第六十二話「隠されし近道」
盗賊たちによる盛大な宴が終わった後、早くも熟睡した。
熟睡といっても、宴の時間的にあまり長くは寝れていない。
さて、俺は朝早くから、荷物を整理している。
時間にして現在午前7時。
それは旅立ちのため。
今日、この日。
俺は盗賊たちのアジトから抜け、土の国へと向う。
俺が行く3っめの国。
土の国といえば、鍛冶技術の有名な絶壁の国。
そして古くからある歴史。
地面底まで大きく開いた渓谷に連なる土の国の街並み。
そして、溶岩の地脈、炭鉱。
その景色はまさに絶景だろう。
俺は、今からそこへ行く。
(正直、自分の目標よりも、楽しさが全面的に溢れている)
土の国へ行くメンバーは、俺を含めて約3人。
一人『セイラン・テラスティア』
俺の旅仲間で、氷の国の御令嬢………お金持ち。
頼れる回復担当。
二人目『ローバンさん』
カサドラ盗賊団の頭。
上級レベルの俺にも劣らない剣術から繰り出される技はすごいもの。
昔何かやっていたのだろうか。
土の国には、普通の道とは違う道を通っていく予定。
ローバンさんの話によると、炎の国の兵が厄介らしい。
なので、近道、裏ルートを通っていく。
近道は隠されてあるらしく、頭でしか知らない。
奥深く、木々の中の洞窟とのこと。
いいよな、こういうのって。
(少年心をくすぐられる)
「よし、準備はこれくらいでいいか」
俺は鞄の中に、最低限の荷物を詰め準備を完了する。
金貨に銀貨も入れた。
そして、最低限持つ食料。
俺の個人的に大事な物。
あと、便利用具。
うん、サバイバルでも出来そうだ。
いや………無理か。
背中には鋼の剣を背負う。
未だ折れてはいない、刃こぼれはしてるが……大丈夫だろう。
それに、硬い敵と戦う訳でもない。
もしものために、臨時の砥石を持っているが……。
まぁ、大丈夫だろう。
「さて……」
俺は鞄を持ち、8班の寮を後にする。
寮を出た。
外の風景は至って普通、盗賊たちが何やら話し合っている。
人数は少ない。
皆、どこかに行っている。
そういえば……8班の皆も見当たらない。
寮には………昨日くらいしか居なかったし………何処だ?
まぁ、それは置いておこう。
もう一度、別れの挨拶をしたかったが……残念残念。
さて……向かうか。
俺はローバさんに指示された場所へと向かう。
そこへ木の影に隠れた小道だ。
(そうだ……セイランは、先に行ったのだろうか)
セイラは2班。
つまり俺と別行動。
そのため、セイランの行動は把握できていない。
もう向かったのか、それともまだ寝てるのか。
それさえもわからない。
うーむ、それだと少し心配。
今からでも、戻って2班の元へ向かうか……。
いや……だるいな。
もう結構先に進んでしまった……道が長い。
それに、他の班、女性がいる所に、入り込むのは……。
少し、まずい気がする。
2班にももちろん男はいる。
でもそれは、長い間班を組んでるからだ(ローバンの教え)
信頼が築かれているはず。
そこに俺が『ハイ、ドウモ』って入り込むのは……。
少し………気がひける。
だから、ここは先に行ってると信じて……進もう。
もう少しで濁流渦巻く川に到着だ。
早く行こう。
‐‐‐
「おぉ……激しいな」
川がよく見える所まで来た。
やはり、話通り、川は激しい濁流になっている。
落ちたら一溜まりもない。
しかし、この川を渡った先が、土の国への近道のある『洞窟』
行かなければ。
川は濁流、川に交差する少しの岩はある。
しかしそれだけでは心配だ。
足場が不安定、落っこちる事も考えられる。
この場合は……。
川は濁流、辺は木で覆い茂っている。
ここから行く方法………。
(うん、魔法を使おう)
俺の天才的な魔法の工夫があれば、方法はいくらでも出る。
ロープ魔法でターザン。
土魔法で橋づくり。
風魔法の風圧で、飛び越える。
…………川を泳ぐ。
いくらでも出てくる。
この中だと……やはり、ロープ魔法が、一番。
魔法量もあまり使わない。
それに凡庸、木に引っ掛けるだけ。
そのために………良い木があればいいのだが………。
俺は川の向こう側を見回す。
木々が立ち並び、影に隠れて暗い。
上手い事、木の枝に引っ掛けたい。
下側には、人の気配は見当たらない……いや。
なんか……木の下に誰か……いる?
動物ではない、人だ。
少し、影に隠れて見えないが………何だろうな。
(まぁ……いいか)
いい木を見つけた。
ロープを掛けるのに絶好の木。
よしきた、狙いを定めて、ロープ魔法を撃つ。
(ここ……!)
全身から手のひらへと魔力が流れ、それが放出される。
放出と共にロープが形成され、木めがけ飛んでいく。
(これを……こう)
上手くロープを回し、木へと巻きつける感じで……。
よし、うまく行った。
ロープが木に巻き付いた。
おっと……念の為、粘着魔法で固定しておくか。
粘着のネバネバしたスライムをロープへと飛ばす。
少し外したが、なんとか付着。
これで……大丈夫なはず。
さて、ようやくターザンする時が来たか。
「切れないだろうか……いや、粘着魔法だ……きっと」
きっと………。
考えないでおこう、考えたら『負け』な気がする。
(さぁ……飛ぶぞ………よし!)
俺はロープをしっかり持ち、勢いよく走り、跳ぶ。
川と足が少しスレスレだが問題ない。
越えればいいんだ、越えれば。
俺はそのまま、ロープの勢いに体を乗せ、向こう岸へと飛ぶ。
そして遂に、濁流渦巻く川を越えた。
地面に着地し魔法を解除。
なんとか上手く越えることが出きた。
少し背伸びをする。
こうする事により、体がしっかりハキハキする。
「さて………」
俺は横側、木の下へと向かう。
理由は簡単、向こうから見えた人の確認のためだ。
誰か居るのはわかっている。
俺は足を進め、木の下へと向かう。
「なんだ……セイランか」
木の下に居たのはセイランであった。
やっぱり先に行っていたようだ。
様子を見るに………木に持たれかかって寝ている。
それに荷物を前に持って……。
これは………寝落ちか?
いつここへ来たか分からない以上、何故こうしているか分からない。
とりあえず………起こすか。
俺はセイランに近寄り、起こそうと手を差し伸べる。
しかし途中、俺は向こう側の何かに気がつく。
何か、ではない……川の方向に『動き』を感じた。
ここから左側の川の奥。
気になった、セイランを起こそうかと思ったが……。
気になった。
(何なんだ?)
俺はゆっくりと、セイランを起こさないように立ち上がる。
そして、歩き出す。
向こう側にある、何かを確かめるため。
俺は足を進め、そのなにかへと向かう。
川は変わらず濁流の渦。
激しい川の流れ。
しかし、ここに……なにかがあるのは確か……。
決して気の所為ではない。
試しに見てみる。
川……魚か?
いや、全然違った。
時間も迫ってるし……あと十分くらいで切り上げよう。
それまで探すことにした。
ロベルトが川を眺めてる時、後ろから近づくものが居た。
成人した男……盗賊。
こっそりと、バレないように忍び寄る姿は、泥棒そのもの。
木の木陰を出る。
ここでも慎重さは欠かさない。
ロベルトとの距離、約2メートル。
(魚ではないなら、一体何だ……もしかして……岩?)
疑問が膨らむ。
川の中は何も見えない、時間の無駄だった。
やっぱり、気の所為だったか………。
このあたりでは異様に強い気配がしたんだがな……。
まぁ、そういうこともあるか、うん。
おっと……その前に。
俺は後ろを振り向かず、素早く、背後の敵の後ろに周る。
掌に土魔法をため、常時戦闘可能。
「うおっ!?」
俺に気づいた男は、驚かながらも後ろに振り向く。
そこで初めて、敵の顔を見た。
「あれ……?」
その顔はみたことがあった。
自分のいた8班のメンバーの一人である『ヴァス』その人だった。
何故、後ろにいるのか。
「ヴァス、どうしてここに」
「あ、いやぁ〜お前を見つけてよ、少し『イタズラ』してやろうとな」
そう言って、左手を頭裏に寄せ、笑う。
なるほど、だからか。
「それで、俺を川に突き落とそうとしたんですよね?
少し……度が過ぎるんじゃないですか?」
イタズラと言っても、この川に突き落とすのはな。
ちゃっと、酷いと思いませんか。
なんたって、濁流ですよ。
「えぇ? 普通だろぉ? 川くらい大丈夫だろ、泳げば余裕だぜ?」
なに言ってるんだこの人は。
「いや、無理ですよ」
「そうか? たが、ルクブットにスペンスは泳げてるぜ」
え、泳げるの。
まじで、本当に? やばくない。
この川、凄い激しいぞ?
(流石にこれは無理だろう、きっと)
‐‐‐
濁流の川の中。
その波に乗り、はげしく抗う男が二人。
ルクブット、スペンス。
世界を跨ぐ盗賊の一人である。
(まじで泳げてるよ………やば……)
これには俺も顔が強張る。
少し引き気味だ。
対するヴァスは少し誇り気味である。
「分かっただろ?」
「あ、まぁ、はい」
認めざるをおえない。
「あ、それよりもさ」
ここでヴァスが話題を切り替える。
次の話へと持って行くようだ。
「お前……ここを旅立つんだろ? 頭と一緒で土の国だろぉ?」
「! そうです」
話題は俺の旅立ちの話へと切り替わる。
大丈夫、時間はまだある。
「個人的な質問なんだが、ロベルトは旅人で合ってるよな?」
「まぁ、そうですね」
各国を周り、各神に協力を求める。
そのために旅をしている、旅人というのは合っている。
一応、就職はしているけどな。
「だったら、他の国、例えば……水の国とか行ったりするか?」
いきなりだ。
水の国か……なにかあるのだろうか。
「一応、行く予定ですよ」
「おぉそうか! なら、少し頼みたいことがあるんだよ」
「頼みたい事?」
「あぁ、少し待てよ」
そう言うとヴァスは自分の懐を漁りだし、何かを取り出す。
取り出したものは、封筒。
手紙………だろうか、ヴァスがこんな物を持っているとは。
「ほらよ、これを水の国のある領主の元へと届けてくれ、頼むぜ? 大事な物だからよ。
あ、中身はみんなよ?」
(分かっているさ)
それより、ある領主?
知り合いだろうか……それとも元いた場所の関連人物か。
俺はその封筒を受けとり、鞄の中へとしまう。
大事なものだ、それも宅配便。
慎重に扱わないと。
「よし、これで終わりだ、そろそろ頭の所へ向かってやれよ、時間が迫ってるぜ」
もうそんな時間か……。
8時までに向かわないと………。
「では、そろそろ行きます」
「あぁ、また会おうぜ、ロベルト」
「はい」
とりあえず、別れはこのくらいでよいだろう。
さて、動くか。
「あ、ちょっと待ってくれ」
転けそうになった。
まだ、なにか……ようがあるのか。
俺は再度振り向く。
「ロベルト、二人にも挨拶してやれよ」
二人。
ルクブットさんとスペンスの事だろう。
未だ川を泳いでいる。
これ聞こえるのか? 集中状態だし。
(まぁ、やらないよりはマシだ、言ってみるか)
「ルクブットさん、スペンス、そろそろ行きます。少ない間でしたが、充実してました、またどこかで!」
二人に聞こえるように、挨拶を告げる。
するとそれに応じたか、二人が川の中で目立た様に手を上げる。
聞こえた、凄いな。
さて、別れは済ませた。
………ロッカさんには会えなかったが……仕方ない。
また、どこかで会えるだろう。
さて、そろそろ行くか。
早い所、セイラン起こして、ローバンさんの下へと急ごう。
ロベルトは足を進めた。
‐‐‐
その後。
俺はセイランを起こして、森の中を進んでいた。
森の中は少し暗いが、難なく進める、簡単だ。
そう、入り組んでもいない。
それに、珍しく魔物にも遭遇しなかった。
ここは安全地帯か?
おっと……そうこう言っている内に、目の間に光が現れた。
あそこへ向かえば、きっと。
ローバンさんの下へ行けるはず。
俺達は木陰を越え、光が指し照らされし中へと足を進めた。
木陰を抜け、広い所へと出た。
しかしあたりは草木に囲まれた、異様な広場。
ここだけ、ガランとしている。
(ローバンさんの話によれば、この辺りのはずなんだが…)
ローバンさんはどこにいるんだ?
「セイラン、周りに誰かいないか?」
「んーいないね」
「おかしいな」
違う道にでも来てしまったか?
とにかく、場所を確認しないと……どう確認するか。
ここは地図にも載ってない。
ここから考えられる方法はあるのか?
いや、考えても無駄無駄。
とりあえず、歩いて探してみよう。
「セイラン、歩きながら探すから、協力頼む」
「分かった、後ろ見とくね」
「なら、俺は前か」
さて、前後それぞれ見ながら探索。
果たして……ローバンさんはどこに居るのだろうか。
ローバンが言うに洞窟。
隠してるとか言ってたから……『見つかりにくい場所』
ここから考えられる場所は……。
草木のどこかに、洞窟がある可能性が高い。
そこを探せば、見つけれる。
多分見つかるだろう。
さっそくやってみよう。
俺とセイランは辺を見回しながら、散策を始めた。
草木が邪魔だ、今の所洞窟は見当たらない。
一体どこにあるのだろうか。
そもそも洞窟はどのような外観をしているのだろうか。
洞窟にも種類がある。
大きさ、形、中、様々だ。
そこから探すとなると……大変。
それに、ローバンさんも見当たらない。
やっぱり、道を間違えたか?
いや、俺の予感が正しければ、この道で正解のはず。
この森を迷わず、進めている。
決してぐるぐる森を周回しているわけでは無い。
森を探索するにあたって、俺は分かりやすい目印をつけている。
なので、行った道は分かる。
しかし、それでも見当たらない。
気づけば時間を少しだけ過ぎてしまった。
ローバンさん待っているだろうな。
(ん?)
探索中、ふとそれらしき物が見えたような気がした。
右側、少しだけ……『穴?』がいてある。
気になった俺は、セイランに声をかけ、行ってみることにした。
『穴』が見えた場所は草木で隠れ覆われている。
よく見ないと見つからないだろう。
しかし、そこは他とは違う。
なんだか、壁のような形をしていた。
試しに触ってみる。
(硬い……石か、これは)
触った感触は、普通に石。
自然にできたものか、意図して作られたものか。
どちらにも捉えられるような感触をしていた。
まるで、石の形壁にツタが絡まって、隠れているような感じ。
古代遺跡のような。
「謎だ、だめだな」
「でも、ここしか怪しい所はないよ?」
それはそうだ。
ここが怪しいし、何より穴が気になる。
覗こうとしても、暗い。
光魔法あるじゃん!
そう思ったが、こんな天気の良い日に使っても効果なし。
あと、穴にいれるのが困難。
「結局分からないね」
「あぁ、しかしここにこんな物がある以上、”何か”はあるだろうな」
「探ってみる?」
「……少しだけな」
ちょっとだけ、探ってみるか。
あんまり触ってないし、もしかしたら気づいていない何かがあるかも知れない。
もしかしたら、拠点の時みたいに隠し通路があるかも。
壁を触る、ツンツンしたり、叩いてみたりした。
反応は無い。
(やっぱりだめか?)
手で触っても反応ない。
依然として、状況は変わらない。
………魔法でも使うか。
試しに、土魔法を作成。
三十センチほどの土塊を゙作り、この壁へと激突。
しかし、ちょっとかけた程度。
一方セイランは、水魔法を使ったり、氷で特定の部分を凍らせたりしている。
でも……やっぱり反応は無い。
どうするか………時間は迫ってるし。
当てずっぽうに、壁を作った土の棒でつついてみる。
ツンツン。
ツンツンしています。
ツンツンしているが、駄目ですね。
(やっぱり無理だったかーはぁ)
ロベルトは精神的に少し疲れを感じた。
頭を使ったのだ。
脳が疲労している。
少しだけ、壁にもたれ掛かる事にした。
(ふぅ……)
俺は一息つこうとする。
しかしそれは無理だった。
突如、後ろが空いたかのような感覚を感じた。
それと同時に、力を抜いた体が後ろへと倒れる。
((!?))
突然だった。
ロベルトはいきなりの事で驚き、そのまま後ろへと転倒。
セイランから見た光景。
それは、ロベルトがもたれ掛かった草木の壁。
それがいきなり、後ろへと倒れた。
そう壁は後ろへと倒れ伏せたのだ。
それによりを空洞が空いた。
「痛ぇ……なんだぁ?」
ロベルトは目線を上にやる。
光景は暗い天井、しかしセイラン側は先程の朝っぱらの良い天気。
セイランは驚きの表情をしている。
俺は一瞬困惑した。
しかしそれと同時に、辺の違和感に気づく。
俺は今、どこにいるんだ。
起き上がり、あたりを見回す。
ロベルトがいた場所は薄暗い天井をした洞穴。
つまり……『洞窟』であった。
それは、二人がローバンから受けた目的地である。




