすい設計だ。
「一旦各自、部屋の中で休憩を挟む、時間になったら呼びに行く。それまではゆっくりくつろいでいてくれ」
部屋に入る前に、ローバンさんが皆に呼びかける。
このあとは、少し今後の方針を決めるため話し合う。
新しい国、言ったことがないため、どのような生活、施設、ルールがあるか把握できていない。
それは今後にとって壁となる。
なので、今のうちに知っておきたい。
「分かりました」
「バーンさんも、ごゆっくり」
ロベルト、セイランは返事を返し、部屋の中へとそれぞれ入っていった。
「ここか......」
部屋の中は生活的な様子であった。
生活するにあたり、必要なものが揃えられている。
ベッドもフカフカの毛布、丁度よいサイズの机に椅子、あとタンス。
灯りは松明で補っている。
引火しないように設計されている......考えられているな。
もしかして、あの少女が作ったりして......?
(まさかな)
ロベルトはベッドに腰掛け、荷物をすべて取り出す。
整理と確認は必要だ。
『この間、胸のペンダントは外さないままにしておくこと』
旅のための、お金、今までの経費。
食料、これが無いと旅は続かない、物資は有限だ。
常時確認し、それに伴い持続できるようにする、これが大切。
さて、まずはお金。
ローバンさんから、この前『報酬』として、少しだけお金を貰った。
あ、いや、恵んでもらった、のほうが正しいか......。
ともかく!
お金の所持数は大切、現在持っている数を考え、先の旅の予定などに合わせていこう。
さて、現在のお金は〜?
ロベルトはお金をベットの上に出し整理した。
金貨 七枚
銀貨 四十八枚
銅貨 八枚
(うーん......どうだろう、これでやっていけるか?)
旅をするんだ、金貨は十枚以上持っておきたいんだが、うーん。
これは金稼ぎを検討したほうがいいな。
一応、聖閤堂で働いているが、旅のため、遠出での仕事しか出来ない。それに加え借金をしたために、『責任』として。
聖閤堂に請求書が送られた、それも店主のもとに。
収入は期待できない。
いや違う、もしかしたらクビになる可能性がある。
それだけは......。
それだけは......ご勘弁を、一緒に騒いで、楽しみあった仲じゃないですか!
ほら、あの宴、休日開催限定のあの集会!
大変だったけど、従業員総勢での宴だったじゃん!
それをお忘れですか店主! 義に反しますよ!
(あほくさ)
ベットの金を素早く回収ししまう。
そしてベットに横になりくつろぐ。
こうやって、日々の疲れを癒やすのだ。
頭は上を向く、仰向けのたいせい。
目線は、個室の天井を捉えている、変わりない、無機質。
不意に自身の手が動き、胸のペンダントに触れる、そしてそのまま顔の付近にまで持ってきた。
ペンダント、汚れずにすんだな。
ペンダントは旅たちの時と、変わらない輝きを放っている。
それに綺麗である。
これはロベルトの毎日の手入れのお陰だ。
ペンダントを開ける。
中にはロベルトの最愛の妹の絵が入っている。
子供の容姿、とても可愛らしい。
癒やしとともに、決意の証ともなる。
妹を救うための旅、長く苦しい旅だろう。
でも、妹の安全が、ロベルトの一番である。
『妹がいない限り、安心して暮らすことは出来ない』
ペンダントをもとに戻し、休憩を再開する。
さて、ローバンさんが来るまで、ゆっくりするとしよう。
‐‐‐
土の国、渓谷地帯上層部。
そこのとある屋敷。
ある男が椅子に腰掛け、読書をしながら紅茶を口に含む。
その姿は貴族のソレである。
隣には、こちらも貴族風の格好をした少女が居る、しかし他とは違う。
違う点で言うとすれば、頭に角が生えていることだ。
「ようやく入ったか」
貴族風の男がゆっくり喋る、言葉からは微かに優しさが紛れている。
「グラトニータ、机の資料をこちらに」
「はい」
男は本を読みながら、呼びかける。
グラトニータと呼ばれた少女はすぐさま、机の資料を取り、男の元へと受け渡す。
資料は細かく書かれている。
男は資料を受け取り、読む。
「作戦において重要であり、邪魔にさえなる人物『ロベルト・クリフ』石の呪いを解けるとしても......いかがなるものか。
あの方のお考えはよく分からない」
男が見ていた資料。
そこには、作戦、そして注意人物として『ロベルト』の事について書かれていた。
「あの小僧が、素早く作戦を成功さえすれば、早く終わったものを......」
疲れぎみ、本を読みながら愚痴をこぼす。
「そういえば.....彼は仲間を増やしたようだ、グラトニータ」
「はい、少女に大人の男の二人」
「どちらとも身元不明の人物とは」
男は立ち上がり、窓側へと移動。
外の景色を眺める。
外はまだ明るく、活動中。
渓谷に連なる集落はいまだ賑やかだ。
土の国は、朝早くから夜まで。国全体が活発な国。
渓谷に出来た地脈、そこで国の人々が炭鉱を始める、地形、人材からも技術力が高いのは頷ける。
「この景色も、いつまで続くか」
男は無表情ながらも、目は芯が宿っている。
「グラトニータ、仲間の二人、倒せるか」
「女の方は心配無用、男の方は......倒せる」
きっぱりと答える。
無機質、彼女からはあまり、心を感じない。
男はその言葉に、口を少しあげ笑う。
「嘘を、あの男は簡単には倒せない」
その言葉に、少し驚く。
グラトニータは内心では少し不安。
しかし、彼女自身それを許さない。
「私もお前も、力気、魔力を正確に読み取ることが可能、奴の力はお前も分かるだろう」
「......それは」
「それにあの男、私はどうやら昔、会った事があるようだ」
「!」
男の言葉に、またも驚く。
ただ静かに聞く。
「知り合い?」
「いや、君も知っているはずさ」
言っている意味が分からない。
少女は思った、現に男が言う人とは会った事が無い。
関わったことがない。
しかし、少女はこの男の使い。
信頼と尊敬をこめ、仕えている身。
なんの理由で言ったのかは分から無いが、少女は従うのみ。
分からなければ、理解するだけ。
「時間は充分、それよりも、主君のため、まずは石の回収が最優先だ」
男は指を動かす、すると、机にあった本が高速で男の下へと引かれる。
本はいたって何も変わらない、ただそこにある。
特殊な本でも、仕掛けがある本ではない、ただの物質。
ではなぜ動くのか。
それは、この男のものによる。
「先は長い、役目を果たすには、それ相応の準備、策が必要である......従うことは出来る限り行え、グラトニータ」
男は優しく微笑んでいる。
「分かった」
少女の言葉に、男はウンと頷く。
窓の方向に向き、男は空を見上げる。
空は晴天だ。
「手始めに、地脈からだ」
‐‐‐
「ぶぁっしょっ......!!!」
「うおっ!?」
「ひゃぁ!?」
マタードの宿。
そこで、ロベルト、セイラン、ローバンの三人で、予定について話している途中。
いきなりローバンがくしゃみを出した。
突然だった。
「ろ、あっ、バーンさん、大丈夫ですか」
「風邪でしょうか......」
心配だ。
いきなりくしゃみ、それもあんな大きな......。
なにか、病気か?
「か、風邪ではないが......まぁいい、心配はいらない」
「そうですか」
なにかあったかと思った。
風邪がないのなら心配はいらない、よかった。
一応、体は気をつけて。
でなければ、危ない、どこへ行っても風邪はしんどいからな。
「えっと、話しに戻りますよ?」
「あぁ」
「バーンさん、地脈に行けと言いましたよね?」
「言ったぞ」
先程の話し合いにて、ローバンさんは『地脈』について話を出した。
少しだけ話しをしよう。
地脈は、ここ土の国にとって、大事な資源の調達場所。
国にとって、必要不可欠なもの。
土の国で取れた資源は、大体が地脈の鉱石採取といっても過言ではない。
地脈から取れる『鉱石』は貴重。
鉱石は国の資源、作成にも汎用でき、珍しいという点から、他国との貿易にも役立つ。
また、貨幣などは、金、銀などを使用しているため。
貨幣づくりで、最も貢献しているのは土の国である。
色々な点で活躍している鉱石。
元を辿れば地脈のおかげ。
土の国が地脈を大切にする理由分かっただろう。
その地脈に、ローバンさんは行くと言った。
「なぜ地脈に? 俺は旅人ですよ、そまそも柄じゃないですよ」
俺は一般的な旅人。
この国の人のみたく、鉱石を掘る人ではない。
ただ、世界を歩き旅する男。
それがこの俺、ロベルト・クリフ。
鉱石など掘らないし、掘り方さえも分からない。
「あぁ、違うぞ、専門者みたいにガツガツ掘るわけではない」
あれ、違うのか。
「では、なんですか?」
「そうだな、うむ……体験みたいな物だ」
「体験?」
「あぁ、鉱石採掘を体験できる……イベントみたいなものだ」
イベントだと……。
ローバンさんが言うには、鉱石採掘を体験できるとのこと。
………鉱石採掘か。
となると。
先程話した地脈に繋がる。
なるほど、鉱石採掘のため、地脈に潜る、そういうことか。
「時間が勿体ないですよ」
「なぁにぃ? 」
俺は旅人、これはさっきも言ったな。
しかし普通の旅がしたい! こういう理由ではない。
俺は人を探しているのだ。
それも肉身をだ、家族だ。
時間を省くわけには行かない。
「仮にも俺は妹を探している、時間を省くことは出来ない」
「ロベルト、地脈はあまり体験できない、旅の経験になるかもだぞ?」
それは……確かにな。
しかし。
「妹を救ってからでいいです」
「そうか………ならばな」
ローバンはそう言うと、立ち上がり話し始める。
「俺は盗賊、わかるな?」
「まんまですからね」
「まんまとはなんだ……ともかく」
ローバンさんは咳きをし、再度話し始める。
セイランは黙ってみている。
「俺は逃亡中の身であってな、余裕のない暮らしをしていた。
妹探しのため、お前もそうだろ?」
「まぁ……似たようなものです」
実際早く探したいがために、余裕は……少ない。
ゆっくりは出来ていない。
いつも駆け足気味だ。
「睡眠は極小、食事も減少、風呂は入らない時が多々。
まさに地獄生活の旅であった、指名手配中だからな」
考えるだけで辛いな。
「しかし、逃亡途中、俺はある者に出会ったのだ」
「ある人………」
「その人は男だった」
男………それで。
どんな人なんだ、性別だけでは分からない。
「見た目は……」
「見た目……金髪で髪が長く身長も高い、整った顔つきだった」
「金髪、高身長、長い……イケメン!」
「たが、少しおちゃらけていた、なんというか……陽気な感じだ」
俺はそれを聞いて思った。
(あれ、どこかでそんな人に会ったような………)
ロベルト自体、ローバンが言う人にはすでに会っている。
回数でいえば、グラス以上だ。
心のなかで、ある人物を思い浮かべる。
しかしまだあやふや。
決まったわけではない。
急ぐな、慎重に話を聞こう。
「………それで、会って何を?」
「話をした」
「話……」
「最初は陽気、そして胡散臭かったが、話していく内に。
すごい人だと分かったのだ」
凄い人……か。
もし、俺が今思い浮かべる人ならば……”凄い”というのか。
(うーん………)
「その人は、過酷な人生を送っている俺と話し合い、共感してくれた。
『自分もそんな事あるよ』とか、『それは大変だねー』とか言ってな」
今のところ、話し方は合致している。
まさかな………。
「その人は、俺に『娯楽』をくれた。厳しい人生を助けるためにな」
娯楽。
前世で言う、ゲームや玩具みたいなものか。
まぁ、楽しいよな、アレ。
「ふむふむ」
「最初は信じられなかった、コイツ、俺で遊んでるのか、そう思った。
でも、今でも思う」
「………」
ローバンは少しだけ、間を開けて話す。
その間はどこか集中している。
戦闘以来の顔つきだ。
「俺は、過酷な人生の中で、娯楽があって良かったと思う」
話を聞いて、少しだけ心が揺らいだ。
声が真剣そのものだ。
俺まで、熱くなってしまう………何を言ってるか分からないと思うが。
過酷の中の娯楽………。
「娯楽が俺を救ってくれた、沼に沈んだ俺を……救い出してくれた」
「なるほど……」
「あぁ、娯楽は素晴らしい、それを、あの男が教えてくれた」
ローバンさんを説き伏せた男。
これが俺の思い浮かべる人ならば……いや、どうだ。
聞いてみるしかない。
「………その人の……名は……!!」
勇気を出して答えた。
それに応えローバンは言った。
「その人の名は『クリス』」
「!………クリス……!!」
クリスという男。
俺の思い浮かべている人!!
やっとこさ、分かった。
だが……未だしんじら…………。
ん。
いや、待てよ、どこかおかしい。
なにか……おかしい。
一体何だ………。
あ。
あー、分かった。
(そもそも、俺、あの人の名前知らねぇわ)
「ロベルト、その人がくれた言葉、超長いから一部省いて大切な所だけ教えよう」
「………お願いします」
とりあえず、聞こう。
大切な言葉らしいからな、大事
それにローバンさんが言うんだ、大切なことに違いない。
ローバンは息を吸う。
ロベルトは言葉を真剣に待つ。
セイランも、真剣に聞く。
「その言葉を話そう……」
「………」
静粛が流れる。
そして、それが今、解かれる。
「分けて言うぞ」
「……早く」
「よし、序『過酷な生活をしている人は沢山だ、山ほどいるよ。おっさんに酷い、もしくはそれ以上、大変な世の中だ』」
この異世界でも同じか。
ファンタジーでも近代文化でも変わらない。
どれも同じだ。
全員が思い詰める。
「『それを救う手立てはある、しかし人はそれを行わない。他人だから』」
仙人みたいだ。
話し方にクセがある。
「『ならどうする、一人孤独か、違うだろう、一人で行動するのだ。何事もやらなければ始まらない」』
これは現代でも通用するし、学習するはずだ。
何事も、自分がやる。
「『頑張れ、過酷でも走り抜けろ、さすれば道はひらく、それが茨の道としても……道があるならば歩け、希望は見えてくる」』
茨の道、これは過酷とも取れる。
過酷でも歩く、精一杯頑張る。
これはローバンさんだな。
「さて、ここまでが序章だ」
「「序章だったの!?」」
二人して驚いてしまった。
結構長かったけど、まだまだ序章とは……。
あと何章あるのだ。
「では次に壱………あー、長いか?」
「長いです、できるだけ早く」
「そうか……」
流石に全部は長い。
そんな気がする、頭がヒートアップしてしまう。
ローバンは考える、そして決まった。
「ならば、最後にこの言葉だけ言おう、いいな?」
「お願いします」
最後まで省いてくれた、さて………その言葉とは………!
「その言葉は『詰め込みすぎない』だ」
「………なるほど」
詰め込みすぎない。
うん、大切だ、ストレス管理は大切だ。
詰め込まない。
結局はコレが一番大切だ。
「というわけだ、理解したか?」
「まぁ、分かりました」
「そうか」
ローバンさんも、すごい人生を送っている、それを今、体感した。
「ならば、地脈採掘に行け、これもなにかの縁だ」
「激し......まぁ、そうですね、分かりました、行ってみようと思います」
ものは試しだ。
それに、今思えば、俺は駆け足過ぎた。
少し休んでもいいかもしれない、よくないけど。
地脈採掘か......どんなのだろう。
「なら、まずは様子見として、拝見しに行きましょう」
「あー、それはな」
ん、何だ。
なんだか、様子が......。
「ロベルト、お前一人でいってほしい」
「......なぜ?」
「それはなぁ」
ここにきて。
一人で行けと言われる。
どういうこった。
「......用事がある、行って欲しい、頼む」
(.........)
用事と言った。
ローバンさんの用事、それは分からない。
しかし、俺一人、それはおかしい。
「まさか」
「急用を思い出した、まぁ何だ、地脈は経験になると思うぞ、行ってみてくれ、では!」
素早く言葉を残し、素早い足取りで、部屋を去っていった。
指名手配中なのに、何をするんだ?
そもそも、この国に来たばかりだし。
部屋はシーンとしている。
部屋の中は、俺とセイランだけになった。
(試しに、セイランに聞いてみるか)
「......セイラン」
「.........なに?」
少しビクッとしている、そんなに驚かなくてもいいのに。
ソレか、理由でもあるのか?
まぁ、いいか。
「セイラン、採掘行くか?」
少しだけ、声が変な感じがした。
「! あ、ハハハ......私は辞めとくよ、えっと、大変そうだし......?」
「そうか」
セイランもだめか。
はぁー皆で行きたかったが仕方ない。
「あ、じゃあ! お先に失礼ー」
なという棒読み。
あと、なぜ挙動不審なんだ?
そうして、セイランも部屋から出ていった。
こうして俺は一人となった。
少し、寂しい。
相手が女の子だから、フラレたみたいに見える。
「地脈、行ってみよう」
渋々、ロベルトは荷物の用意をするのだった。
壱などは、分かるように漢字で書きました。
話は数字です。
次回 地脈採掘イベントツアー 前編
思いもよらぬ出来事が、彼を待ち受ける。
その道は、多分過酷。




