第五十二話「登山道」
土の国へ行くための道。
その道は2つある。
1つ、洞窟を抜け、地下から土の国まで続く道を通る事。
しかし、ここは遠回りである。
2つ、天山程度ではないが、それなりに大きな山を登山する道。
こちらは普通の道。
俺達が選んだのは、山地の方だ。
名前は確か……シーフ山地、だっけ?
シーフか………。
直訳すると、盗賊の山。
盗賊とか、いるのかな。
(魔物に襲われてそうだけど)
洞窟は危険が沢山、暗く、そしてゴツゴツして、場所が悪い。
経験者でなければ、とても危険な場所となる。
それに加えて、モンスターまで出現するので、やばい。
それよりも、現在地を確認できないので、却下だ。
それに、遠回りだし。
こっちの山は、天山という高い山ほど、大きくない。
比較的安全な地形である。
洞窟よりも山地のほうが安心感がプラスされるだろう。
まぁ、登ることは変わらないが。
土の国は渓谷地帯に作られている、自然と山が近いのは、それだろう。
どのみち登山は変わらない。
風の国の時もそうだったからな。
‐‐‐
「ここが登山道か」
ロベルト、セイランの二人は、山地の入口へと到着。
ここから、上へと道が続いている。
この山は、全体的に言うと『鬱蒼』
木の密度がこく、草木が茂っている。
木々はどれも背が高い、おまけに幹も太く大きい。
この気によって、太陽光が遮られ、薄暗い。
地面や高低差などは大丈夫だが、
入り組んでいることには変わりない。
それに加えてのモンスター。
この山で迷ったら、一貫の終わり。
こういう所で木を切りに行く人達は大変だろうな。
なにせ、伐採中にモンスターが襲ってくるのだ。
危険だし、厄介。
一応、騎士や兵士、もしくは冒険者が護衛として側につく。
しかしそれでも、並の冒険者と同等の魔物ばかり。
危険を犯すのは当然のことである。
その前に、昨日買った地図を開きな中身を確認。
ここには、この山地について詳しく描かれている。
山へ登るための下準備は完璧である。
「今は、どのあたり?」
「地図によると……うん、この道であっている、このまま進めば良いだろう」
全体的に、険しい場所は少ないので、未経験でも大丈夫。
それに対し、入り組んでいる所が難所
「迂回する場所、分かれ道、結構多いな……ついてこれるか?」
「大丈夫、山には登ったことあるから」
「へぇ」
箱入り娘かと思ったが、そういう経験はあるのだな。
貴族にしては珍しい。
俺の貴族のイメージは、王宮でずっとお茶飲んでるイメージしかない。
いや、本当にびっくり。
あ、それより。
「ちなみに、聞くが、どこの山に登ったんだ?」
「紗々羅巍島」
「3日前じゃねぇか」
全然最近、まじで最近。
しかもあの時は四人だった、経験になっているのか?
いや、足腰は鍛えられているか。
「てへっ」
頭に手を乗せ、舌を出す。
よくある、てへっ、という天然のポーズを披露。
「……まったく」
ふざけてやがる………。
まぁ、こういう雰囲気も悪くない。
「先を急ぐぞ」
「分かった」
先へと進んでいく。
セイランは未経験に等しいので、よく後ろを確認する。
でなければ、逸れる可能性がある。
用心深く注意しなければ。
「………ん?」
なんだ、この気配。
これは……魔力、魔力の反応か。
右側に2つ……3つ………?
何かがいるのは分かる。
多分、魔物だろう、しかし出会ったことのない未経験の魔物。
それに姿も確認できないので、対策も上手くできない。
一体何だ………?
「セイラン、分かるか? この魔力」
「う、うん……薄々感じる、きっと近くに潜んでるよ」
そこら辺の草木に忍んでる可能性がある。
それも、3つ………つまり、複数体。
これは、早くいかないとまずいな。
(どこだ……? どこにいる、どこに潜んでいる)
出てくるがいい。
俺の魔法と剣が、お前の体を貫く。
覚悟しろよぉ………。
俺と、セイランが対になって前衛と後衛を担当。
やっぱり、二人は厳しいか。
(わ、私だって、できるから!)
各有セイランも、サポート役だが、それだけでは収まらない。
回復以外にも、妨害や状態異常に関わる魔法を使える。
攻撃だって、 やろうと思えば、それなりの攻撃魔法を撃てる。
精々3級くらいだが。
(土魔法で表すと、野球ボールを投げるくらいの威力)
魔法が使えないなら、最終手段として杖でぶん殴ればいい。
先っちょは以外に痛いからな。
と、その時横から感じる魔力が強くなる。
(セイラン、いや、違う……!)
其奴、横から迫るものはモンスター。
茶色体にすばしっこい動き、そしてトラのような体格。
間違いない。
厄介な魔物『トランペン』
「こんなところで、遭遇するとは!」
トランペンは俺に接近。
ここは、剣、いや……鞘に触っている場合ではない!
ここは、魔法で追撃。
俺は瞬時に手のひらに土魔法で、なるべく尖った岩石を形成。
狙いを定め、投げつけるッ!
岩石は、トランペンに直撃。
血しぶきを上げ、後ろに転がる。
この量的に深くまで刺さった………いや、貫いただろう。
まだ生きている。
俺は鞘から剣を取出し、トランペンの胸囲に突き刺す。
そのまま、横に抉る………。
その反動で、余計に血が飛び散る、服が汚れてしまった。
(やっぱり、気持ち悪いな……とりあえずは、留めを指したか………」
しかし、まだ安心できない。
倒したのは一匹、まだ2体残っている。
「セイラン、行けるか!」
「任せて!」
同時に構える。
いつでも、魔法は撃てる、剣で攻撃が可能。
セイランも杖を構える。
風があたりを包む。
モンスターの気配は依然残っている。
さぁ……どこからか来る。
どこからかやって来る……。
その時、セイランの方向からトランペンが突撃。
セイランめがけて、接近してくる。
「来たっ……!」
セイランは杖で、風魔力を貯める、そして解放。
風の刃を形成し、十字の刃を飛ばしトランペンに傷を追わせる。
その攻撃により、一瞬の隙が生まれる。
ここを……逃さない!
俺は地面に手を当て、土魔法を発動。
トランペンがいる地面から土壁を形成し、下から追撃。
この攻撃は上手く言った。
(今ならば!)
剣をもち、トランペンに近づく。
そして、回転による遠心力を利用し、鋭く刃を横に振る。
鋼の刃は鋭く、綺麗にトランペンの体を両断。
その胴体を泣き別れにした。
しかし、その時、セイランの後ろからもう一体のトランペンが襲い掛かる。
囮作戦というわけか……!
こいつも、知能がある。
「セイラン!」
「大丈夫!」
セイランは急転換し、トランペンに向き合う。
そして、杖を素早く床につけ、呪文を唱える。
『スオンスケイル』
その瞬間、地面から茨が出現し、トランペンを捕らえる。
茨の棘により、トランペンに傷が入っていく。
見るのも、痛々しい光景だ。
「ふぅ……」
「サンキュ、やるな」
一息ついたセイランを横目に俺は走り抜け、トランペンに攻撃。
今度も上手く、2つに両断成功。
なんとか討伐成功。
無事に怪我なく終った。
「ふぅ、なんとかなったね……」
茨が消え、セイランが一息ついて休む。
気を抜くと魔法が消えるとは、このことだろう。
「まぁ、いいかんじゃないか?」
「そうかな?」
「貴族にしては、戦闘に慣れてる気がする……昔何かやってたのか?」
手慣れ感を感じた。
なんか……初心者じゃないような気がする。
「えっと……私、氷の国の貴族の家系だから、場所が場所で、少しだけ戦闘を習った事があったんだよ」
「なるほど」
だから慣れていたのか。
というか、氷の国って、貴族に戦闘させるほどの国なのか。
なんか、凄い国だな。
まぁ、炎の国よりはましか。
「でもこれで! 役立たずじゃないって、わかったでしょ?」
「あぁ、なかなかだったよ」
「ふふん」
鼻を鳴らし、嬉しそうな感じ。
実際、彼女は戦闘ができる、慣れている。
これならば、安心だろう。
少し、休んでも良いだろう。
まぁ、それでも彼女は回復の役割。
つまり、僧侶ポジション。
前衛に出て、魔物相手に無双するほど、強くはない。
あと、似合わない。
基本的に俺が戦って、その補助に彼女が入る。
これが最適な方法だろう。
その後は、木々や周りに引火しないよう、魔物の死体を火葬した。
一応、念の為、火葬した後、水を当てまくった。
まぁ、これで大丈夫だろう。
「よし、OK、そろそろ行こう」
「うん」
ロベルトと、セイランは再び歩き始めた。
‐‐‐
しばらく歩いていると、木々が上になく、光が指している道に出た。
ここは明るい、それに温かい。
「地図を見ても 、結構近くまで、これてきた」
「もうそろそろで突破?」
「突破できる」
あとはここを下れば、下へと降りれる。
そこから、道を歩けば、渓谷地帯。
つまり………土の国へと到着だ。
今は、昼か……。
結構早いな、夕方にはつくだろう。
早く移動できて結構、結構。
その間に明日の予定を確認。
土の国へついた後、まずは、協力を求める。
土の国にも、風の国のフィオネみたいに長、有名人とかいるはずだ。
その人に合って、話す。
そして、空中要塞に向かう、協力をお願いする。
一発では無理だが、風神の名前を出せば……。
(いや、神を交渉の材料にするなんて、そんな恐ろしい事できるはずも無い)
逆に反感を買う可能性もある。
慎重に行かないとな。
あ、あと。
マスターから聞いた話だと、土の国には鉱脈があるらしい。
それもそうか。
土の国は鍛冶専門の国で有名。
(体験してみたいなぁ)
そんな思いにふけながら、道を歩いていると、突然。
何か、何体もの強い気配を感じた。
それも、この道の先。
「な、なんだ?」
「け、結構多いけど……魔物?」
多分魔物だろうが、数が多い。
群れだろう、しかし、そのどれもがとても強い。
セイランより強い。
それが何体も接近中。
普通に考えて、ここは戦わずして、逃げるのが考え。
いや、隠れよう。
「セイラン、こっち」
「あっ」
セイランの腕を引っ張り、道のそばの木々。
草木がある影の下に移動。
ここにて、身を隠すことにする。
「これ、バレないの?」
「大丈夫だろう」
草木の影に、姿勢を低くして、隠れているだけだが。
まぁ………行けるでしょ。
そして、その時奥の方から、大きな音。
いや、何体もの生き物が歩く音が聞こえた。
その正体とは………。
「!?」
驚き。
こんなことが、何故こんなところにいるのか。
驚きであった。
それは、赤い鎧を纏、腰の剣、槍、背中の大剣と武器を背負い。
ゴツゴツした、馬のような生物になっている、人。
それは……炎を纏っていた。
あったことはない、見たこも。
しかし、本能的に理解。
この群れ……いや、軍隊は。
(炎の国の連中ということを………)
「おい、どうしてこんな所に……」
「わからない、なんで? なんでこんな森の中にいるの?」
「理由は不明、目的も」
「それも、こんな大勢で……」
小声で、会話する。
何故こんなところに。
それも戦争中の炎の国が………。
とにかく、何かまずい。
炎の国がここに居るという事は、その内、風の国、アトリス王国。
………テドル、俺の村に来る可能性。
(そんなことになったら………)
炎の国、各国と戦争中。
沢山の兵士を使い、国に攻めてくることもあるだろう。
そうだとしたら、沢山の被害が出る……。
大勢の人が……死ぬ!
炎の国の兵士達は、通り過ぎ、俺達が辿ってきた道へと向かっていく。
とりあえず、バレずに済んだか?
(ふぅ……良かった難所は越えた)
しかし、あの方向は風の国への山道。
何もなければいいが……。
「ば、バレなかったぁ〜」
「危なかったな……よし」
俺とセイランはゆっくり立ち上がり、歩こうとする。
しかしその時、バキッと言う、音が後ろで鳴った。
その音に驚き。
後ろに振り向く、しかし何もいない。
「どうしたの?」
「いや、音がした………」
音的に、木の棒が折れる音。
気の所為ではない、間違いなく、音がなった。
「もしかして、魔物?」
「そうかもしれん」
俺は鞘の剣に、手をかけ、音がなった、方向に進む。
「ちょ、あ、待ってよ!」
後ろから、セイランも来る。
一人でいたくないようだ。
「なるべく、気を付けて」
「うん、用心する」
二人は暗い影へと進んでいく。
奥は少しだけ太陽光が刺さり、明るい。
あそこに向かっていけば………。
足を進める。
しかし、これが間違いであった。
この時戻れば、面倒くさいことには、ならずに済んだ。
時間を短縮できた。
しかし、これは運命といっても良い出会いであるだろう。
「なにっ!」「へっ!?」
突然、足に何かが、括り付けられる。
それも、俺だけではなく、セイランまでもがだ。
そして、そのまま強く何かが引かれ、二人は奥へと引きずられる。
「な、なな、なんだ!?」
「なにか、引っ張られている!?」
クソ、暗くて見えない、何が起きているんだ……。
うん……この足の感触、これは紐か?
もしかして、縄?
って、そんなことじゃない。
なんとか、抜け出さなければ。
早く、逃げなければ。
しかし、その行動も不可能。
今度はいきなり、下へと落ちる感覚を味わう。
それは、突然だった。
二人は断末魔をあげ、下へと落ちる。
「痛ぇ」
「な、なに……が」
どうやら、『落とし穴』に落下したらしい。
それも結構狭い。
俺の上にセイランが落っこちているので、お……体制がキツイ。
足が痛いんだが。
「上は……」
上は太陽光が刺さり、少しまぶしい。
とりあえず、なんとかしてここから脱出しないと。
しかし、出る方法は………なんだ。
何か、良い方法はないか……。
しかしその時、上に、2つの影がいきなり現れる。
それは……よく見えないが。
人の形をしていた。
(あぁ、分かった、理解した)
山の名前で、警戒するべきだった。
これは、不覚。
どうやら、盗賊たちにまんまと捕らえられたようだ。




