第六十話「副兵士長との戦い」
最初に動き出したのはスピンスだった。
剣を片手に、副兵士長の懐へと向かい走り出す。
それに応じ、副兵士長も剣を構え、攻撃に備える。
剣を素早く回転させ、相手の懐へと潜り、首に向ける。
しかし躱される。
だが、そんな所で止まる男ではない。
巧みに剣を使いこなし、連撃を幾度となく打ち込む。
その剣筋は素早い。
ここから見るに剣の技術は高い。
これも……長い盗賊人生の成果か。
「どうだ……!」
スペンスは先程とは違う一撃を繰り出す。
体重が乗った、重い一撃。
副兵士長は少しよろけるが、未だやられる事はない。
依然隙はうまれない。
流石、副兵士長。
戦闘には慣れてるようだ。
「小癪な、しかし剣筋は褒めてやろう……しかし」
副兵士長は大きく剣を振り、構える。
先程とは違う。
なにか……放ってくる。
感はあたった。
次々と剣に炎のエネルギーが宿っていく。
それと同時に辺りに炎のエネルギーが漂ってきた。
あれは……『炎華斬』!
『炎華斬』
攻撃方法は真空斬と同じ。
しかし、あたりに、炎を撒き散らす。
炎がつかない所でやられれば!非常に厄介である。
剣士の技の一部。
「これを受け止めてみせろ」
相手は放つ気である。
対するスペンスはというと……。
「ハッ、俺の力……耐久力! 見せてやるよ、貴様にな」
こちらも防ぐ気満々だ。
しかし、炎華斬をあの剣で受け止めれる訳が無い。
あれでは、流石に無理だ。
(あれは……無理か)
「ロベルト、土魔法で、壁を作れ、なるべく頑丈に。
その後は……俺が向かおう」
ルクブットさんから言われた。
やっぱり、ルクブットさんも気づいていた。
任せてください。
俺が硬い防御壁を作ってみせますよ。
辺の炎エネルギーが剣に集中。
その時が来た。
「受けろ! 炎華斬!」
「さがれスペンス!」
副兵士長の声とともに、スペンスを後ろへ下がらせる。
「はぁっ!?」
スペンスは急な行動に体制を崩し、後ろへ背中から転ぶ。
転んでばっかりだが、仕方ない。
「ロベルト」
「分かってます」
ルクブットさんの指示通り、土魔法を使う。
作る魔法は……なるべく硬く、頑丈。
そして身を守る防御壁。
前世で言うところの『壁』『堤防』……これだ。
イメージができた。
「ストーンウォール!」
声とともに、自身らを守る土の防御壁が出現。
それは……俺達を守る防護壁。
副兵士長の放った技が、防御壁に直撃。
凄まじい衝撃と音が鳴り響く。
それと同時に、辺りに炎が溢れかえっていった。
「なかなか……熱いな」
「耐えられるのか! この壁は!」
耐えられるはずだ。
なにせ、魔力の高い俺が作った、得意魔法である土で作っからな!
魔法使いではないが、魔力は高い。
防げるはずだ、きっと。
しかし……なんだが炎が漏れてるような気を感じる。
まさか……溶けているのか?
俺は念の為、内からも土魔法を重ねる。
そうしていると、炎が少し弱まり、地面に漂うのみになった。
(なんとか……防いだか)
しかし、危なかったというべきであろう。
もしかしたら……この壁が壊れていたかもしれない。
感情に浸る。
そうしていると、ルクブットが土壁を乗り越え、上へ出る。
「俺が相手だ!」
「何……!」
技の後の突然の奇襲に驚く副兵士長。
しかし迅速にものを対応。
ルクブットと服兵士長の剣が同時にぶつかる。
その時衝撃で火花が散った。
鋼と鋼の戦いである。
「む……力強いか………」
「俺はこの班で一番、統括に優れている! このまま!」
ルクブットは副兵士長の剣を弾き返し。
鎧に一つ斬撃を入れる。
それは……成功した。
「ぬっ……!」
完全に断つとまでは行かないが、鎧は貫通できた。
だが……所詮は腹に傷が少し。
重症とまではいかなかった。
「刺さらないか……!」
「無駄よ!」
瞬時に剣を振り、相手の攻撃を防ぐ。
そのまま攻防戦を繰り広げる。
そこへスペンスが走り向う。
それに気づいたルクベットがある作戦を思いつく。
連携だ。
「スペンス!」
声とともに、ルクベットが後ろへとのけぞる。
「あぁ!」
ルクベットが下がった瞬間。
突然正面にスペンスが現れ、驚く副兵士長。
スペンスはそのまま剣を振り攻撃。
これぞ連携プレイ。
上手くコンボが決まった。
副兵士長の剣を飛ばすことに成功。
……しかし、依然副兵士長は倒れはしないまま。
「降参するか?」
スペンスが剣を首に当て、脅す。
しかし、副兵士長は譲らない。
「断る……炎の国の兵士は皆信念を持っているのだ、決して屈しない……!」
「ハッ、そうか……」
ならば吹き飛ばすのみ!
俺は地面を蹴り、前へと駆ける。
手には風圧を添えて………これを奴に叩き入れる。
風の魔力を高め、なるべく吹き飛ばせるよう調整。
そして周りに被害のないよう、一点に圧縮して放つ。
これぞ……魔法の工夫。
「なら」
「スペンス、下がってください!」
首元に剣をつけ脅しているスペンスに発言する。
驚いたスペンスは後ろを振り向く。
ロベルトはスペンスを退け、副兵士長の前に出る。
そして、風魔法を放出。
一点に集中された風の魔力が解き放たれる。
圧縮された魔力と共に、副兵士長が後ろへと吹き飛んだ。
結構な勢い、奥の物が散らばる中へと突っ込んだ。
「くらった……」
「……風魔法か」
奥は煙で吹きかえっている。
あのスピード、相当な威力になるはずだ。
「速度も申し分ない、あの音にあの衝撃、すごい威力だ。
無事だとはいえ、多少の怪我は負っているだろう」
それは確かだ。
俺のだした風の魔法はとてつもない威力を発揮した。
なにせ、鎧を着た兵士を吹き飛ばしたので。
副兵士長は倒れているだろう。
気もあまり感じない……瀕死だ。
なにせ全身に鎧を着ているのだ。
中の衝撃も凄まじいはず。
(この期は逃さない、今が捕縛の時)
「ロープの魔法で、捕縛に取り掛かります」
「分かった、気を付けろよ」
「はい」
煙の中に向かい足を進める。
煙の中は深く濃い。
地下という影響もあるだろう、まるで森の奥の霧みたいだ。
一応見えるが……視界が遮られる。
まさか、あの衝撃だけで………。
風魔法という点もあるか……、煙が邪魔でよく見えない。
(いっその事、今度は魔法で煙を晴らすか?)
いや、相手にもバレる。
それに……この空間のほうが、緊密に行動型出来る。
さて………探すぞ。
辺を手当たり次第に探し出す。
そこら辺に倒れていないか、棒を使い、辺を探る。
棒は土魔法で作成した物だ。
「ここに……」
棒で辺をフラフラする。
しかし当たるのは床、物品のみ……副兵士長の姿は見つからない。
お。
何か硬いものにぶつかった、しかも金属。
副兵士長の鎧の可能性がある。
俺は硬いものに近づき、目を凝らしよーく見る。
よーく見てみると、その硬いものが現れてきた。
それは……金属。
しかし、鎧ではない。
(何なんだ? これ……)
それは……金属、しかし鎧ではない………よくに言う……。
『機械』のようなもの。
(これ………機械か?)
いや……ここは異世界。
それも中世のような世界、ド◯クエのような世界観。
そんなハイテクな……。
そんなフ◯イナルフ◯ンタジーみたいな機械。
あるわけがない。
だとするとこれは……。
もしや……古の遺産? 違うか……。
とにかく………気になる………持って帰ろう。
俺は機械を胸のポケットの中にいれる。
この機械、重くない他、手持ちサイズである。
なので持ち運びしやすい。
と……そんなことより、副兵士長の姿が見つからないんだった。
一体どこに行ったのか………。
いや、どこかにいるはずだ、探せばいつかは見つかる。
「おーい! ロベルト、居たか!」
すると突然、ルクブットさんの大声が聞こえた。
多分状況確認だろう。
あいにくまだ、見つかっていない……。
「いえ! まだ見当たりません!」
この煙の中、移動できるわけもない。
移動したとしても、気づくはずだ。
「なに……辺りに気配は!」
「ありません!」
こちら、異常なし。
ルクブットさんと、スペンスの会話が聞こえる。
何やら真剣のようだ。
あ、あと……ヴァスにロッカさんは大丈夫だろうか。
そんな事思いながら、捜索を続ける。
しかし、ロベルトは気付かない。
後ろ……背後から魔の手が、迫っていることに。
その魔の手……それは……人。
それも強敵……ロベルトの知る人物。
それは……。
『副兵士長』その人である。
この男。
煙の中など、隠密行動が大の得意。
くらいところ、見つからな場所、様々なところに隠れられる。
まさに盗賊のような特技。
だから遠征軍に選ばれた。
静かな時の中、隙のない動き、鮮麗された知恵。
これらすべてを、副兵士長は今、体現している。
(正々堂々……ではないが、こればかり仕方ない………青年悪く思うな………)
副兵士長は剣をスラリと持ち、ロベルトの首めがけて構える。
その剣は鋭く、力が籠もってる。
一振するだけで、人の首程度簡単にんで行くだろう。
(正々堂々……)
副兵士長は思った。
これが………正々堂々なのか……。
不意打ちしざるおえない状況でも、心のなかで思った。
この男自体、仁義に熱い男。
戦争を生きる炎の国の副兵士長として活躍してきた男。
彼は幾度となく戦ってきた。
しかしその中で、盗賊のような卑怯な真似などは……。
断じて、行っていなかった。
しかし、今、それに近い事をしている。
その状況がただただ、男に取って悔しかった。
自分の中にある仁義に反した。
副兵士長は声をあげ、ロベルトに向け剣を振った。
「くらえぇぇえ!」
「!?」
突然の出来事。
背後から現れ、今にも剣を振りかざそうとする状況。
突然のことに、左手に持っていた剣を振ることができず、唖然とした。
このままでは殺られる。
副兵士長が振りかざす剣が、ロベルトの首めがけ向う。
そして剣が首と当たる瞬間。
一つの影が、煙の中から現れる、それは……大剣。
金属の激しい音が鳴るとともに、ロベルトと副兵士長が吹き飛ぶ。
それも同タイミング。
それだけではない。
二人が吹き飛ぶとともに、辺をおう煙が一瞬にして晴れる。
な……なんだ。
一体何が起きた……俺は……。
俺は辺を見る。
辺は煙が晴れていた、そして……。
目の前に大剣を背負った、ロッカさんが立っていた。
大剣は大きく、勇猛さを感じる。
ロッカさんに気づいたルクベットにスペンスは驚く。
なにせ一瞬にして煙が晴れたと思ったら、ロッカがいた。
それもロベルトに副兵士長が吹き飛んで。
「! ロッカ!」
「あんたも来たのか」
その言葉にロッカが二人を見る。
その顔にはいつもどおりの真剣さが伺える。
しかしその時、後ろから物音がした、その音に気づく。
その音は副兵士長が立ち上がった音。
ロッカは向き直り、副兵士長を強く捉える。
「うっ……お、お前は………」
副兵士長がロッカを見る、怪我をしているようだ。
腰を抑えている。
多分先程の吹き飛びで負ったのだろう。
「……ロベルト、ルクブット、スペンス」
すると突然、ロッカさんがここにいる皆の名前を呼んだ。
初めて名前呼ばれたかもしれない。
「ここは私がくい止める、先に一階へと急ぐがよい」
するとそんな事を言い出した。
突然、しかも『私がくい止める!?』
副兵士長を一人で!?
流石に信じられなかった、それよりも危険だ。
「っ……ロッカさん! 流石にそれは……!」
「任せよ、私は強い」
強い……。
自身はある様子。
「……しかし」
「ロベルト、ロッカなら大丈夫だ、信じてあげろ」
ルクブットさんが肩に手を置き、俺にそういった。
ルクブットさんもロッカさんを信じている。
これは……信頼。
「ロッカさん……行けるのか?」
「あぁ、任せろ」
スペンスがロッカに問いかける。
答えは変わらない。
「分かった」
そういうと、スペンスはそれ以上何も言わなかった。
多分、信じてるのだろう。
仲間だから、長い時間一緒にいた、だから信頼がある。
ロッカさんならば、大丈夫という、安心感がある。
俺もその仲間だ。
なら、俺が信じなくてどうする。
「分かりました……」
ここは信じよう、ロッカのためにも……。
しかし……。
「無事に帰ってくださいよ」
「あぁ」
ロッカさんはいつもどおり。
言葉足らず、しかし……なその安心感がある。
頼れる裏方みたいな……安心感。
「……ロベルト、行くぞ」
「はい」
俺はルクブットさんに連れられ、スペンスと共に一階へと向う。
最後に見た光景は、副兵士長に向き直るロッカさんの姿だった。
その後
一階へ上がった俺達。
一階には兵士が沢山いて、すごく面倒だった。
敵のリーダーの下へ向う途中、兵士の山の上で、地下での菓子を持った、ヴァスを発見。
どうやら寝ていたらしく、後で頭を叩かれていた。
そしてリーダーの下へたどり着いた俺達。
リーダーは炎の国の遠征軍のリーダー。
このリーダーは副兵士長ほど強くはなく、すぐ捕縛できた。
その後はリーダーから情報を聞き出したり。
犯行を止めたりと色々あった。
犯行を止める時、8班皆が蹴りまくっていた。
俺は少しだけ可哀想な気持ちになった……流石に酷い。
「ドカーンと行きますよ」
「頼む!」
爆発魔法を貯め空へと打ち上げる。
大きな音共に、イメージした花火が空を照らした。
それは……我ながら綺麗だった。
前世でも、見たことがあった、実際にも。
家族で見た夏の花火。
いい思い出だ。
まぁ……病弱の体のせいで………あまり、楽しめなかったが。
それがちょっと悔しい。
俺の花火が合図となり、盗賊団の一斉攻撃が始まった。
盗賊団は強く、精鋭ばかり。
瞬く間に、敵拠点を制圧し、拠点奪還に成功した。
敵の炎の国兵士たちは一度牢屋の中へと捉えることに成功。
これぞ団結力。
拠点を奪還したあと、皆で一度下のアジトに戻り宴をあげた。
ロッカさんも無事だった。
あと、久しぶりにセイランと再会した。
でも……前に分かれた時より、少しだけ魔力が強くなっていた。
修行でもしたのだろうか。
いずれにせよ、良かった。




