第六十一話「盗賊の宴、旅の再開」
拠点奪還が成功した夜。
カサドラ盗賊団の皆はアジトにて宴を上げていた。
長い拠点支配からの奪還。
炎の国の兵士の撃退。
数ある成果をを祝うため、盛大な宴が挙げられていた。
もちろん、俺とセイランも参加中だ。
盗賊たちの雄叫びがこだまする。
酒を組み合い、飲む。
盗賊たちの中には、酒飲み勝負をしてるものもいる。
賑やかで豊か、食堂は温かい空気で包まれている。
天井の灯りが、食堂を照らす。
その光はスポットライトでも当たってるかのよう。
全体を暖かく照らす。
その食堂の机の席に座り、俺は飲んでいた。
「ふぅ……」
酒を飲み終え、机にグラスを置く。
結構濃いお酒を飲んでしまった……少し酔ったか?
(それにしても……豊かだ、戦闘直後とは思えない)
これでも1時間前まで、決死の作戦を遂行していた。
失敗は許されない作戦。
今の賑やかな状況から見ると………考えられないだろうな。
前と後で様子がガラッと違う。
これも盗賊たちの習慣なのだろうか。
「あっ、ロベルト!」
後ろから声がした。
振り向くと、そこにはセイランが居た。
(1時間ぶりか………)
時間的にもあまり会話できてなかった……折角だから会話しよう。
なにせ……俺の『旅仲間』だ。
「さぁ、座ってくれ」
「ありがとう」
セイランに席を用意し、座ってもらう。
休んでもらわないとな。
「……さて、2日ぶりにこうやって話すな」
「そうだね」
「俺がいない間、大丈夫だったか? 班での行動は上手くやれたのか?」
「母親じゃないんだから、そんなに心配しなくていいよ」
セイランが笑って話す。
ふっ……心配性だったか。
彼女も上手く出来る、そう信じたはずだ。
「それなら良かった」
一口酒を飲む。
うーん……良いな、こういうの……。
飲むてが止められない。
いつの間にか、こんなに酒を要求する体になっていたとは……。
依存ではないが……。
日々の疲れから来る欲望だろう。
「あ、セイラン飲むか?」
一応彼女は酒を飲むのだろうか。
「う〜ん……いいかなぁ」
「そうか」
セイランは飲まないか。
いや、飲むタイプではないか。
少しだけ静かな時間が過ぎる……。
その間、セイランは盗賊たちを眺めている。
俺も酒を飲みながら見物。
はっきりいうと……。
(何を話せばよいか……全然出てこない………)
話したいけど……何を話せばよいか。
全く出てこない……本当に………。
それに、今俺は酔っている。
少しとはいえ、酔い状態だ、何か変なことになるかもしれない。
ここは慎重に。
(迷うな………)
さて……何を話そうか。
………とりあえず、班の事について聞いてみるか。
「セイラン」
「ん、なに?」
「セイランのいた二班……どうだった?」
よし、聞いてみた。
正直、他の班が何をやっているのか、気になっていた所。
「うーん……」
セイランは手を顎にあて悩み始めた。
悩むほどの事……なのか。
そうして悩むこと数十秒。
セイランはロベルトに班の事を話し始めた。
「二班は主に待機と回復役を担当したんだ」
あぁ、回復役。
セイランの班だったのか。
うん、セイラン自体僧侶ポジ、ぴったりではないか。
回復魔法も得意。
適任はいないだろう。
回復の話だが。
直にポーションをかけるのと、飲む。
魔法ならば傷口に手を当て回復魔法を唱える。
これにより、成功する。
「班の六人で怪我をした盗賊たちの回復。
あとは……道具類の点検かな」
なるほど。
待機といっても、役割はあるようだ。
と言うか……。
「この戦いで負傷者は少なかっただろう?」
「うん、たしかに……必要あるのかなぁ……って思っちゃった」
今回、味方側の負傷者は三四人程度。
これだけならば………回復は要らない。
でも、いるだけマシだろう。
なにせ、回復役がいるだけで、モチベが上がる。
怒気向上につながる。
一斉攻撃、そして中からの崩壊が聞いたのか。
全く苦戦はしなかった。
俺的には少し苦戦したのは………地下での副兵士長との戦い。
やっぱり、歴戦であった。
ロッカさんがなんとかしてくれたが……なかなか手強い。
それにあの副兵士長……。
隠密行動が異様に上手かった。
炎の国の兵士たちは皆こんなのばっかりが多いのだろうか。
「まぁ……仕事は多かったけどね」
「大変だったか?」
「それは、もう!」
セイランは凄い勢いで、班での行動を説明し始めた。
点検の際、不備があったら再確認。
武具、ポーションの種類整理。
その他もろもろ………。
数ある沢山の物を班員でこなすらしい。
人数が多い分、量も多い。
「へぇ」
「あと、班の中での役割分担………私だけ他の人より多かったの」
そういうのはよくある。
前世でも………仕事いや……学校の事業で友達が分担していた。
ちなみに俺は『0』
「新人だからじゃないか?」
「新人は仕事……多いの?」
それは……しらんけど。
でも……新しく来たからには、仕事を多くやらせる。
これがやり方なのだろう。
ここの盗賊団の掟みたいな。
「でも……疲れたぁ………」
セイランが体と腕を伸ばし、机にもたれかかる。
久しぶりの長い緊迫感身も心もストレスが溜まっているようだ。
俺も疲れを感じている。
「ふかふかのベッドに寝たーい………」
セイランが甘えたことを言っている。
それは……言わないほうがよい………欲しくなるからな……!
ふかふかのベッド………。
ホテルのベッド。
毛布………8班の寮より良い。
(あー、でも……寝たいな、ふかふかのベッド……)
うん……寝たい、よし。
そのためにも……早く旅立とう。
「セイラン、明日、ローバンさんに言って旅立とう」
「えっ、明日から!?」
「あぁ、早く行ったほうがいいだろ」
俺も早く土の国へと向いたい。
土神に協力を求めたいし……何より。
こっちには『聖閤堂』から受けた仕事がある。
(早々に済ませたいところ)
「うーん……」
しかし何やらセイランは悩んでいる様子。
なにか……あるのか?
心残りか?
「セイラン、心残りでもあるのか?」
「え? え、いや……そんなことは、ないんだけど」
だが心中では、なにか悩んでるように見える。
きっとなにかしらはある。
だが、それは……言えない事なのだろう。
無闇にそれに振れるのもだめだ。
ここはそっとしておこう。
もう一度酒を口に含み、喉の奥へと飲み込む。
その分だけ、気持ち良い。
うーん、なんとも。
‐‐‐
「おーい」
するとまたもや後ろから声がした。
俺とセイランは振り向く………しかし後ろには誰もいない。
え、なんだ?
後ろには誰もいない。
しかし、声が聞こえた、二人ともだ。
(……気のせいか………)
俺は再度机の方向に向き直る。
机には酒、そして机の奥側には人が立っていた。
その男、ローバン。
先程の声を出す男。
いきなり現れたことで、俺は大きく驚いた。
「うおっ……!?」
転びそうになったが、なんとか持ちこたえた。
いきなりなので、ビックリ。
「お前ら、元気か」
「ろ、ローバンさん……」
「えっと……お久しぶりです……?」
急なので、上手く呂律が回らない。
セイランは疑問形になっている。
ローバンは、机に荷物置き、机の奥側に座る。
向き直る形となった。
「さて、話に来たぞ」
どうやらローバンさんは話をしにきたらしい。
これに限ってはちょうどよい。
俺達の『旅立ち』について話そうかと思っていた所だ。
「あー、お前ら……疲れてるな?」
疲れの様子を聞いていた。
そりゃ……そうですよ………1時間前まで戦闘していたんですから。
「作戦語なので……」
「まぁ、それもそうか」
「……ローバンさんは疲れてないのですか?」
「あぁ、俺は慣れてる」
慣れてるって……。
慣れてたら突破できるのか、この世界の人間は。
普通に人間……いや『超人』じゃん。
「話に移ろう」
ローバンさんが一度姿勢を整える。
真剣な顔つきで俺達二人を捉えた。
「ロベルト、セイラン、お前たちの協力もあり、奪還作戦は上手く行った。
感謝したい」
ローバンさんはそう言って、俺達にお礼を申し出た。
そんな大袈裟なと思ったが………。
これも普通なのだろうか。
「あ、はい……どうも」
「そこで………『報酬』の話に移るのたが……聞くか?」
『報酬』
その言葉を聞いて、俺は目が変わった。
まるで、餌に食いついた魚のように、とっかかったのであった。
「ぜひ……聞かせてもらいたい」
「うむ……御嬢さんは?」
「あ、じゃぁ……私もお願いします」
俺とセイランは了承した。
「では……報酬の件についてだが……」
ゴクリ……
俺は喉を鳴らし、今か今かと答えを待ち望む。
真剣な顔たちで、体を前に出す。
セイランはジト目で横から見物。
「報酬は………」
「報酬、は………」
ローバンは答える。
「報酬は………道だ」
はぁ?
道だ……と……?
道ってなんだ……?
金ではないのか。
まさかまさかの予想外の答えに、内心驚き思考を回す。
「あの……道とは?」
頭で考えているロベルトを横目にローバンに問いかける。
それにローバンは言う。
「道……すなわち……土の国への道案内というわけだ」
「! 土の国……」
その答えに、またもやロベルトは驚く。
土の国。
それは……ロベルトが次へ行く場所……その道案内。
なぜ報酬が道案内なのか……。
そもそも、すでに俺は土の国へと道を知っている。
必要のないことだ。
(それか……あれか?)
土の国へ行く間に、凄いサービスでも提供してくれるのか。
それだったら……素晴らしい。
しかし、必要はない。
それに………『報酬は金のほうが良い』
(……おっと、口が滑った……ゔっ゙ん!)
というか……何故、俺達の行く場所を知っているんだ?
「道案内……あの、何故……旅先をご存知で?」
正直に、聞いてみた。
ローバンは一瞬考える仕草を見せたあと、ロベルトに答えた。
「実はな……お前たちの牢屋生活中の話、すべて聞かせてもらったんだ。
だから、知ってるというわけだ……まぁ、盗み聞きだな」
牢屋での生活。
あのクソ不快の中、土の国について話したっけな……。
どうだったか……覚えてない。
(でも……まぁ納得した)
「なるほど……えだと、道案内って……土の国まで、ですよね?」
道案内はどこまでなのか、そこに付いて聞きたい。
「正確には、土の国内部までだ」
中まで案内してくれるのか。
心強い……でも、道は知ってるけど。
「あの……」
「む、どうした?」
「私達……すでに道は知ってるんですけど……」
遂にセイランがその事に触れた。
さぁ、同返答する?
「その事が……今から話すことに繋がる……」
今から話すこと……。
なんだ、その答えは……先程の話が、用ではなかったのか?
「……聞けるか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「わ、私も」
「うむ……」
さて……ここからが用事。
道案内の真相解明の時か。
「道案内なんだが……簡単に言うと、別の道を通る」
「別の道?」
どうやら違う道を通るらしい。
この山地で、あの道以外、ちゃんとした道……あるのか?
まぁ、どれも舗装されてないのは同じだけども。
「あぁ、とある事情で、お前たちが歩くであろう道が通過できなくなった」
通過できなくなる………。
それは……なぜか、何故道が通れなくなるのだ。
ロベルトは頭を悩ませる、そして思い当たる節が見つかった。
(炎の国の遠征軍)
炎の国の遠征軍ならば……。
ここら付近を遠征中、軍隊。
コイツラがいるから通れない。
だいたいそういうわけか、戦争中だしな………納得。
それに先程戦ったばかり、敵として見られてるし、俺の姿もバッチリ。
この世界に前世みたいな連絡手段はないと思うが……。
もし、伝言兵がいるとすると………。
恐ろしい、襲われる可能性が高い。
「作戦を手伝ってくれたお前達のためにも、俺が別の道を案内する。
まぁ、大体そんな所だ」
なるほど………だから別の道。
うん、頼りがいがある。
金はもらえなかったけど、他の道を教えてくれる。
少し不安だけど、安心だ。
心配はないだろう。
「そうだったんですか……それは、ありがとうございます」
「おぉ、良かった……あと……旅立つのは明日で合ってるか?」
「はい」
明日の朝早くからここを旅立つ。
早くから行って、昼くらいに土の国へつければ良い。
これが俺のプラン。
そうだ、行く前に、皆にも挨拶しておくかな。
「よしそれなら安心だ、明日出発、俺が案内……いいな?」
「大丈夫です」
とりあえず、決まったか………。
何日ここに滞在したか………。
最初は驚いた、なにせ盗賊に攫われるという展開。
アニメとかにしかない展開が、実際に起こったのだ。
無事だったし、これも経験………。
そこから、不快だらけの牢屋生活。
トイレもきたねぇ、衛生もねぇ、何もかもがぁ……終わりだ。
暇すぎて、オセロを作ったたし。
そこから奪還作戦。
8班との関わり、少なかったが、協力関係を築けた。
それに、ルクブットさんには世話になった。
旅立つ時に、挨拶……しておこう。
「よし、これで話は終わりだ」
「ふぅ」
話は終わった。
現在は午後10時、結構いい時間帯だ。
そろそろ寝るかなぁ。
「では、ローバンさん、そろそろ寝床につきたいと思います」
「おぉ早いな」
「旅立ちに備えるためです」
俺はそう言って、荷物を背負い、再度向き直る。
「ほんとに行くんだ……」
「まぁ、そうだな」
あたりを見回す、現在も賑やか、喧騒も聞こえる。
でもそれが、盗賊たちの日常を表しているのである。
いい眺めだ。
「あ、ロベルト」
セイランがなにかに気づき、俺に語りかける。
様子を見るに、なにか見た感じ。
「どうした?」
「えっと……ほんとに寝るんだよね?」
何を聞く、先程言ったばかりじゃないか………。
「あぁ」
「えっと……無理だと思うよ………」
はぁ?
無理だと? どういうことだ。
なぜ、そう言えるんだ。
俺がそう思っていると、後ろから突然何かが覆いかぶさった。
それも重い、人の感触。
まさか………盗賊。
俺は顔を横に向ける。
するとそこにはヴァスが、俺に覆いかぶさっていた。
見た所顔が赤い、それになんだか酒臭い。
どうやら酔っているようだ。
「ロベルト〜どこ行くんだぁ〜?」
「うっ」
口調までもが、酔いに侵されている。
これはまずい………逃げるしか。
俺は抵抗する。
しかし、ヴァスは全然俺を離さない、抵抗しても無駄というのか。
「ヴァス、どけてください」
「どかねーよ」
「寝たいんですが………」
「今日は宴、楽しも〜ぜ?」
すると今度は左手で、肩に覆いかぶされる。
これで……全身が俺に集中。
移動するにしても重くて無理。
魔法があるが、この場で使うのは、流石にまずい。
「抵抗余地なしだな」
「アハハ、仕方ないよ、ロベルト、今日は楽しもうよ」
セイランは楽しむと言っている。
しかし……俺は寝たい。
どうにかならないか。
すると、ローバンが近づいてくる。
「まぁ、仕方ないな、ロベルト今日は楽しもうや。
大丈夫、そう簡単には寝かせねぇからよ」
怖い。
そして何やら怪しげな紙を出してくる。
「ここに……よし、これに今回の目標が書いてある。
これを達成してくれ、突然だがよろしく」
そう言って、俺に紙をわたしてくる。
俺は中身を見る。
中は。
・盗賊と関わる。
・酒を飲み漁る。
・喧嘩する。
などの盗賊専用ガイドブックみたいな目標があった。
俺には合わない。
でも、セイランも俺をワクワクした目で見つめてくる。
この笑顔、裏切れない………。
なにせ、可愛い子の笑顔を見ると、妹を思い出す。
リシアは可愛いからな………だから。
「分かりました」
「よし、来た」
「楽しもー!」
「行くぞロベルト〜」
「うグッ」
ヴァスに強引に連れられ、宴の真ん中へと向っていく。
連れられるたびに、ヴァスの腕が首にかかり苦しい。
耐えろ……耐えるんだ。
俺とヴァスはそのまま、宴の中へと向かっていった。
今思う、この宴は良かった。
なにせ、日々のストレスを解消してくれるのだ。
そして、盗賊との宴だ。
普通は経験できない。
やはり人生何が起こるかわからわない。
これが醍醐味、楽しいものだ。
俺の旅の中で、未だ記憶に残っている……。
振り返るのは、悪くない……。
さて、行くか。
次なる国へと。
遅くなってすみません、これにて第四章は終了です。
なんとか十話に抑えられまして、話が調整できた所です。
次は第五章土の国編。
土の国は風の国と同じくらいあると思います。
その分登場キャラクターも増えます。
読み返しで覚えていただくと光栄です。
作品が良かったという方は。
良ければポイント、ブクマもお願いします。
ポイントは下にある、
☆☆☆☆☆の部分から入れることができます。
ぜひぜひ、ポイント、ブクマ、よろしくお願いします。
次回は間を開けます。
読み返しなどして、気長にお待ち下さい。
それでは




