第五十六話「盗賊たち」
ローバンと協力関係を結んだロベルト、セイラン。
二人は、盗賊団での作戦会議のため、現場に向かっていた。
現場はローバンの家から左斜めにある、大きな建物である。
ちなみにこれを作るのに、結構な時間が掛かったのである。
もちろん木造である。
「ここですか……」
俺達はローバンに連れられ、大きな建物の前にやって来た。
ここから見るに、十メートルはある。
2階建て、屋根付き。
ローバンさんの話によると、一階は食堂。
2階が個室となっているそうだ。
「ここだ、入るぞ?」
「分かりました」
「大丈夫です」
俺とセイランは、準備OKの合図をだす。
それを理解したローバンは扉を開け、中へと案内する。
中はローバンの言う通り、立派な食堂となっていた。
屋根に飾られるシャンデリラ、そして木でできた立派な建築。
盗賊たちがいくつもの机に集まり、そこで食事をしている。
食堂は賑わっている、豊かだ。
盗賊たちが飯を食い、楽しく会話をし合っている。
それはどこも同じ。
何だが楽しそうだ。
ローバンは一歩前に出る。
そして、手を大きく鳴らし、全体に響くよう声を上げる。
「お前ら、例の二人を連れてきたぞ! こっち向け!」
ローバンが声を上げるとともに、一斉に盗賊がこちらに向く。
先程までの喧騒とは全く違う、一斉に静かになる。
一瞬で場面が切り替わるように。
食堂にいた全員がこちらに集中する。
ここから見える盗賊たち。
獰猛そうな男、毛深い男、目が鋭い男。
ナイフを回している男、おっさんどもとは違って、
俺と年端もいかないような青年。
いろんな奴が集まっている。
ローバンが全体を一度確認。
確認し終えたあと、全体、盗賊たちに向け喋りだす。
「さて、静かになったな……紹介しよう、コイツラが例の男女二人だ」
そう言って、俺達二人を前に押し出す。
転びそうになったが、なんとか持ち堪えた、いきなりは辞めてほしい。
「元々、どっかのバカ野郎が連れてきたが、安心しろ。コイツラの強さは俺が見極めた。
味は十分といったところだ」
その言葉を聞いて、少しだけ驚いた人達もいた。
しかしそれは少数。
殆どは目を細めたまま、俺達を見ている。
その目はどこか、つまらなそうだ。
それぞれが盗賊みたく鋭い目、鷹のような感じを思わせる。
こうやって見られるの、俺は嫌いだ。
すると、ローバンが横から話しかけてきた。
「お前らは、これから班に分かれてもらう」
班?
盗賊ごとに分かれているのか。
「人数的にそうだな……ロベルト、お前はお前は8班に分かれろ。
あそこの白い髪をした奴の班だ。」
ローバンは左方向をさす。
ローバンの言う通りそちらの方向を見る。
そこには白い髪をした男が居た。
その周りに、黒髪の男。
ニット帽のようなものを被った男、とてもカラフルな人だ。
美青年と言ってよいほどの美形をした金髪の男。
計4人が座っていた。
「名前は聞け、あと………セイラン、お前は奥の2班だ。
一応女がいる班にした、配慮だ。
場所は……緑色の服のおっさん、分かるか?」
どうやら、セイランとは別々の班に分かれるらしい。
と言うか女も居たのか。
「あ、はい、分かりました、ありがとうございます」
「あぁ」
とりあえず、これで班分けは決まったらしい。
全てで8班ある、俺が最後。
一つの班に五人くらいいるので、結構な人数である
「ほら、行け行け」
そう言って、催促される。
ローバンは奥へと歩いていった。
そうだ、ここで一度セイランとは分かれる。
最後に一言挨拶しておこう。
「また後で」
「う、うん………」
これくらいでいいだろう。
俺は背を向け、ローバンに決められた班に向う。
8班は……あそこだな。
俺は指定された班へ向う。
こちらが近づいてくると、金髪の男は少し眉間に皺を寄せた。
何だが、嫌そうだ。
あんまり、待遇は期待できなさそうだな。
班の前に来た。
とりあえず初対面だ。
一度、自己紹介をしておこう。
「ロベルト・クリフです、よろしくお願いします」
頭を下げる。
これぞ日本人の技である『お辞儀』である。
礼儀は大切だ。
これを見た盗賊たちは無反応、いや、『何をやってるんだコイツは』
状態であった。
とりあえず、席に座る。
荷物は………床に置いておこう。
盗賊たちは、俺の方を向いていたが、次第に他へと興味を向けた。
今は奥にいるローバンの方を向いている。
やはりボスだから、人気が高いな、注目されている。
ローバンさんを見る前に、セイランの方を見てみよう。
気になる、大丈夫だろうか。
セイランの方の盗賊たち。
男3人、女二人。
セイラン合わせて六人の班である。
どれも厳つさがでており、荒々しい感じだ。
やはり盗賊。
雰囲気が違う、ごろつきと同じだが、コイツラは違う感じだ。
何か、他と違う感覚を感じる。
そんな事を思っていると、ローバンさんが話し始めた。
「野郎ども、作戦会議を始めるぞ」
作戦会議というと………あれか、拠点奪還のこと。
ボスの部屋でも話された。
となると、盗賊たちと本格的な打ち合わせと言うことだな。
これから作戦を説明とのことか。
どのような作戦をするのか。
また、どのようにして、炎の国の連中を相手にするのか。
(なかなかに、気になる事である)
「俺達の目標は拠点の奪還。
これを成し遂げなければ、俺達は危機に陥る。
非常に大問題だ」
演説のようだ。
他のボスとかトップもこういうふうに話すのだろうか。
「簡単とはいかない、相手はかの炎の国の遠征軍。
奴ら休憩地として俺達の大事な拠点を留守の間に奪いやがった」
留守の間に攻撃か。
確かに、その方が効率は良い、しかしずるい方法だ。
強いくせに、カスみたいな方法で相手のものを奪う。
これが戦争中の相手か?
到底思えない。
炎の国の兵士は皆こうなのか。
「留守といったが、留守番が何人かいた……当然、留守中にであった炎の国と退治しただろう。
そいつに勝てる間もなく……死んだ」
死んだのか……。
死者……仲間を殺されたのだ、それと同時に拠点を奪われた。
許せないだろう。
なにせ仲間を殺されたのだ。
盗賊たちはお怒りだ。
「だから―」
ローバンがいいかけた時、横の扉が大きく開かれた。
「ローバンさん! 少しいいですか!」
扉から白い服を着た男がローバンの方へ走ってくる。
しかし、この人服きれいだな。
「どうした」
「少し問題がありまして……」
白い服や人はローバンさんに耳打ちをする。
表情からして深刻そうだ。
何か合ったのだろうか。
「……分かった、向かおう」
「ありがとうございます」
そう言って、白い服の人は扉の方へ戻っていった。
「急用ができた少し開ける、その間班ごとで話しておけ」
班ごとで話す……。
この人たちと話すのか、上手く関われるかどうか……。
まぁ、何とかして信頼を得なければ。
協力どころではない。
ローバンが食堂をあとにする。
食堂は少しだけ、賑を取り戻す。
各各が話し合っている……俺も話さないとな。
前を見る。
俺の前には男が4人。
全員どこか柄が悪そうだ。
すると黒髪の男が話してきた。
「ロベルト君だっけ、俺達の班にようこそ歓迎するよ」
歓迎してくれてるようだ。
しかし、顔は笑っていない、どこか裏がありそうだ。
「ありがとうございます」
「若いようだけど、いくつだい」
いくつ……。
年齢を聞いてきたのか。
ここは、信頼のため答えよう。
「17です」
「ハッ、またまだガキじゃないか」
金髪の男は薄く笑う。
バカにしてるな、たしかに俺は最近成人を迎えたばかり。
まだまだ子供だ。
しかし……精神年齢は高いぞ?
まぁ、この人たちにいっても、分からないと思うが。
「俺の名前はルクブット、腹空いてるだろう、班の歓迎にこれをあげるよ」
黒髪の男は懐から、赤色のお菓子? 細長い物を机に置く。
そして、俺の方に向ける。
これはなんだろう………食べ物か?
色は赤………見た目は、完全に唐辛子だな。
…………どっかで見たような……何処だっけ………本か……?
(と言うか、本当に食べれるものか? ちょっと不安だ)
周りの反応を見る限り、どこかおかしな顔をしている。
唖然としてるような感じだ。
「もらってよいのですか?」
「あぁ、刺激的な味をしているぞ」
刺激的な味……。
これ唐辛子ではないか……?
いや、まぁいいか。
しかし、念の為………警戒して口に運ぶとしよう。
「いただきます」
俺はそれを口に運ぼうとする、しかしその時。
俺はこの食べ物………いや、ものに気づいた!
これを思い出した。
それは……この物の表面にある、細かなぶつぶつ。
これは………間違いない。
(これは………毒物だ)
こいつの名前は『アブラソウ』
主にシハ砂漠、ジャングルなどで取れる、珍しい毒物。
致死量は少ないが、食べたら一ヶ月は寝込む代物。
まさか……こんなものを出してくるとは。
食べる手が止まってしまう。
どうするか……これは、食べないと流石にまずいよな。
「どうした、食べれないのか?」
「ルクブットがわざわざ人から盗んだものを、お前にあげてるんだぜ?
それを食べないと……示しがつかないよな?」
ニット帽を被った男が煽るように、俺に話す。
こいつ等……グルか。
「余計な事を言うな、とにかく食べれないのかい? 俺が上げたものだ、食べてくれよ」
勧めてくる。
しかし上手く進まない。
折れは分かる、これを食べたらタダじゃ済まない。
炎症になるかもしれない。
盗賊たちはみんな、こうなのだろうか………。
………はっ、セイランは大丈夫か!
俺は動こうとする。
「おっとっと」
そこを金髪の男が、腕で止める。
この人、いつの間にこんな所まで移動してきた。
一番反対の席にいたはずだ。
「食べろょぉ? えぇ、食ってくれよ、美味しいかもよ?」
ニヤニヤ笑っている。
全く………悪い気分だ。
気がついたら、周りの盗賊も目を寄せている。
まるで晒し者になった気分だ。
異世界に行ってこんな事になるとは、嫌な物だ、全く………。
仕方ない………。
「大丈夫です、ちゃんと食べますよ」
俺はアブラソウを口に近づける。
噛んだ瞬間、毒が発射される、ピークはここである。
それを見た男たちは構える。
今か今かと、芸を見るときのように、静かになる。
それと同時に周りも静かになる。
あたりは静粛に包まれる。
(今がその時だ!)
俺は口の中にアブラソウを放り込む。
それを見た男たちは、一瞬喜びの顔を浮かべる。
中には達成感のようなものも感じられた。
俺はアブラソウを、噛む。
その瞬間、中から紫色のガスが噴出………これが毒物の正体。
毒物の影響で、俺はえづいてしまう……。
(よし)
(決まったな)
それを見て、何人かの盗賊は成功を確信する。
まだだ………俺には方法がある、とっておき魔法の工夫を………。
あたりは静かになる。
その間、ニット帽の男、金髪の男は笑っている。
白い男は無表情。
黒い男は集中しているようだ。
そして、毒物が最大まで口の中に噴射される。
その時魔法を発動。
口の中だと難しいが………俺ならば出来る。
そして俺はアブラソウを飲み込んだ。
‐‐‐
「うぇっ……まずいですね、これ」
俺はあたかも不味いものを食ったかのように答える。
その行動に8班や他の盗賊たちも驚愕する。
なぜって? それは簡単。
彼は毒物を食ったのだ。
それなのに、なぜ平然としてるのか?
「お、お前食ったよな! え、食ったよなぁ!」
「ど、どういうことだ、あれは………」
「………」
金髪の男、ニット帽の男がそれぞれ驚いている。
やはり驚くか。
そりゃそうだろうな。
なにせ、俺は毒物を食った、しかし毒づいていない。
何もないのだ、変化が。
(こいつ………何をした?)
黒髪の男は疑問を抱いていた。
俺はたしかにアブラソウをこの男に渡した。
間違いなく、完全なる毒物。
それを食うのを見た。
しかし、こうして平然としている、まるで食ってないかのように。
何だ……?
何をした、何をやった………これはこいつの能力……魔法なのか?
(分からない………こいつが何をしたのか………)
黒髪の男すら何もわからない。
金髪の男、ニット帽の男もだ。
もちろん白髮の男も………しかし、この男は一つ違った。
(魔力を使っていない………)
白髮の男は最初に気づいたことがあった、それは男の魔力。
ロベルト・クリフの魔力である。
人が感じる、相手の力の順番。
それは……魔力→力の源。
この順である、男はそれを見ていた、しかし。
ロベルトにはそれが、どちらもなかったのである。
人として、薄々感じる力の源。
魔法や、体に流れる、魔力を。
魔力なら、隠す技がある、それは魔法使いの間でも知られている。
しかし……力の源は不可能。
隠そうとしても、完全には消せない。
それは常識である。
しかしそれが感じない。
一瞬、自身の不具合かと思った。
しかし、何度も集中しても……全く感が取れないのだ。
これはおかしい……。
あり得ないこと……誰もできない事。
(だとすると………この男は何者だ?)
方法は簡単。
本当に単純な事だ………。
ゲームで毒状態になった時、貴方はどうする?
決まってる、解毒だ。
これはゲームでも現実でも同じだ。
そう、俺は解毒、解毒魔法を使った。
なぁに、使い方を工夫しただけ、タダ単に。
口の中で解毒魔法を作成した。
口に当たりまくって、吹き出しそうになったがなんとか作成。
それをガスと混ぜて飲み込む。
ちょっと苦かったし、もしかしたら毒が残ってた可能性がある。
後でやっておこう。
「面白ぇ、気に入ったぜ!」
ニット帽の男は気に入ってくれた? そうらしい。
「ふん……」
金髪の男はそこまでではない。
黒髪の男、ルクブット。
そして、未だ話してない白髪の男………正体は謎。
この人たちはまだ分からない。
すると、そこへローバン帰ってきた。
「ん? なにやってんだ、お前ら!」
ローバンは大きな声をあげる。
それに、驚いた盗賊たちは一斉に前を向く。
いきなり現れたな。
「少し乱闘が起きただけですぜ」
「こんな時に………まぁいい、さぁ、こっちに注目だ」
盗賊、そして俺はローバンがいる方向に向き直る。
ようやく始まるのか
「作戦を発表する」




